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2023年4月11日
日本銀行
総裁・副総裁就任記者会見
――2023年4月10日(月)午後7時15分から約70分
(問)
幹事社からの質問は二問です。一点目は、植田総裁、氷見野副総裁、内田副総裁の
お三方に伺います。就任に当たっての抱負をそれぞれお聞かせください。今後取り
組むべき課題をどのように認識し、これまでの経験をどう生かしていきたいかにつ
いてを踏まえて、それぞれお話し頂ければと思います。
二点目は植田総裁に伺います。2 月の国会での所信聴取後の経済の大きな動きとし
て、欧米での金融不安があります。アメリカの中堅銀行の破綻やスイス大手銀行の
救済などが相次ぎましたが、日本経済への影響をどう みているか、金融環境は不安
定さが残っていますが、日銀として取るべき対応をどのように考えているか、ご見
解を教えて頂けたらと思います。
(植田総裁)
この度、日本銀行総裁を拝命しました植田でございます。日本銀行の 5 千人の役職
員と力を合わせて、日本銀行の使命である物価の安定と金融システムの安定の実現
に向け、力を尽くしてまいりたいと考えております。よろしくお願いします。国会
での所信でも申し上げましたが、日本銀行にとって、また私自身にとっても 、1998
年の新日本銀行法の施行以来 25 年間、物価の安定の達成は積年の課題です。これま
で日本銀行は、私が過去に審議委員として在籍した時期を含めて 、ゼロ金利政策、
時間軸政策、量的緩和政策、そして 、現在の量的・質的金融緩和政策に至るまで、
世界に先駆けて様々な非伝統的金融政策を実施してきました。私自身 、長年、金融
政策を研究対象にしてきましたし、 過去、審議委員として政策運営や中央銀行実務
にも携わりました。こうした経験を生かして 、物価の安定の達成というミッション
の総仕上げに向けて、理論・実務の両面で、尽力してまいりたいと思っております。
また、金融システムの安定についても 、日本銀行の重要な責務です。人口や企業数
の減少など、金融機関および金融システムを巡る状況は厳しさを増している中にあ
って、金融仲介機能が円滑に発揮されることは 、わが国経済にとってきわめて重要
です。更に、日本銀行は、銀行券の発行と流通、日銀ネットという基幹的な決済シ
ステムの運営、国庫金に関する業務など、わが国の重要な社会インフラを運営して
います。このような国民経済にとって必要不可欠な重要な役割を果たしていくため
に、日本銀行の役職員それぞれが、それぞれの能力を発揮してしっかりと貢献でき
るようにすることも、私の総裁としての重要な役割です。組織の先頭に立って仕事
に当たってまいりたいと考えています。
(氷見野副総裁)
副総裁を拝命致しました氷見野です。私はこれまで金融行政 や国際関係の仕事が長
かったので、そうした経験を生かしていければと思っております。金融政策につき
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ましては、賃金上昇を伴うかたちで物価安定の目標を持続的・安定的に実現するこ
と、金融緩和が政府や経済界の取り組みとも相まって、経済の好循環に つながって
いくこと、そうしたことを目指したいと考えております。金融市場や金融システム
は金融政策の波及経路でもありますので、金融行政の経験も生かして政策運営に貢
献していければと、そういうふうに考えております。また、金融システムの安定に
つきましては、現在のわが国の金融システムは全体として安定しておりますし 、シ
ョックに対する一定の頑健性も有していると思いますが、海外では隠れていた脆弱
性が思いがけないかたちで表に出る事例が続きました。金融機関との対話、モニタ
リングに努めるとともに、海外当局との連携にも努めていきたいと思っております。
また、先日、金融安定理事会の基準実施常設委員会の議長にも就任 致しましたので、
国際的な議論にも貢献していければというふうに思っております。 更に、国民経済
に不可欠な、発券業務、銀行の銀行としての業務、国庫業務につきましても、職員
とともに、その的確な遂行に努めてまいりたいと思います。今後 5 年間、内田副総
裁とともに全力で植田総裁をお支えし、日 銀の使命の達成に努めてまいりたいと思
います。よろしくお願い致します。
(内田副総裁)
内田でございます。氷見野副総裁とともに、植田総裁をお支えし、日本銀行の使命
の達成に全力を尽くしてまいります。どうぞよろしくお願いします。私はこれまで
様々な立場で金融政策の立案に携わってまいりましたが、今 、日本銀行が直面して
いる課題は、いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくかというこ
とだと思います。この点でよく金融緩和の枠組みが複雑化していると言われること
がありますが、技術的な部分については、これまで日本銀行が蓄積してきた経験と
知識によって十分対応できると考えています。より大事なことは 、正確な情勢判断
を行い、それに応じて慎重にタイミングを選びながら 、的確な政策を行っていくこ
とだと思っています。今後、経済・物価・金融面の状況変化に応じて最もふさわし
い政策を考え、実施できるよう 、スタッフの力を結集し、他のボードメンバーの
方々と議論を尽くしてまいりたいというふうに思います。そして 5 年間の任期の中
で、2%の物価安定の目標を実現したいと思います。また、それに至る過程において、
金融市場で不連続な変化が生じることがないよう、常に市場の安定ということを意
識していきたいと考えています。併せて 、金融システムの安定維持、銀行券の発行
や各種の業務など、日本銀行の役割を 一日も欠かすことなく全うできるよう運営し
ていくことも、私の重要な任務であると思っています。日本銀行の役割を一言で言
えば、国民の皆さまに安心して日本銀行券というお金を使って 頂けるようにするこ
とだと、様々な場面で説明してきました。この点でも 、将来を見据えますと 、経
済・社会のデジタル化に合わせて、中央銀行サービスは変化していかなければなら
ないと思っております。5 千人の職員と力を合わせて、日本銀行に付託された役割
をしっかりと果たしていきたいと思います。これから 5 年間、どうぞよろしくお願
いします。
(植田総裁)
続きまして私から二番目のご質問にお答えしたいと思いますが 、欧米の金融不安の
日本経済への影響いかんというご質問だったと思います。これについては 、3 月中
旬以降ですか、アメリカ・ヨーロッパで、一部の金融機関の経営問題を背景に 、不
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安感が広がる動きがみられたわけですけれども、各国当局が迅速な対応をしたこと、
それもあって個別先の問題であるという認識が広がったということで 、市場は落ち
着きを取り戻しつつあるというふうに みております。日本の経済、日本の金融シス
テムへの影響ですけれども、日本の金融環境、依然として非常に緩和的な状態が続
いているということ、それから日本の金融機関が、充実した資本それから十分な流
動性を備えているということを考えますと、金融仲介機能は今後も円滑に発揮され
ていくというふうに評価しております。従って 、現時点でこの問題がわが国経済に
大きな影響を与えるというふうには みておりません。この間、日本銀行と米欧の中
銀が協調して、米ドルの資金供給オペの実施頻度を引き上げるような対応も行って
おります。ただ、市場における不透明感・不安感が完全に払拭されたという状態で
はないと考えておりますので、今後の状況についてしっかりと注意してまいりたい
というふうに思っております。
(問)
植田総裁にお伺いします。先ほど、25 年間、積年の課題だった物価安定達成のミッ
ション、総仕上げを行う 5 年間としたいということをご発言されましたけれども、
そのために一番大事なことは何だとお考えでしょうか 。それで、この黒田前総裁が
ですね、10 年間続けてきた大規模金融緩和、この包括的な点検ですとか検証ですと
か、毎回の会合とは別に、こうしたことを行う必要があるとお考えでしょうか 、お
聞かせください。
もう一点ですね、氷見野副総裁にお伺いしたいんですけれども 、先ほど、海外で隠
れていた脆弱性が表に出る事態が出てきたというふうにおっしゃいましたけれども、
先月のアメリカの銀行の破綻などにもありましたけれども、ご覧になっていて 、リ
ーマンショック以降、強化されてきた国際金融規制ですとか監督ですとか 、それが
ここまで適切に機能してきたというふうにお考えでしょうか。何か見直す必要性が
あるとお考えかどうか、その辺をお聞かせ頂ければと思います。
(植田総裁)
それでは私から、まず、物価安定実現のための総仕上げを行うために大事なことは
何かというご質問ですが、現在の金融緩和が非常に強力なものであるということは
間違いないと思いますので、経済 ・物価・金融情勢を丹念に、そして的確に把握し、
これまでもそうだったと思いますが、今後一段と努力して把握し、基調的な物価の
動き、インフレ率とわれわれよく言ったりしますが、これが本当に安定的 ・持続的
に 2%に達する情勢かどうかというのを見極めて、適切なタイミングで正常化に行
くのであれば行かないといけないですし、それはなかなか難しいということであれ
ば、副作用に配慮しつつ、より持続的な金融緩和の枠組みが何かということを探っ
ていく、その辺の判断をきちんと行うということだと考えております。それも含め
まして、点検のような作業についてどういうふうに考えているのかというのが後半
のご質問だったと思いますけれども、点検は 、ある意味では毎回の決定会合で、決
定会合と決定会合の間で行ったうえで決定会合での判断が下されるということであ
りますけれども、もう少し力の入った 、あるいは長い目でみた点検を行うべきかど
うかという論点はあるかと思います。そういうことが必要という場合には、あるい
は行うという場合には、少し長い目で みて、私も先ほど申し上げましたように、強
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力な緩和、ある意味では 20 何年続いておりますので、それ全体を総合的に評価して、
今後どういうふうに歩むべきかというような観点からの点検や検証があってもいい
のかなとは思っておりますが、この点は政策委員会で議論して決めていきたいとい
うふうに考えております。
(氷見野副総裁)
最近、アメリカやヨーロッパで起きて いることにかんがみ、リーマン以降の規制改
革が十分だったかというご質問だったと思います。最近起きたことについてはいろ
いろ報道されてはおるわけですが、現在それぞれの国の当局において 、内部情報も
含めた検証、何が起きて何が課題だったかということを今やっておられるところだ
と思います。米国については 5 月 1 日までにその結果を出すということですので、
あまり現時点で結論に飛びつくというよりは、まず 、その起きたこと、何が問題だ
ったか、よくみていくことが大事ではないかと思っております 。そのうえで、今ま
だ予断を持ってるわけではありませんけれども、基準実施 常設委員会議長としては、
国際的に大変な規制改革を合意したわけですけれども、それがそもそもちゃんと実
施されていたのかどうかといった点も みてみないと、改革の問題なのか、実施の問
題なのかというところが分からないんじゃないかということと 、あと日本当局がず
っと言ってまいりましたのは、規制は監督の代わりにはならないということであり
まして、規制さえどんどん厳しくしていけば 、それで問題は全部起こらなくなると
いうことではない、ということをずっと主張してまいりました。 そのことと、今回
起きていることがどう関係するかということについても 、予断を持つわけではあり
ませんけれども、そうした視点も大事にして議論に参加していきたいと、そういう
ふうに考えております。
(問)
異次元緩和を支えている長短金利操作 、YCCについて伺います。国会でもご答弁
されていますけれども、その効能、必要性、副作用について、どのようにお考えで
しょうか。もう一点ですね、市場ではこのYCCについて、早い段階で修正するこ
ともあり得るのではといった観測もあります。どのような状況になれば修正といっ
たことが選択肢に上がるのか、お話できる範囲でこのお考えについて伺 えますでし
ょうか。お三方に伺います。
(植田総裁)
まず私から、長短金利操作についてということだと思いますが 、市場機能への影響
という意味では、日本銀行は昨年来、国債の補完供給の制度を柔軟に運用している
ということ、あるいは昨年 12 月に長期金利の変動幅を拡大したような措置、更にこ
このところ一か月くらいですかね、先ほどお話に出ましたような金融システムに対
するストレスの問題の結果もあって 、海外金利が低下したという中で、イールドカ
ーブの形状は総じて前よりもスムーズになってきているという認識でおります。こ
うしたこれまでの措置の効果とか 、市場の動向については、今後も見極めていく必
要があるというふうに考えています。ただその うえでイールドカーブ・コントロー
ルは、市場機能に配慮しつつ、現状では経済にとって最も適切と考えられるイール
ドカーブの形成を実現するための仕組みです。現状の経済 ・物価・金融情勢にかん
がみると、現行のYCCを継続するということが適当であるというふうに考えてお
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ります。
(氷見野副総裁)
私からは特に付け加える点はございません。
(内田副総裁)
16 年にYCCを導入したんですけれども、そのときの議論も思い出して頂くと、Y
CCは金融緩和によって、経済・物価を刺激する効果と 、一方で金融仲介機能への
影響、この両者のバランスを取って最も適切な金利水準にしていく、そこにコント
ロールしていくという趣旨で導入したものです 。このことが良好な金融環境を通じ
て、経済・物価を押し上げる効果があったというふうに思っています。一方でデメ
リットとしては当然ですが、コントロールをしているわけですから 、そのことに伴
って市場機能が低下をするということがあるわけであり 、これが特に目立ったのが
昨年後半からであったということだろうというふうに思います 。特に副作用につき
ましては、SLF等々これまで何度か対応してきましたし、[昨年]12 月に対応した
ところですので、今はその状況を見極めていくというフェーズにあるというふうに
思っておりますし、YCCという仕組みは今申し上げたような趣旨で導入したもの
ですので、総裁からも申し上げた通り、現状においてはこの枠組みの中で緩和を続
けていくということが適切なのではないかというふうに思っています。
(問)
植田新総裁にお尋ねします。まず確認なんですけれども、総裁、先ほど前任の黒田
さんの大規模金融緩和を強力とおっしゃっていましたけれども、当面の間は現行の
大規模緩和路線を維持されるというお考えなんでしょうか 、というのをまず確認さ
せてください。
それともう一点なんですけれども、2%目標なんですけれども、黒田さんは就任当初
は 2 年で達成するということを述べたと思うんですけれども、植田さんは特定の時
期なり、あるいは任期中の達成というものをコミットされるのでしょうか 。あるい
はあまりそういう時期とかにはこだわらず、目標としては維持しつつも 、最優先で
目指すというよりは足元の経済とか金融の状況も みながら、もうちょっと柔軟に運
営をしたいというお考えなんでしょうか。
(植田総裁)
前半のところについては、前体制からの大規模緩和を現状では継続するというお答
えになるかと思います。
それから 2%の目標についてどういうふうに考えるのか 、対応するのかということ
ですが、現状は共同声明にもありますように、できるだけ早くに持続的 ・安定的な
2%の達成を目指すということですので、これはそういうふうに考えております。た
だし、どんな状況でもすぐに短い時間で 2%を達成されるかというと、過去の経験
をみてもそうでない、それに対してアゲンストの外的ショックがあった場合にはな
かなか難しくなると思いますし、そもそも金融緩和の効果というのが大まかには金
利のゼロ制約というのでかなり制限されているという中では、そう簡単な目標では
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ないということは認識しております。従って 、何らかの有限の時間内にこれを達成
するという強い見通しは現時点で申し上げられないかなというふうに思っておりま
す。
(問)
総裁に伺います。2%の物価目標を 10 年で達成できなかった要因をどうみていらっ
しゃるのでしょうか。また、今後達成するに当たっての最大のハードルと、目標達
成は金融政策だけでできるのか、そうでないとすればどういったことが必要なのか
も教えてください。
(植田総裁)
10 年で達成できなかった理由でございますけれども、それについては一つ前のご質
問に対する答えで二つくらい申し上げたかと思いますけれども、達成を難しくする
ような外的なショックの存在というのが大きかったというのが一つでございます。
詳しく申し上げれば、90年代の不良債権問題から始まって、それは10年の話より前
になってしまいますが、足を引っ張るような外的 ショックは大きなものがいくつか
あったということが一つでございます。それから通常であれば金利の引き下げ余地
がかなりあるというはずなのに、ゼロに近いところから始めたということで 、引き
下げ余地があまりない中での金融緩和政策であった過去 10 年、この二つは大きかっ
たと思います。それから、これは黒田前総裁もよく言われていたことですが、デフ
レあるいはゼロインフレに近い状況は長く続けば続くという中で、物価や賃金が上
がらないということを前提にした物価や賃金の設定行動あるいは企業行動が広まっ
てしまって、それ自体が次に物価や賃金が上がりにくくするという結果に残念なが
らなってしまったということも大きかったかなというふうに思っております。でも、
金融政策は全然効かないというわけではないわけでして、実際、過去 10 年でデフレ
でない状況に辿り着いているということもあるかと思います。そのうえで、もう少
し金融緩和が効くような外の要因として何か指摘できることがあるかというのが後
半のご質問だったと思いますけれども、私ども学者の世界では自然利子率とかよく
言ったりしておりますが、例えば政府からの施策で 、生産性を引き上げるような何
かインセンティブが付与されるような中で設備投資等が活発になり、生産性も上が
っていくというようなことがございますと 、均衡利子率が上昇する、単純には設備
投資意欲が向上する、そういう中では金融緩和の効果が強まるというような話はい
くつかあるかなというふうには思っております。
(問)
総裁に二問お尋ねします。どうぞよろしくお願いします。一問目は日本経済の展望
についてです。先ほど来おっしゃられている通り、大規模な金融緩和を始めて 10 年
が経ちました。総裁が国会での所信聴取や今先ほどもおっしゃられている通り、緩
和導入後、企業収益が改善し、デフレではない状況になったと思いますが、日本経
済の成長に依然、力強さはなく、最近では物価の高騰に不安を感じている人も少な
くありません。もちろん金融政策だけでは難しいと思いますが、今の緩和を更 に続
けることで日本経済は力強さを取り戻すことができるんでしょうか。 総裁のご見解
をお聞かせください。
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もう一つは長期金利操作とETFの買入れについてです。総裁、所信表明でイール
ドカーブ・コントロールについて様々な副作用を生じさせているという面は否定で
きない、ETFについては大量に買ったものを今後どういうふうにしていくのかは
大問題とおっしゃっています。現在導入している以上、すぐに出口を探すのは難し
いと思うのですが、いずれの政策も導入したこと自体適切だったのでしょうか。総
裁のご見解をお聞かせください。
(植田総裁)
前半でございますけれども、おっしゃいますように金融政策だけで経済の中長期的
な成長率を上げていく、持続的に上げていくというのはなかなか難しいかと思いま
す。教科書的な話になりますが、金融政策は経済の需要サイドに働きかけるもので
すから、需要サイドが落ち込んでいるときにそれを下支えしたり、供給に合ったと
ころまで引き上げていくというところには力を発揮するわけですが、そこまでいっ
てしまいますと経済の成長率は供給サイドの方の要因によって主に規定されるとい
うことですので、ここに働きかける力、手段を金融政策は通常あまり持って いない
という答えにならざるを得ないかと思います。そこまでの期間で需要サイドを中心
に働きかけて、その間の成長率を高めるという効果はもちろん持つかと思います。
それから後半ですけれども、金利操作、ETFの購入ですか、これについておっし
ゃるように副作用、私はある、あるいはあったかというふうに考えてございます。
そのうえで、そういう副作用のあるような政策をそもそも導入したことは良 かった
のかどうかというご質問だったと思いますけれども、その点については、おそらく 、
それぞれ導入した時点で私はボードメンバーではなかったので あれですけれども、
効果と副作用について十分考慮し、議論されたうえで導 入されたのだと思います。
ですので、たまたま副作用が目立っているからというだけで、それの導入がまずか
ったという結論にはならないのかなと思います。やはりネットで経済に どういう効
果があったのか、それから副作用のコストが仮に測れたとして、引き算してお釣り
が残るかどうかというのが、評価の基準になるかなと思います。インフレ率という
面で言えば、時間はかかったけれども、デフレの状態から若干プラスのインフレ率、
足元ヘッドラインは非常に高いわけですが、そこまで 来たという、そういうプラス
はやはりあったかなというふうに考えております。そのうえで、副作用をどう考え
るのかというような重い問題でありますが、繰り返しですが、だから直ちにまずい
判断だったということにはならないかなと思っております。
(問)
新総裁・副総裁の三名に伺います。金融政策の判断や運営における金融システムの
位置づけについてなんですけれども 、欧米で信用不安が顕在化したりですとか 、あ
と国内の金融機関も保有債券ですとかの含み損が目立って膨らんできています 。民
間金融機関の利上げ耐性を踏まえ、政策判断の考え方を教えて頂ければと思います。
あともう一問は新総裁に伺いたいんですけれども、政策手段の一つ 、マイナス金利
政策なんですけれども、これは結構長期化してると思うんですが、現状も適切で 、
引き続き有用とみていらっしゃるのか、この二点について伺えればと思います。
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(植田総裁)
前半は、金融システムの様々な問題を、金利その他の操作の、金融政策を考える際
にどういうふうに、どの程度考慮すべきかというご質問でしょうか 。これは、非常
に昔からある難しい問題であると思っております。 軽々にはお答えできないわけで
すけれども、取りあえず現状では、現在の日本ではということになりますが 、金利
を大幅に上げるというような状況ではありませんので 、一方で金融システムは一応
先ほどもお話ししましたように、落ち着いているということですので、こ こから多
少、金融政策の修正とかを考えていく際にも、それほどの大きな イシューでは、取
りあえずはないかなというふうに私は思っております。
(氷見野副総裁)
仮に出口を迎えられる状態になったときに 、金融システムへの影響をどう考えるか
というご趣旨かと思いますが、そのときの状況も様々考えられますので 、一概には
言えないわけでありますけれども 、基本的には、低金利がずっと続いていくという
ことは、金融機関にとっては利鞘を守ることが難しくなるという面があります。他
方、金利が上がっていく局面では、債券ポートフォリオに含み損が出るといったよ
うなことも考えられるわけですけれども 、では、両方でプラスとマイナスがあった
うえで、最終的には出口を迎えられるということは 、経済にとっても、国民にとっ
ても、金融機関にとっても、総体的にはプラスだというふうに思いますけれども、
移行過程をどうマネージするかということになると思います 。そこにつきましては、
金融機関、地銀含め、一定の頑健性を有しておりますし、また日銀の側でも 、例え
ば金融政策決定会合では、金融機構局が金融システムの状態をきちんと報告するこ
とにしておりますし、また金融庁とも連携してリスク管理の向上については促して
きておるわけでありますので、十分、金融システムの健全性と両立する かたちで適
切な出口を辿っていくということは可能だというふうに考えております。
(内田副総裁)
金融政策の枠組みのことから申し上げると、2006 年だったと思いますが、二つの柱
による点検というのを行うと、今の展望レポートの一番最後の章にそのように書い
てあるわけで、その中身というのはメイン・シナリオとそれからリスク・シナリオ
両方をみていく、そのリスク・シナリオの中で金融面の不均衡も含めて判断してい
くという枠組みになっています。そういう中で、氷見野副総裁からもありましたよ
うに、今では年 4 回展望レポートを議論するときには、MPMに金融機構局から報
告をさせるということも始めたわけです 。そういう意味で、その点も含めて金融政
策を判断していくというのが枠組みになっています 。そのうえで、YCCについて、
先ほど申し上げた通りで、これは金融仲介機能にも配慮しながら持続的に 緩和をや
っていくために導入した仕組みですので、そういう意味ではここで毎回議論されて
いるということですし、その点については、金融仲介機能はしっかりと発揮されて
いて、例えば、この間の貸出は 2~3%でずっと伸びてきているわけです。そういっ
たことも考えながら政策は行われているということですし、今後もこういうことを
考えながら、先ほども一番冒頭で申し上げましたが、金融市場で不連続なことが起
きないように、政策は考えていく必要があるというふうに考えています。
(植田総裁)
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一つ、マイナス金利についてもご質問があったと思いますので 。マイナス金利政策
ですけれども、一つには現在の強力な金融緩和の ベースになっている政策であると
いうことがあるかと思います。一方で副作用もあるわけですが 、金融機関収益への
影響というところが大きいと思います 。ただ、金融機関が総体としては充実した資
本基盤を備えているということで 、金融仲介機能は十分に発揮されているかなと思
いますし、収益のマイナスの影響も小さくするような工夫が 、この政策の中ではな
されているというふうに思います。 従いまして、現在の基調的なインフレ率がまだ
2[%]に達していないという判断のもとでは継続するのが適当であるというふうに考
えてございます。
(問)
総裁にお尋ねします。先ほどYCC政策には副作用があるという話をされましたけ
れども、副作用対応としてYCCを修正する場合なんですが、いずれの措置も金融
緩和の度合いを弱めることになると思います。副作用対応とはいえ 、現在のような
海外発の金融不安がくすぶっている中では、YCCの修正というのは慎重であるべ
きなのか。また一方で、副作用対応ということならば、経済 ・金融・物価情勢と切
り離して考えることは可能なのか、その辺について総裁のお考えをお願いします。
(植田総裁)
ご質問の趣旨を完全に理解したかどうかなんですが 、基本的にはYCCを大幅に修
正するかどうかというのは、経済・物価・金融に関する情勢が基調的にどういうこ
とかということで決めていくのが正しいかなと思います。そのもとで 、YCCのメ
リットとそれから副作用を比較衡量して決めていくということであるべきなのかな
というふうに思っております。
(問)
二点あります。最初は、今年の春闘は非常に強い、良い結果が出ていて、物価も企
業が価格転嫁を進める中、基調部分も少しずつ上がってるように思います。環境と
して、金融政策の正常化を議論できる環境がより整ってきたとみるのか、それとも、
やはり海外経済の不確実性を考えるとまだ先なのか、総裁ご自身の経済・物価のリ
スク等を考慮に入れたうえで、今のこの物価、春闘の動きをどうみてらっしゃるの
かが一点目です。
二点目は、フォワードガイダンスについてなんですけれども、現在、日銀のフォワ
ードガイダンスには量に関するものと金利に関する ものと複数あると思うんですが、
これをより整理して、分かりやすいものにする余地っていうのは、あるいは、する
必要性についてはどうお考えでしょうか。お願いします。
(植田総裁)
一番目の春闘でございますけれども、先ほど来申し上げていますように、基調的な
インフレ率がまだもう少し上がってほしいという中では、今年の春闘の結果はまだ
完全には出ておりませんが、ここまでの動きは喜ばしい動きになっているというふ
うには判断しております。ただ、これが今後も続いて定着するかどうかというのを
見極める必要があるかなというふうに、持続的 ・安定的な 2%の達成という目標か
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らは考えてございます。
それから、フォワードガイダンスについて、いろいろあるけれども、もう少し整理
する余地はないのか、あると考えているのかどうかというご質問だったと思います。
そういうことを含めて、全てのオプションについて、毎回の決定会合で今後議論し
ていくということになると思いますので、その点については毎回の決定会合の結果
をお待ち頂きたい、また、変えた場合は、きちんと説明させて頂くということにな
るかと思います。
(問)
二点、植田総裁にお伺いしたいんですが、総裁になられるま での経緯について、ま
ずはお伺いします。最初に打診されたのはいつ頃のことで、それを聞いたときにど
う受け止められたのでしょうか。すぐにお受けになったのか、それともちょっと考
えてからだったのかなど詳しく教えてください。
またもう一点なんですが、明日IMFの世界経済見通しが発表されます。そこでゲ
オルギエバ専務理事がですね、事前の会見のときに今年の経済成長率が先進国の 9
割で鈍化するということを話しています。そうした状況の中で 、一方で日本では金
融政策の出口戦略がどうなるかというところへの注目が高まっているわけなんです
が、マクロ経済学者としてもですね 、植田総裁がこの現状をどう受け止 めていらっ
しゃるのか教えてください。
(植田総裁)
前半のご質問ですけれども、この総裁人事の経緯について詳しいことはお話 しでき
ないということに、残念ながら申し訳ありません、なっています。ただ私自身、よ
く考えてお引き受けするということを決めたということは申し上げられると思いま
す。
それから二番目でございますけれども、世界の各国について、まだ私、見ておりま
せんけれども、IMFの近い将来出てくる見通しが下方修正であるということだっ
たかと思いますけれども、それがその通りになるかどうかは別としまして、世界経
済がややスローダウンの方向に入っている、更 に下振れのリスクもあるということ
は十分に認識しておりますので、日本経済の今後の情勢の判断において、その点は
十分考慮して毎回の政策決定に当たってまいりたいと、もちろん考えております。
(問)
植田総裁に二点伺わせてください。最初に出ていた積年の課題である物価安定の達
成のミッションということについての二点です。 2 月に国会答弁で、少し出ました
けど、就任の決断に至る経緯で、非常に誰がやっても難しい、厳しい状況にあると。
それが却って私にはチャレンジングな仕事であると思ったと、挑んでみたいという
一点だったというふうにおっしゃったと記憶しています。現状のこの認識として、
外的ショックという話も出ていますけれども、外的ショックがなければ、任期の中
で総仕上げをしたいとおっしゃっていましたが、 5 年間で仕上げられる状態に今の
日本の経済というのはあるんでしょうか。それが一点目です。
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二点目は、目標達成に近づけば、緩和の正常化を考えるとおっしゃいました。逆に
難しければ、緩和を継続しながら副作用を改善しなければならないと、今の状況が
続くのだと理解していますが、その見極めであったり、判断、その実行力について
総裁はどのぐらいご自分に対する自信といいますか、その見極める目というものは、
どのぐらいご自身にはお持ちでしょうか。
(植田総裁)
二点関連しているとは思いますけれども、前半のマイナスの外的ショックがなけれ
ば今の状態が続いていって、物価安定の目標は達成される、 5 年以内に達成される
と思っているのか、あるいは可能性が高いと思っているのかというご質問だと思い
ますけれども、国会の審議で申し上げましたように、物価に関して良い動き、良い
芽が出てきているということは確かかなと思います。別の表現で言えば、基 調的な
インフレ率が少し上がってきているという動きが出ている。更 にそれについて、先
ほどのご質問にもありましたように、賃金周りで更 に少し良い動きが出ているとい
うことですので、これが持続してより高い基調的インフレ率、2%の安定的・持続的
なインフレの達成ということにつながる可能性は十分あるというふうに思っており
ます。
後半の、そういうことに関する判断をお前はきちんとできるという自信があるのか
どうかというご質問だと思いますが、こういうことに長年研究者あるいは日本銀行
の審議委員として携わってきたという経験があって、それは力になるとは思います
が、いろんな中央銀行が、将来の物価見通しでは、過去にあるいは近い 過去でも失
敗しているということがありますし。 とんでもない人たちがやってきたわけではな
くて、かなりの場合に非常に優秀な人が経済をみた結果、そうであるという面もあ
ると思いますので、難しいことであるということは十分認識しております。全力を
挙げて頑張りたいと思います。
(問)
二点ほどご質問させてください。柔らかい質問で大変恐縮なのですが、植田総裁が
大切にされている自分の信念を示すような格言であったり、お言葉みたい なものが
あれば是非教えてください。二点目なんですが、その自分の信念を作り出した象徴
的なこれまでのご経歴のエピソードなど、もし教えて頂くことがあればお願い致し
ます。
(植田総裁)
こういうご質問が出るかなと思って考えていたんですけれども、残念ながら実は無
趣味・無教養な人間でございまして、何か格言を一つ大事に持って、それを厳しい
ときに頼りに生きていく、打開していくというようなことはしてこなかったなとい
うふうに、せいぜい辛いことがあっても明るく粘り強くやっていこうという程度で
ございます。申し訳ありません。
(問)
植田新総裁にお聞き致します。緩和継続ということをお話しなさっていましたけれ
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ども、改めて黒田総裁のこの 10 年についてお伺いします。黒田総裁、2%の物価目
標を掲げて、この間、大規模緩和を打ち出し、それを 10 年続けていきました。植田
新総裁からみて、この 10 年というのをどのように評価しているのか、お聞かせくだ
さい。また、この 10 年でETFですとか国債というのが、日銀の保有、かなり増え
てきています。この辺りの課題認識ですとか、また今後どのような対応をしていく
のか、よろしくお願い致します。
(植田総裁)
ひょっとしたら私が黒田総裁が就任された時期に仮に 、やや危険なことを申し上げ
ますが、総裁であったら決断できなかったかもしれないような思い切ったことをさ
れた、決断をされて実行されたというふうに評価しております。それは 、その時期、
10 年前の総裁として、一つの判断だったと思います。その結果は、これはもう今日、
話がいくつか出ましたように、一方で残念ながらいくつかの外的なマイナスのショ
ックがあったりしたこと、あるいはそれまでそこに至るまでの過程でのデフレ やゼ
ロインフレの経験が足を引っ張ったことなど がありまして、完全に 2%の目標を達
成する、しかも当初の 2 年でということは無理で、10 年経ってもという結果ではあ
るわけですが。それでも、デフレでない状況を作り出して、私どもにバト ンタッチ
して頂いたということは、非常にありがたいことだというふうに思っております。
従いまして、そのバトンを受け取って、先ほどどなたかのご質問にありましたよう
に、この 5 年間にできれば目標に到達するというようなことに全力を挙げたいと思
いますし、その際に、思い切ったことをやったことに伴う副作用についても 、配慮
しながら様々な政策措置を取っていきたいというふうに考えてございます。
(問)
植田新総裁にお聞きしたいと思います 。これまでの長い大規模な金融緩和で 、政策
自体も複雑化、そして分かりにくくなっていて、様々な副作用についてもご指摘さ
れています。市場では、イールドカーブ・コントロールについて 、新体制のもと早
期に政策修正するのではないかなどの見方など 、いろんな観測が出ているんですが、
そんな中、今後、日本の中央銀行の市場との対話という観点で 、一番重要なこと、
心掛けたいことはありますでしょうか 。また、これまでの日本銀行と変えていきた
い部分などありましたら、ご教示頂けますでしょうか。
(植田総裁)
いろいろ難しいことを、いろんな面でやっているというのが現在の政策だと思いま
すので、必然的に分かりにくいというところはあるかと思います 。どこをどう変え
たらというのは難しいですけれども、一つ一つ 、いっぺんに全部というわけにはい
かないかもしれませんが、解きほぐすように分かりやすい説明を、抽象的な言い方
で恐縮ですが、心掛けていけたらなというふうに思っております。
(問)
植田総裁にお聞きしたいんですが、植田総裁は、日本を代表する経済学者として、
これまでも数々の論文等を、あるいは著作等をお書きになっておられました 。しか
もそれは、現在の日銀の金融政策とも関連する内容を含むがゆえに、市場参加者は、
そこから今後の日銀の出方を占おうというふうにしているわけですが、一方で、学
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者としての判断、学者としての情報発信と、政策当局者としての判断・情報発信は、
おのずと違いがあるという点も理解できるところです。白川元総裁が、15 年前に就
任の記者会見で、白川さんも金融政策についての大著を書かれましたが、必ずしも
そういう過去の著作物には縛られずに判断していきたいという趣旨のことをおっし
ゃっていたと記憶しますが、植田総裁は、過去のそうした論文や著作物で書かれた
ものをどのように位置付けられているのか、市場参加者はそういったものをどのよ
うにとらえ、理解すればいいのか、その点についてのご見解をお聞かせください。
(植田総裁)
私が書いたものをどういうふうに使って頂けたらいいのかというご質問の部分は難
しいですけれども、学者が書くものと政策担当者の判断ということの違いというこ
とについては、お話しできるかなと思います。仮に同じ人がやるとしてもですね、
学者の場合は、やはり学者として面白いこと、学者として正しいことを書かないと
いけないということですので、どうしても起こっていることの一部分に焦点を当て
て、その部分についてよく考えてみたらこういう結論になるという展開になりがち
かなと思います。これに対して、政策担当者としては、現在起こってること の、あ
るいは何か政策を変えようとか考える場合には、関係する全てのことを、大事なこ
とは全て考えないといけない。それを考慮してまとめると、結論は、金利を上げる
のか下げるのか分からない、というようなケースも、論理的には非常に多いという
ことだと思います。ですので、学者としてこういう場合には金利を上げるっていう
論文を書いていたとしても、同じ人が似たような状況で政策判断を迫られたときに、
学者として前提条件に入っていなかったようなことも考えつつ判断を下さないとい
けないということですから、結論は全く違った方向になるという可 能性もあります
し、上げるのがいいのか、下げるのがいいのか、完全には分からない中で、時間に
迫られて決断しないといけない、ということも多々あるかと思います。そのうえで、
学者との違いは、出した結論・決断に対して責任を取るというところが違うんだと
思いますが、そのようなことが両者の違いであるかなというふうに考えております。
(問)
総裁に一点お願いします。大規模緩和が 10 年続き、効果を上げる一方で、国債市場
の歪みなど副作用も表面化しています。先ほどYCCについてもご指摘がありまし
たが、今後 2%の物価目標達成に向けて、大規模緩和を維持するうえで、どういっ
た副作用に対して、より丁寧に目配りをしていくべきか、お考えを伺えますでしょ
うか。
(植田総裁)
これは、ここまでもう既に今日議論になりましたYCCの市場機能に与えるマイナ
スの影響、あるいはマイナス金利政策の金融機関収益に与える影響等を、全て今後
も注視していくということかなと思います。もう一つ、ここま でそれほど今日出て
こなかったところと致しましては、 急に持続的・安定的に 2%になるということに
気づいて、急に政策を正常化するということになると、非常に 大きな調整をしない
といけないですし、それに応じて市場 ・経済も大きな調整を迫られるということが
あるかと思いますので、なるべくそういうことがないように、前もって的確な判断
ができるようにしていかないといけないということかなと思います。
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(問)
総裁にお伺いしたいんですけども、物価の基調のことを以前から重要だってお話を
されてるかと思うんですけど、足元 10~12 月のGDPがマイナス幅が拡大してです
ね、日銀が予想していたよりもちょっと需給ギャップの改善が弱いかと思うんです
けども、数値的に言うのは難しいかと思うんですけど、持続的に物価が上昇してい
くうえで需給ギャップがプラスになって、どれぐらいの水準に推移するというよう
な見方をすれば、物価が持続的に上がっていくというふうに考えられるのか、その
辺をできればお伺いしたいんですけど、よろしくお願いします。
(植田総裁)
これはマジックナンバーといいますか 、レベルについて、私の頭の中に今、適切な
数値が入ってございません。ただ、2%のインフレ率が持続的に保たれるというため
には、GDPギャップが下がり続けるとか、ある程度以上上がらない、現状から上
がらないというところでは苦しいということは申し上げられるかと思います。
(問)
植田総裁にお伺いします。本日岸田総理にも会われたと思いますけれど 、これから
政府との関係性についてどのような関係を構築していくべきかとお考えでしょうか 。
(植田総裁)
先ほどの記者会見でもちょっと申し上げたところですけれども、お互いの意思疎通
を密にして、経済・金融・物価情勢に応じた機動的な政策をお互いにするというこ
とかと、もちろん思っております。
(問)
植田総裁に伺います。総理との会談の後に、政府との共同声明について直ちに見直
す必要はないとご説明されましたけれども、中長期的にみた場合に、この共同声明
について見直す必要性があるというふうにお考えなんでしょうか。
(植田総裁)
これは、現状では特に何も考えてないと申しますか、現在の情勢を前提とする限り、
見直す必要はないということですので、何か大きく経済・物価情勢が変わっていっ
たときには、また改めて政府と議論させて頂く余地もあるのかなというふうに 、も
ちろん考えております。
(問)
副総裁お二人にお伺いします。内田副総裁は日銀の新潟支店長、氷見野副総裁は新
潟の三条の税務署長をそれぞれ歴任されていると思います。そうした経験も踏まえ
て、地域経済の現状認識と、任期中に地域経済に対してどう目を向けて政策運営を
担っていかれるのか、お考えをお聞かせください。
(氷見野副総裁)
日本経済全体としては持ち直しの状況になってきているというふうに思いますし、
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それは地域経済でもその影響はみられると思いますけれども、他方、人口減少その
他様々な課題を抱えていることは事実であります。ただ、私、三条税務署時代にも、
地域の経済界の方々が様々な工夫をされておられる様子というのはよくみ てまいり
ましたし、また私の出身地の富山でもそういったことがみられると思います。地域
の中で行われている工夫・努力を、日銀の側としては粘り強い金融緩和で後押しし
ていくといったことが、現時点では一番大切ではないかというふうに考えておりま
す。
(内田副総裁)
日本銀行は、おそらく他の中央銀行と比べても 、地域経済あるいはミクロ調査とい
う意味では、大変細かく把握ができているというふうに思います。自分で支店長を
やっていた経験で、企業経営者の方々からかなり詳細なお話、本音のお話を聞かせ
て頂き、その後の政策を考えるうえで今でも役に立っています。大変感謝をしてい
ます。地域経済、人口減少、地域 企業数の減少、その他いろいろな課題を抱えてい
ますが、逆に地域の方から新しい流れが出てくるということも度々目にしてきまし
たし、そういう意味で、地方と中央ということではなくて、各地域がそれぞれの特
色の中から新しい動きが出てくることを期待したいというふうに思います。
(問)
植田総裁にお伺いします。疲弊する地域経済の地域の声をですね、どのように受け
止めながら政策に生かしていきたいかについて、ご出身 、静岡県とお伺いしていま
すので、出身のこともちょっと思い浮かべながら教えてください。
(植田総裁)
これは日本経済にとって非常に大きな課題であるというふうに考えております。日
本銀行という立場から申し上げますと、各地にある支店 、事務所等のネットワーク
を使いまして、地域の情報を密に吸い上げ、それを政策に生かしていくということ
だと思います。各地方の方々という点から申し上げますと、ちょっと難しい言い方
になるかもしれませんが、その地域を活性化させるため に、例えば東京や大阪を通
じてということではなく、直接世界とつながるような何かイノベーションの仕組み
を考えて頂く、あるいは場合によってはそこに地域の大学も巻き込んでいくという
ような様々な活動を大規模にやって 頂くというようなことが一つ考えられるかなと
思ったりしております。
(問)
植田総裁に一点お尋ねします。今日からちょうど 2 か月前にですね、新総裁として
植田総裁の名前が報道されたわけですけれども 、この間どういったご心境で、そし
てどういったことをお考えになって、 2 か月間お過ごしになられましたでしょうか。
(植田総裁)
これは先ほどお答えした質問と答えが近くなるかと思いますけれども、それまで直
近は学者としてやってきて、学者として面白いこと 正しいことを金融政策を中心に
分析してきたわけですけれども、政策担当者になるかもしれないということになっ
てまいりましたので、政策担当者として今起こって いること、あるいは自分が考え
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てきたことをもう一度考え直してみるとどういうふうになるか という観点から、い
ろいろ考えて時間を送ってまいりました。
(問)
植田総裁にお伺いします。経済における中央銀行の役割についてですけども、これ
まで例えば、奴雁ですとか配管工、医師など例えられてきたわけですけれども、植
田総裁はどのようにイメージされているか、あるいはどうありたいか 、お聞かせく
ださい。
(植田総裁)
時間の関係で簡潔に申し上げますと、やはり国会でも申し上げましたが、金融とい
うのが経済にとって非常に大切なインフラである 、その金融の安定性を公共財とし
て提供する、金融活動の安定性を提供すると。その中には物価の安定性も含まれる。
物価がゆらゆらしていたんでは経済活動がうまく行い得ないということで 、経済の
公共財としての金融、あるいは金融の安定性 、物価の安定性を担保する組織である
というふうに考えてございます。
(問)
植田さん、日本経済の成長が遅いのはなぜですか。金融的な現象ですか、 それとも
実体経済が引き起こしたものですか。よろしくお願いします。
(植田総裁)
日本経済の中期的な成長率が弱い理由に関するご質問ということでよろしいんでし
ょうか。部分的には金融面が強く影響して成長率が下がったということがあったか
と思いますが、中長期の姿ということで申し上げれば、人口減少とか、生産性が思
ったほど伸びていないという、実体経済にまつわる話の影響度の方が大きかったと
いうふうに思ってございます。
以 上