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布野審議委員記者会見(6月21日)要旨 [PDF 179KB]

SPEAKER記者会見(6月21日)要

PUBLISHED22/06/2018, 00:00:00
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2018年6月22日

日本銀行

布野審議委員記者会見要旨

―― 2018年6月21日(木)

午後2時から約30分

於 仙 台 市

(問) 今日の金融経済懇談会でどのような議論がなされたのか教えて下さい。

(答) 本日の懇談会では、行政、金融、経済界の代表者の方々から県内の復

興に向けた取組みや、最近の当地経済の話題についてお伺いしました。また、

事前に宮城県に入りまして、被災地を含めて県内を視察したほか、地元企業の

経営者の方々から、最近の業況に加え、直面する課題等について伺いました。

本日の席上では、インバウンド客など観光客の増加に向けた取組みや、

最先端の研究施設の誘致をテコに地域活性化に取り組んでいるご様子やご意

見を頂きまして、様々な話をさせて頂きました。また、中小企業を含めた幅広

い方々から、独自技術を活かした商品やサービスを武器に新市場の開拓に取り

組んでいらっしゃる様子等を伺いました。

そうしたことで、当地の復興が着実に進んでいることを認識するとと

もに、少子高齢化や人口減少といった課題の克服に向けて、関係者の皆様が前

向きに取り組んでいらっしゃる様子を沢山聞かせて頂きまして、その熱心な様

子に感銘を受けたところです。

(問) 宮城県の金融経済情勢について、現状や今後の課題への認識をお聞か

せ下さい。

(答) 当地の経済は、 全体としては緩やかな回復を続けているとみています。

鉱工業生産については、世界的なIT関連需要の高まりもあって、緩やかに増

加していますし、設備投資も増加しています。個人消費については、雇用・所

得環境の改善を背景に底堅く推移しているとみています。一方で、震災の復

旧・復興関連工事がピークを過ぎつつあることから、公共投資や住宅投資は高

水準ではありますが徐々に減少している傾向にあるとみています。

先行きにつきましては、緩やかな回復を続けていくと想定しています

が、復興需要の減少といった当地特有の動きに加えて、人口減少や少子高齢化

といった社会構造の変化がもたらす当地経済への影響につきましては、今後と

も注意深くみていく必要があると思います。

(問) 物価についてですが、先程の懇談の中でも、物価の先行きについて、

下振れリスクが大きく、注意が必要だということをお話になっていたと思いま

す。改めて、伸びが鈍化している物価の現状についての認識と先行きの見通し

をお願いします。

(答) 物価については、ご承知のとおり、ここにきてやや伸びが鈍化してい

るという認識にあります。4月の全国の消費者物価は、除く生鮮食品・エネル

ギーでみますと+0.4%になっています。このようにやや鈍化しているわけで

すけれども、先行きにつきましては、様々な業界における値上げのニュース等

も聞かれていますので、値下げする部分もある反面、値上げの動きもあり、や

や揉み合いの状況ながら、やや長い目でみれば上昇傾向を強めていくだろうと

みています。

(問) 米国の通商政策ですけれども、トランプ政権の保護主義的なスタンス

で、 貿易摩擦、 貿易戦争といった様相を呈しつつあるかと思いますが、 こういっ

たものが、世界経済、そして日本経済にどういう影響を与えるのか、お考えを

聞かせて下さい。

(答) まず、全般論としましては、このような保護主義の高まりは、世界経

済、具体的には世界貿易量の動き等々に影響を与えかねないリスクですので、

憂慮していると言えます。心配しながら注視しているというのが私の今の気持

ちです。

日本につきましては、わが国は海外との貿易に立脚している経済です

ので、保護主義によって世界経済に鈍化等の影響が出てくれば、日本経済への

影響はやはりあると想定しておくべきではないかと、1つのリスクと認識して

注視を続けていかなければならないと思っています。

(問) 先行きの物価の下振れリスクが大きいと述べられたのですが、これは

今回、見方を変えられたということなのでしょうか。それに関して、企業や家

計に価格を上げ難い慣行が残っていることであるとか、価格競争環境の厳しさ

があると述べられましたが、これは足許で物価が弱含んでいることを説明する

ものとして理解してよいのでしょうか。

も う 1 点 あります。講演の中で、構造改革や成長戦略の取組みは全国

一律ではないと、繁忙度が日本全体で増す中で歪みが出ていないか、細かく目

を配っていくというように述べられていますが、ここでいう歪みとは具体的に

何か想定されているようなことがあるのでしょうか。例えば、人手不足による

生産性向上への投資が一巡すれば、日本銀行としては、賃金・物価が上がって

いくと整理されていますが、一方で人手不足倒産といった話もよく聞きますの

で、そういったことを念頭に置いているのか、教えて下さい。

(答) まず、物価の下振れ等については、毎月新しく出てくる物価の指標を

みていますので、直近で出てきた物価の指標に注目すると、やや減速と言いま

すか、少し滞っていると思っています。それ以上のものではないのですが、次

の質問の答えとも関係して、経済の需給ギャップにみられるように、経済の右

肩上がりの動きは失われていないので、物価も、このひと月の指標をみて然程

悲観する必要もないだろうとみています。

歪 み に つ い て 、 私 が 何 を 言 及 したかったかと言いますと、例えば、数

年前は経済全体にスラックが多く、 無駄が多かったと言えます。 それが今では、

総需要が高まり様々な内外の需要に支えられ、需要が引っ張っていくという循

環がモメンタムを持って動いてきているので、スラックが徐々になくなってき

ているとみています。端的には、人手について、特に現場に近いところで労働

需給が逼迫していることに表れているとみています。歪みとは何かと言います

と、逼迫してきた分野ないしは職種、産業において、例えば長時間労働であっ

たり、様々なストレスがかかり過ぎることであり、需給の逼迫感が増すことに

よる予期せぬ歪みのようなものが出てくる可能性があると考えられますので、

そこについてはよくみていかなくてはならないという趣旨で申し上げました。

(問) 2点、 お聞きします。 宮城県内で復興工事のピークが過ぎつつあって、

人口減少が進んでいるという中で、今後どのような取組みですとか、どういう

動きが重要になってくるのでしょうか。

また、宮城県内の期待できる点について、お聞きしたいです。

(答) 期待できる点からお答えしますと、こちらに来て感じたのですが、非

常に良いところですので、目下のところ、色々な意味で逼迫している人手等に

対して、当地は住むのに良いという意味で、産業立地や、人材誘引において、

強みを持っている土地柄ではないかとみています。

最 初 の 質 問ですが、人口減少ないし人手不足に対し、どのような取組

みがあるのかにつきましては、幾つか考えられると思います。今から申し上げ

ることが進展していることはグッドニュースなのですが、まずは女性の雇用、

もう1つは高齢者の雇用、それから外国人の雇用、最後にロボットとか省力化

の努力によって人手不足を補うこと、そのような取組みを、「女性なのか、高

齢者なのか」だとか、「女性、高齢者よりも外国人なのではないか、外国人で

はないのではないか」など、「or」の議論が多いのですが、目下のところ、こ

の地に限らず、わが国の経済全体において、このような「or」の議論をしてい

る余裕はない状況になりつつあります。すなわち、そのような手段を、総合的

に採用して、全面的に展開していかないとなかなか解決していかない問題であ

るとみています。

(問) 講演の中で物価上昇率の高まりが遅れるリスクがあるということを言

われていたと思うのですが、既に足許の物価だけではなくて、今年に入って短

期の方は若干上がっていますけれども、日本銀行が注目している中長期の予想

物価上昇率はずっと横ばいで、なかなか上がってきていないと思います。見方

によってはもうリスクが顕在化しているとも言えると思うのですけれども、そ

の辺のことと、ではもし仮に現状はそういう判断ではなくて、リスクが顕現化

した場合に、日本銀行の対応というか、お考えをお伺いしたいです。

(答) 今のご指摘の、物価上昇率がなかなか上がらない、予想物価上昇率も

滞っているのではないかといったことも含めて、毎回の政策決定会合で点検し

ながら、私自身、先入観を持たずに、政策決定会合に参画しております。政策

決定会合は、 情勢判断はもちろん議論しながら、 必要な調整を行っていくのが、

政策決定会合の趣旨でありますので、そのような形の取組みになると考えてお

ります。従って、今の政策については、7月末に次の政策決定会合が予定され

ておりますので、それに向けて、修正する、しないも含めて先入観を持たずに

臨むというように考えています。6月の政策決定会合後の公表文でも、今後と

も、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタム

を維持するため、 必要な政策の調整を行う、 という一文が入っておりますので、

文字通り、それ以上でも以下でもないと私は考えております。

(問) 物価で確認させて頂きたいのですが、足許の弱さについて、これは足

許の物価が弱いというのは一時的な要因というように、要素が大きいというよ

うに思っておられるのかどうか、というのが1点です。

もう1点ですが、午前の講演の中で物価の先行きリスクとして、差別

化の難しい財・サービスで一段と競争が激化すれば、需給ギャップのプラス幅

が改善してもこれらの物価上昇率は高まらない可能性があるというように

おっしゃっているのですけれども、 これは、 いわゆるインターネット通販とか、

そういう流通形態の変化のことを指しておられるのか、この影響は長期的に物

価を抑制していく可能性があるかどうか、ということも含めてもう少し詳しく

教えて頂ければと思います。

(答)

それでは答えていないのではないかとおっしゃるかもしれませんけ

れども、両方ともイエスです。私は一時的だと思っています。物価が足許少し

ディップしたのは一時的で、これはリバウンドしてくるというようにみていま

す。ただ、そのほかの部分でも弱いとみており、流れとして弱いことについて

は、今おっしゃったようなインターネットのテーマであるとか、それから、業

界の業際的な競合――例えばドラッグストアとスーパーマーケットの競合

――が進展していることであるとか、様々な構造的な問題と言いますか、その

ような根の深い流れというものが、やはり物価に少なからず影響していること

は否めないと思っていますので、冒頭に申しました通り、両方ともイエスであ

るというのが、私の見方です。

(問) 物価の下振れリスクの話で、繰り返しになってしまうかもしれないの

ですが、先程は直近の物価の指標をみるとやや減速しているというところを根

拠におっしゃっていたと思います。ただ今回のリスクの中で、中長期的な予想

物価上昇率の下振れリスクが大きくなっているということと、直近の指標が少

し下振れているというところの隔たりというか、直近の数字をもってこの下振

れリスクが大きいという説明がやや分かりづらく、この下振れリスクが大きい

理由はどういうところにあるとお考えなのでしょうか。

(答) 構造的なものが下に引っ張っているわけです。ただ、物価の指標につ

いては、+0.5%程度まで上がってきている流れをみますと、一貫してずっと

上がってきています。これがそのままスッといくということを、私自身は想定

していなくて、少し振れながらいくという想定で、0.1%とか 0.2%程度の少し

ディップをしてこの傾向の中で流れていくということが、私自身の想定の中に

あったシナリオです。ただ、それを下に押している力は何なのかというと、大

きな流れが下に引っ張っているので、その大きな流れについては、今のような

構造的な要因も想定すべきだろうということで申し上げています。

(問) 低金利環境下で金融機関の金融安定化が不安定になるリスクがあるけ

れども、現時点ではそれは顕在化していないということが今日の午前中にも述

べられていたと思います。逆に言えば、正常化の道筋の中でリスクが大きくな

らないと、何か出口の議論をするだとか、正常化の手を打たないということな

のでしょうか。

(答) 先程申しました通り、修正とか調整をする、しないを含めて、毎回の

政策決定会合で議論していますので、その時の前提として金融情勢も観察、点

検したうえで、判断するということです。その中に金融機関の収益性というの

は当然入ってきますし、その収益性は、累積的な影響のある性格のものである

と認識しています。6月の政策決定会合の時点では、そのような判断を踏まえ

たうえで調整をしなかったということです。ですから、9人の委員全員が7月

末の政策決定会合に向けて、今言ったような項目について、私も含めてそれぞ

れ点検しているということです。

(問) 金融政策関連の話で、東北でも地銀や信用金庫における本業で利益を

稼ぐ力が低下しているかと思いますが、金融政策の影響を受けて、今後どのよ

うなリスクが顕在化というか、状況になってくれば政策の変更を検討するのか、

というところを具体的にお聞きしたいと思います。また、銀行や信用金庫も、

本業で稼ぐのがなかなか難しいので企業の経営支援強化ですとか、手数料収入

の拡充ですとか、新しいビジネスモデルを確立しなければやっていけないとい

うようことを頭取が言われているところもあるかと思うのですが、こうした地

域金融機関の動きや、地域金融機関の今後の在り方についてどう考えていらっ

しゃるか、お聞かせいただければと思います。

(答) 色々な場において、 本業の収益が減っていることは、 テーマとして色々

と言われていますし、私も重要なポイントであると思っています。ただ、現時

点――6月の政策決定会合がカバーする7月末の政策決定会合までの間――

では、本業も含めた金融機関の収益力全体や、全体の金融機関の健全性という

のは、十分に金融仲介機能を実施するだけの強さがあると判断をしています。

その判断につきましては、毎回の政策決定会合で点検をしながら行っていくと

いうことです。具体的にというご質問ですが、例えば収益が全体でいくらに

なったらどうかとか、そういうことは必ずしも言えないことであり、総合的に

判断をしていくべきものです。同じ収益レベルであっても、経済全体を取り巻

く、例えば海外の情勢とか、色々なストレスのかかり方が刻々と変化していき

ますので、静態的にこのようになったらこうですという、例えば1つの指標と

して申し上げるのは必ずしも適切ではないと考えています。

(問) 今回の金融経済懇談会に関して、被災地を視察されたということです

が、具体的にどの辺の場所をみて、どのようなことをみて、どのように感じら

れたのか、感想でもいいのですが、お聞かせいただければと思います。

(答) 主なところとしては、1つは名取市の閖上に行きまして、そこで地元

の地震、津波を経験された方から、お話をお伺いしました。もう1つは、石巻

方面に行きまして、魚市場が震災でどのようになったのかという説明を受け、

今現在どういう形になっているのか、現にお邪魔をして、今立派にできている

ところを拝見し、そこでお話を伺いました。また、石巻の会社を訪問し、その

会社の敷地にどのような形で津波が押し寄せてきたのかということも、写真も

見せていただくと同時にお話を伺いました。感想としては、すごく大変だった

と感じたのですが、やはり復興と言いますか、元に返れているかどうかについ

ては、結構ばらつきがあると思いました。例えば、閖上でお聞きしたのは、家

も建っているけれども、なかなか人が帰ってこないとか、人口が増えていない

ので、まだコンビニもないとか、そのような話も伺いしました。モノとして例

えば家とかマンションとかがあっても、人が入っているかどうかや、人口がど

うかまでみると、必ずしも満足のいく水準にはまだ至っていない、そのような

意味では道半ばであるという地元の皆さんが持っておられる思いを、共有させ

て頂くことができました。

(問) 日本銀行の方々、布野委員も含めて、物価2%目標へのモメンタムが

維持されているというご判断なのですけれども、このモメンタムという言葉を

使い始めたのが、2016 年9月の「総括的な検証」からだったと思いますが、そ

の当時と今とを、物価の基調を示す生鮮食品とエネルギーを除くCPIでみる

と、ほぼ変わっていません。0%台半ばです。それだけをとっても、モメンタ

ムが維持されているというのは、かなり無理があるのではないかと思います。

このモメンタムという言葉を辞書で引いてみても、「勢い」とか「弾み」とか

「推進力」という意味に説明されていまして、どう考えても2年前と同じ0%

台半ばの物価をもって、「勢い」があるというのは日本語の言葉上も殆ど説明

不可能ではないかと思います。それについてどうお考えかということと、「総

括的な検証」の時にいくつかの理由を挙げてらっしゃいました物価が上がらな

い理由について、オイルが下がっただとか、消費増税の後の需要が弱くなった

とか、新興国経済の弱さとか、市場の不安定さとか、いずれも今は当てはまら

ない状況であると思います。物価もオイルもそこそこ高く、2014 年の消費増税

からずいぶん経ちました。そして市場も安定しています。そのようなこと考え

たときに、2年前の「総括的な検証」で上がらないといった理由はもう殆ど今

通用していないわけでして、だとすると、モメンタムが続いているといっても

誰も納得しないと、つまり第二の検証というのか、これだけ政策をやっても物

価が上がらない理由をもう少ししっかり説明すべきではないのかと思うので

すが、いかがでしょうか。

(答) まず、おっしゃるように 2016 年9月に物価が上がらない理由という

ことで、例えばオイルとかリストアップされたものは、その時点において、そ

こに至る状況を説明した性格のものであるので、今の状況で、現に原油はどん

どん下がっている状況ではございませんので、例えば、それとは別の要因が働

いている状況を映じて、 今の価格の動きがあると認識しています。 そのうえで、

モメンタムについてですけれども、モメンタムというのは表現するのがなかな

か難しいのですが、必ずしも物価に顕現化していない部分も含めて、物価を支

える経済をみると、モメンタムは維持されていると私自身はみております。具

体的に言うと、重要な要素である需給ギャップであるとか、そういう経済の流

れを含めてみて、物価の上昇気流が折れているという状況にはないという意味

で、モメンタムは維持できているとみております。

以上

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