1
2023年11月30日
日本銀行
安達審議委員記者会見
――2023年11月29日(水)午後2時00分から約30分
於 松山市
(問)
二点お願いします。まず一点、懇談会では出席者からどのような話やまた日銀に対
する要望などが出たか、印象などを含めて教えてください。
(答)
本日は愛媛県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や
地域経済が直面する課題などについて、大変貴重なお話を伺いました。また 、日本
銀行の金融政策運営に対する率直なご意見 ・ご要望もお伺いして、大変有意義な意
見交換ができたというふうに考えております。この場をお借りしまして、本日ご出
席頂いた皆様に改めて御礼申し上げます。懇談会での話題は非常に多岐にわたるも
のでしたので、全てを網羅することはできませんけれども、私が印象深かった話 等
を整理して申し上げたいと思います。まず足元の愛媛県の景気についてです けれど
も、コロナ禍からの経済活動の回復などにより 、緩やかに持ち直しているという趣
旨のお話を頂きました。一方で原材料価格の高騰が企業収益に与える影響の ほか、
海外経済などに不透明感があることから、先行きについては慎重な見方をされてい
るご意見も聞かれました。あと印象的でありましたのは、多くの方がやはり人手不
足を課題として挙げられておられます。人口減少に加えて、感染症禍 における人員
整理の影響、都市部への労働力の流出、という声が聞かれました。こうした中、多
くの企業がデジタル技術の活用の ほか、外国人労働者を雇用することなどで人手不
足の対応を行っているという話が聞かれました。もう一点 、価格転嫁については、
ある程度規模が大きい先では進捗して いますけれども、規模の小さい先では十分に
進められていないという声が聞かれ ました。こうした先では収益環境が引き続き厳
しいほか、賃上げにも苦慮しているという声が聞かれました。金融面では、ゼロゼ
ロ融資に関する企業の返済負担、これが非常に大きいという話が聞かれました。金
融機関からは、経営改善支援など によりサポートしていきたいという前向きな取り
組みに関する声が聞かれました。また、金利上昇が中小企業 に及ぼす影響、これに
も配慮しつつ今後の政策運営を行ってほしいという意見が寄せられました。以上で
ございます。
(問)
重なるかもしれないんですけど、日 銀に対する要望としては、先ほどの金利の面で、
よろしいでしょうか。
(答)
そうですね。はい。
(問)
2
あともう一点、今回の懇談会の挨拶でも触れられてたと思うんですけども、改めて
今回の意見交換を踏まえて、愛媛県経済の現状と先行きの見通しについてはどのよ
うにみていらっしゃいますでしょうか。
(答)
現状につきましては、まず物価上昇とか海外経済の回復ペース鈍化の影響が一部に
はみられますけれども、全体としては持ち直していると 。その大きな要因と致しま
しては、これはコロナ禍で特に落ち込みが大きかった部分の反動というのもあるの
かもしれないですけれども、サービス消費と観光需要の回復というのが非常に大き
いという状況です。サービス消費につきましては 、ペントアップ需要と人流の増加
が最近みられるとのことで、それではっきり回復しているという状況です。ま た、
愛媛県内を訪れる観光客や宿泊客の数というのは、これは国内客を中心にコロナ禍
前の水準まで回復していて、インバウンド客につきましても、道後エリアとかしま
なみ海道エリアを中心に着実に持ち直して います。先行きにつきましては、引き続
き持ち直していくと思います。物価高の中で家計の生活防衛的な動きとか、原材料
価格の上昇が企業収益とか投資行動に及ぼす影響にも注意が必要だというふうに考
えてますので、松山支店を通じて丁寧に みていきたいというふうに考えております。
また、より長い視点でみますと、愛媛県経済が持続的に成長・発展を続け ていくた
めには、人口減少とか少子高齢化といった構造的な問題に対処する必要があるとい
うことで、そのために何が行われる必要があるかということ で、これは行政の方々
とも連携するかたちで地域の魅力や活力を向上させていくというような動きがある
ようです。特にデジタル技術の活用による省力化と働き方の見直しといったものが
あるようです。
(問)
午前の講演でですね、長期金利が 1%を大きく上回る上昇をした場合、実質金利の
上昇を通じて金融緩和の効果を低下させてしまうと、そういうお話をされたんです
が、これ実質長期金利のお話だと思うんですけども、講演の資料をみ るとですね、
予想物価上昇率、中長期の部分なんですが、1%前半ぐらいにだんだん収斂している
ような感じに見えます。やはりそういう意味では緩和効果という観点からですね、
長期金利はやっぱり 1%前半ぐらい、その辺りが一つの緩和効果というか実質長期
金利がプラスかマイナスになる分岐点になり得るのかどうか 、その辺ちょっと実質
長期金利どのように考えてるのかということも含めてお願いします。
(答)
足元も含めてですね、長期金利の動きというのは日々変動してますので、こ ちらか
ら何かその水準を具体的に申し上げるといろいろ影響ありま すので具体的には申し
上げませんけれども、より長い視点でみ るとマクロ経済的に、やはりその実質金利
が、今マイナスというのが非常に経済をサポートしてると思いますので、現状やは
りプラスの領域に入ってくるというのは、ちょっとまだ時期としてはですね 、悪影
響の方が大きいのかなというふうに考えています。
(問)
金融政策、特にマイナス金利政策について伺います。午前のご挨拶の方で賃金と物
3
価の好循環はまだ十分に達成したと言える段階にはないっていうことだったんです
けれども、マイナス金利の解除について、いつ頃どういった条件が整えば判断でき
ると安達委員は考えてらっしゃるでしょうか。
(答)
一つは、非常に定性的な言い方で申し訳ないんですけども、賃金と物価の好循環 と
いうのをずっと繰り返し申し上げておりまして、基本的にはですね、それが実現す
るという状況になるまでは、やはりなかなかベースとしてのマイナス金利の解除っ
ていうのは難しいのかなというのは、個人的な考えです。だから今のところそこま
でまだ行ってないのと、あとやはり来年の春闘を中心とした来年度の賃上げについ
てのいろんな情報がポツポツ入ってきてはいるんですけども、大企業は割と前向き
だという印象があるんですけども、中小企業はですね 、やはり今年度並みの賃上げ
をするかどうかということに対しては、かなり厳しいという声がございますので、
そういう面ではいつ頃それを解除するかというような話 というのは、まだちょっと
できるような状況ではないかなというふうに思ってます。
(問)
先ほどの質問に関連してですけれども、中小企業の方で今年度並みの賃上げを続け
ると事業に支障を来すということを指摘されたかと思うんですけれども、まあそう
いう声があるということを紹介されてたかと思うんですけど、例年大企業に比べる
と中小企業の賃上げっていうのは時期が後になると思うんですけれども、大体春以
降だと思うんですけど、そうするとその趨勢を見極めるタイミングってのはですね、
安達さんの中では春以降ということになるんでしょうか 。どのぐらいの時期だとお
考えでしょうか。
(答)
そうですね。今年度もそうだったんですけども、やはり 年度が明けないと実際の春
闘でどれぐらい上がったかっていうの は中小企業も含めてですね、分かりませんの
で、そこはやはり非常に重要な政策決定をする可能性がそれでありますので、そこ
は慎重に私は考えた方がいいんじゃないかなというふうに思ってます。なので、年
度明け以降ということになるのかなというふうに考えてます。
(問)
新年度っていうことですね。
(答)
新年度、はい。
(問)
ちょっと前提の質問が、マイナス金利政策がいずれかのタイミングで解除されてで
すね、ゼロ金利に戻った場合にですね、ゼロ金利政策の状態っていうのは、審議委
員の中では、それは大規模な金融緩和を継続しているというふうにお考えでしょう
か。その状態についてはどういう認識をされてますでしょうか。
4
(答)
それについては多分、解除をもし仮にしたときのですね、その経済状況、これ物価
の方は 2%[の物価安定目標]というのはクリアしてるっていうのは、それはもちろ
んその通りなんですけども、まず、実体経済の状況がどうなってるかっていう とこ
ろで、多分いろいろ変わってくると思います 。私自身が今それについて何かイメー
ジがあるかと言われると、いろいろ考えてる最中ですので、ちょっとこの場で何か
言うことはできない状況です。
(問)
賃金と物価の好循環について、今日の安達さんの講演からですと、春闘で高い賃上
げが確認できれば、その賃上げの波及、サービス価格への波及というのは割とスム
ーズにいくのかなという印象を持ちまして、そうすると賃金 ・物価の好循環の確認
というのは、あとは、来年度の賃上げの持続性、これを見極めれば、2%物価目標達
成って判断が可能かどうかっていうのを教えてください。
(答)
私は講演の中でも、特に粘着的な消費者物価っていうところに注目してまして、結
局賃上げの物価への波及っていろいろあるんですけども、私個人的にはですね、や
はり粘着的な物価というのがある程度全体の物価を下支えするぐらいの上昇率にな
るというのが一つのメルクマールだと思ってい ます。その数字のイメージ感として
はですね、なかなかその通りいくかどうかっていうのはまだ 分からないんですけど
も、やはりデフレになる前の状況を一応参考に考えております。
(問)
数字ってどのぐらいですか。
(答)
だから一応 2%の消費者物価指数上昇率と言ってますので、私の大体のイメージだ
と、粘着的な物価の上昇の寄与度がまあ多分 1.3~1.5[%]ぐらいというイメージで
考えてます。現状はですね、まだ 1[%]割るぐらいだと、私の計算ではそういう感
じなので、まだまだ道半ばですという話をしているということです。
(問)
これまでの質問とちょっと重なる部分ありますが、午前の挨拶の中で出口の政策の
議論を行う段階にないと言及されてますけれども、この議論を行える状況との距離
感をちょっと改めて今の現状のご認識を伺えないでしょうか。
(答)
今のところはですね、賃金と物価の好循環が 2%のインフレ目標実現に向けてきち
んと回り始めるかどうなのか、現状はようやくちょっと回り始めるかもしれないな
というようなイメージですので、それが回り始めるという確率が上がってきた段階
で、ある程度高まった段階で出口の話をし始めるということです 。実際はまだそこ
までは行きついていない状況です。
5
(問)
実質賃金の関係なんですけれども、先 日植田総裁が国会で、緩和の解除を決める際
に、実質賃金のプラス転換は必ずしも必要ないということをおっしゃっていたんで
すけれども、安達さんはその点についてどのようなご認識をお持ちでしょうか。
(答)
なかなか難しい質問なんですけども 、過去のデフレ局面においては、やはり物価の
上昇が先に来ることが多くてですね 、実質金利は暫くマイナスという状況の中、景
気が回復してきてそれで実質賃金もキャッチアップするということが 、過去として
は多かったというかありましたので、そういう意味で必要条件ではないという意味
だと思います。ただ、状況として今回コロナ禍明けでですね、いろいろ想定しない
動きを内外経済みせていますので、そういう意味ではですね 、実質賃金は先にプラ
スになる可能性もありますので、 実質賃金プラスになればそれはもちろん非常に良
いことですけども、そこは必ずしも必要条件ではないという意味だと思います。
(問)
物価の上振れリスクを講演で話されていたと思うんですけれども、 安達さんの見通
しとしてはどのくらいを考えていらっしゃいますでしょうか。来年度 、再来年度で
すね。
(答)
自分の[見通し]がどこの位置にいるかっていうのは [はっきりとは]ちょっと言えな
い話だと思うんですけども、大雑把に言って私は基本的に中心 値ぐらいに今いるイ
メージです。私自身の見通しはそれほどずっと変わってないので、要するに、展望
レポートで結構上振れてますけど、私 の見通し自体はそんなに上振れていない感じ
ですね。全体として[私の見通しは]高かったんだけども、今、中心値ぐらいにいま
すということです。イメージとしては 2%に、例えば 25 年度では、やっぱりちょっ
とぎりぎり届かないのかなと。もちろん月次でどういうふうなパスを描くかってい
うので、平均値は変わってくるんですけども、今のところはやはり、輸入物価の下
落の影響はこれから出てくるっていうそのストーリーとしては、 多分、全体の政策
委員見通しも私の見通しも間違ってはないと思い ますので、これから減速していく
と思ってますので、そこがどういうふうになるかで変わってくるということだと思
います。
(問)
ちょっとアバウトな質問で恐縮なんですけれども、県経済の今後というところで、
全体の概況はお話し頂いた通りだと思うんですけれども、今後、愛媛の経済が成長
していくに当たってのポイントとか着目してる点、こういった懇談会とかの中を通
して感じられたところがあればお伺いしたいと思います。
(答)
なかなか私も不勉強なところがあってですね、それほど気の利いたことを言えるか
分からないんですけども、非常に強みとしてあるのは、やはり観光資源だという ふ
うに思ってまして、そこをどういうふうに生かしていくかということで非常に皆さ
6
んご尽力頂いてるというところです。観光業界 というのも、お客様に対してのサー
ビスですので、非常にノウハウというか実は結構難しいとこもある代わりに、高い
付加価値を付けることができる産業ではないかというのを感じてましてですね 、そ
の付加価値をどういうふうに、人材 も含めて付けていくかというところにかかって
いるというふうに思います。そういう意味で、非常に人手不足とかですね、どうし
てもやはりサービス業っていうのは 賃金はこれまであまり高くなかったですし、そ
の割には非常にご苦労が多いということで、新しく入 ってくるよりも流出していく
方が大きいという、それをどういうふうにしてその流れを止めて、サービス業の方
に向かってもらうかというような、そういう雇用の入口のところからの努力ってい
うのをかなりされているような印象を受けましたので、そこがやっぱり一つの活力
というかポイントになるのかなというのは感じました。
(問)
マイナス金利に関連して質問があります。午前の挨拶の中で、YCCの運用柔軟化
に関して物価の上振れリスクに配慮するという 、リスクマネジメントの観点が重要
との説明がありましたが、この考え方というのは このマイナス金利にも適用できる
んでしょうか。つまり 2%の物価目標の達成には距離があるということで出口政策
の議論とは切り離したうえでですね、リスクマネジメントの観点でマイナス金利を
解除すると、このような考え方についてご見解を伺えればと思います。
(答)
多分YCCで一つ目標としていた 10 年物の国債利回りと、政策金利であるマイナス
金利の部分とは、ちょっと性格が違うのかなという ふうに思っています。一つはリ
スクマネジメントということで 10 年物の国債の利回りの変動をより柔軟化してきた
わけなんですけど、これはリスクマネジメントの 一つとしてやはりイールドカーブ
が歪むということの副作用が、あまり二、三年前は意識していなかったんですけれ
ども、意外と大きいということで、それがしかも企業の資金調達に影響を及ぼすと
いう、そういうことが去年の後半くらいから だんだん分かってきましたので、それ
に対して一応措置をする必要がでてきたというのが 主なポイントだと思います。長
期金利は、結局その時の物価とか見通しとかにも影響を受けて動きますので、あま
り現状のインフレ率とかけ離れた、当時、10 年債利回りをもう思いっきりゼロに固
定する、ゼロ近傍に固定するっていうのは、 その現状のインフレ率との兼ね合いで
はやや不整合といいますか、言ってみればものすごいデフレの時に行われた政策を、
ものすごいデフレでない時にも同じように適用していたっていうところの副作用み
たいなのが出てきていましたので、それを より物価が上振れた時のために柔軟化し
ましたと言って、その向こう側というかその先には 、企業の資金調達がイールドカ
ーブが歪むことによって支障を来すということがありましたのでやったわけですね 。
ただマイナス金利の解除っていうのはそれとちょっと性格は違っていて、ここはマ
イナスにしてること自体は一応非伝統的というか通常とは違うんですけども、政策
金利として短期金利を操作するっていうのは、それはオーソドックスな金融政策の
一面もありますので、そこは多分非常に根幹ではないかなというふうに思ってます
ので、私は一応区別はしてます。
(問)
7
先ほど懇談会中の出席者からのお話の中で 、金利上昇による中小企業への影響を配
慮して政策を決めてほしいみたいな要望があったとお話がありましたけど、改めて
その要望を受けた受け止めとかですね、どう考えていきたいかっていうのは、何か
あったらお願いします。
(答)
今現在ではですね、金融政策についていろんな見方がありまして、 これはもちろん
現在の物価上昇というのが、どちらかというと輸入物価の上昇 、コストプッシュみ
たいなところがあるので、それが剥落してしまうと実はそんなに日本経済も強くな
いので、現状の緩和を維持すべきだっていう考えの方もいらっしゃれば、もう デフ
レという時代は終わったのだから、正常化してもいいんじゃないかという意見もあ
るということで、その中でどうするかってことが問われて いるわけです。今回特に
地域の中小企業の方のお立場ということで限定はされているんですけども 、将来の
金利上昇に対するリスクというのはかなり思ったよりも大きいかもしれないという
割と切実な訴えみたいなところもございましたので 、そこは考えていかなければな
らないなと思います。これが、例えばよく俗に言う、言い方は悪いですがゾンビ企
業みたいな話ですと、それはある意味 、資本主義の社会ですから、自己責任 という
ところもあるんでしょうけれども、そういうところでやはり単純に割り切れない部
分で、過去のコロナ禍での状況とかもあってですね、なかなか状況は複雑でありま
すので、その辺は十分考慮しなければならないなというような印象は受けました。
(問)
挨拶の中で、コロナ禍を経て日本経済の実力が問われている段階に入りつつあると
いうお話があったかと思うんですけども、これもう少し細かく言うと各都道府県 、
各地域の経済の実力が今後問われていくという受け止めをしてもいいものでしょう
か。
(答)
それは、よりミクロの方に引き付けると そういう話になってくるのかなと思います 。
特にコロナ禍明けてみると、これはどの地域もそうなんですけども、 人手不足って
いうのがよりはっきり表れてきていて 、しかも例えば交通とか運輸とかですね、基
礎的なインフラに近いところでより深刻化してるっていうのも、これ全国でもそう
なってますので、そういう意味ではいろんなところでですね 、真剣に考えなきゃい
けないなっていうところは出てきてるとは思います。
以 上