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2018年9月7日
日本銀行
片 岡 審 議 委 員 記 者 会 見 要 旨
―― 2018年9月6日(木)
午後2時30分から約30分
於 横 浜 市
(問) 今日の懇談会でどのような議論が交わされたのかという点と、神奈川
経済の印象と今後の課題についてどう認識されているかという点をお伺いし
ます。
(答) 最初のご質問ですが、本日の懇談会では、神奈川県の各界を代表する
方々から、地方経済の現状や課題、また、日本銀行の金融政策運営に関する貴
重なお話や率直なご意見を多数頂きました。大変有益かつ示唆に富む意見交換
ができましたことについて、改めて感謝を申し上げたいと思います。懇談会の
話題を全て網羅することは難しいと思いますが、私なりに、席上で伺った話を
かいつまんで申し上げたいと思います。
まず、当地の景気については、業種や地域といった差はあるものの、
総じてみますと、緩やかに拡大しているというご意見が多かったように思いま
す。家計消費は十分に回復していないものの、海外経済の成長を背景に輸出が
増加しているほか、公共投資も活発に行われているという話を伺いました。ま
た、企業の設備投資意欲が改善しており、都市・臨海部の再開発プロジェクト
も順調に進捗していると伺いました。さらに、神奈川県経済の一段の活性化に
向けて、官民が一体となり、特区も活用しながら新たなイノベーションを生み
出すための様々な具体的な取組みについても伺いました。
一方、足許の課題としてご指摘が多かったのが、人手不足や事業継承
といった話です。こうした中にあって、産学官の連携強化や金融機関による経
営コンサルティングサービスの充実・強化という流れが、県内企業の生産性向
上に向けた取組みを後押ししているという話も伺いました。金融界の方々から
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は、人手不足や企業経営者の高齢化が進展する中で、地域金融機関としてコン
サルティング機能を強化し、人材紹介、事業承継をはじめとする中小零細企業
への支援などで、地域経済の活性化に向けた取組みを一段と強めているという
話も伺い、大変心強く感じたところです。
次に、神奈川県経済の印象、先行きの課題についてのご質問ですが、
まず神奈川県経済の現状については、世界経済の着実な成長を背景に、輸出は
金属加工と自動車関連部品を中心に増加しています。設備投資については、好
調な内外需要や収益環境のもとで、能力増強投資や省力化投資等を上積みする
動きがみられており、県内企業の設備投資額は前年度比2桁の増加となってい
ます。個人消費についても、雇用者数が増加する中で、賃上げと夏季の賞与支
給額が前年を上回るなど、雇用・所得環境が着実に改善するもとで持ち直して
いると考えています。企業業績については3年連続の増収・増益が見込まれて
いるほか、企業経営者の景況感も改善傾向にあるなど、神奈川県経済は、全体
として「緩やかに拡大している」とみています。
神奈川県経済に関する印象については、産業の中心が製造業から非製
造業へと変わってきていますが、研究・開発分野を中心に将来の成長・発展に
向けた有望な分野が少なくなく、関係者のご努力により、具体的な取り組みも
着実に進んでいると感じました。例えば、横浜みなとみらい 21 地区や「京浜
臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」をはじめとした国家戦略特区
では、学術・研究機関の誘致・集積が進みつつあり、官民一体となった先端産
業の育成が着実に進展しています。また、首都圏に位置するという地理的な優
位性に加えて、圏央道をはじめとした交通インフラが整備・拡充されているこ
とから、物流・商業施設を中心に複数の大規模な開発計画が進展しています。
このほか、歴史や自然、都市型施設などバラエティに富んだ観光資源を有して
いるほか、ラグビー・ワールドカップや東京五輪・パラリンピックといった国
際スポーツ・イベントの開催も予定されているなど、明るい話題も多く、非常
にポテンシャルの高い地域だと思います。
現在、グローバル化、人口減少・高齢化、ビックデータに基づいた事
業戦略立案や人口知能の普及など、経済を巡る環境が急速に変化しています。
そうした中にあっても、 159 年前の開港以来培われた環境変化に対する先見性、
柔軟性、適応力といった当地の強みを最大限に生かして、新しい環境に果敢に
挑戦し、さらなる成長・発展に向けて力強く歩まれていくことを期待していま
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す。私どもとしては、横浜支店を中心に、神奈川県経済の持続的な成長に向け
た取組みに対して、少しでも貢献できるように努めて参りたいと考えておりま
す。
(問) 本日の懇談会の中で、7 月末の政策修正に関して、「必要なのは枠組
み強化ではなく、追加緩和だ」と言っていたと思いますが、この背景や理由に
ついて改めて伺いたいと思います。また、先日の政策修正を受けて、特に金融
機関などからは利鞘の拡大にあまり効果がないとして、もう一歩の修正を求め
る意見が早くも出てきていますが、こうした状況をご覧になられて、どのよう
な対応・議論が必要であるとお考えですか。
(答) 最初のご質問につきましては、講演の要旨にもある通り、私自身は物
価のモメンタムが2%に向けて着実に改善しているとは現時点では言い難い
と思っています。7 月の政策決定会合の内容につきまして、確かにフォワード
ガイダンスを導入することは非常に重要だと感じていますが、現状2%の物価
安定に向けて、足もとの物価上昇が非常に緩やかな状況の中で、約束という意
味では物価や予想インフレ率、GDPギャップといった目標に直接的に関係す
る指標に紐づけたフォワードガイダンス、コミットメントが望ましいのではな
いか、という理由で反対しました。
長短金利操作につきましては、今回、国債市場等の状況もあって、一
部弾力化するという話がありましたが、現時点では、私自身は、物価の見通し
が後ずれする中で、金利の弾力化を図るよりも、むしろ金利をより低下させる
追加緩和といった政策対応が必要であるとして反対しました。
2点目の副作用についてですが、色々な意見があると思います。現状
につきましては、金融市場等の動向をみますと、私自身は特段の副作用が起き
ているとはみておりません。
(問) 講演で、長期金利の変動幅を広げたことについて、「金融市場で長期
金利の上昇期待が強まる場合に、『ゼロ%程度』の操作目標が徐々に有名無実
化し得るのではないか、といった懸念がある」とおっしゃっています。また、
フォワードガイダンスについても、「物価見通しや、2%目標に相応の距離が
ある現状からの合理的帰結と言え、これに現状追認以上の効果があるのか判然
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としない」とおっしゃっています。今回の政策については、金融市場でも緩和
の強化なのか、正常化に向けた動きなのか、よく分からないという声が非常に
強いのですけれども、片岡委員ご自身、緩和の強化というよりは、緩和の後退
とご覧になっているのでしょうか。また、こうした有名無実化するような政策
とか、単なる現状追認以上の効果があるのか分からないようなフォワードガイ
ダンスを入れるという提案が、なぜ執行部からなされ、マジョリティがこれに
賛成したのか、反対した片岡委員ご自身は、どうしてこういう政策が決まった
のか、 日銀の真の意図は何なのかということを、 どのようにお考えでしょうか。
(答) 1点目のご質問ですが、私自身は、緩和の強化でも、緩和の後退でも
ないと考えております。これは、ステートメントに「強力な金融緩和継続のた
めの枠組み強化」という文言がありますが、あくまで緩和の枠組みの強化であ
ると認識しています。2点目につきましては、他の政策委員の方の議論の内容
等について、この場で申し上げるのは適当ではないと思います。私自身の考え
につきましては、7 月の政策決定会合のステートメントに、反対事由も含めて
書かれていますので、それ以上のお話はないとご理解頂ければと思います。
(問) 講演の中で、「息長くならないように金融緩和自体を強化すべきだ」
と指摘されていると思います。長期金利に関しては、「上下に変動することが
効果を減殺するのではないか」と指摘されていますが、一方で、ETFに関し
ては、6兆円の買入れ額は上下に変動し得るということに賛成されています。
この違いについてご説明を頂きたいのと、上下に変動し得ることに賛同された
背景として、どういうことを考えているのか、あわせて教えてください。
(答) ETFに関してですが、ETFの年間買入れ増加額の目標値は約6兆
円で変わっていません。ただ、買入れ額は、市場の動向に応じてその目標から
上振れたり下振れたりすることがあり得ることを明確にしたわけです。ETF
の買入れについては、株式市場におけるリスクプレミアムへの働きかけを通じ
て、 経済・物価にプラスの影響を及ぼしていく観点から実施しているものです。
このため、買入れ額の増減は、リスクプレミアムの状況に応じて変動し得ると
考えています。
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(問) 基本的な考え方を教えて頂きたいのですが、片岡委員としては、物価
上昇率2%というのは、何が何でもスピード重視で早く達成すべきだというお
考えでしょうか。つまり、そうすることによって、今後副作用と呼ばれるもの
が多少大きくなるとしても、それはやむを得ないことだという考え方なのか、
その辺りを教えてください。
(答) 先ほど、ご質問の中でも申し上げました通り、金融市場等の現状をみ
ますと、特段、問題が生じているとは考えておりません。また、将来につきま
しては、経済というのは生き物ですので、様々な不確実性がある中で、当然起
こり得るリスクには対処していくわけですが、逆に言うと、どんな状態が起こ
り得るのかは、今の段階で確たることは申し上げられないと思います。こうし
た中で、私個人としては、金融システムへのリスクが金融政策によって起こり
得るのであれば、最大のリスクは、デフレを長期化してしまうことだと思いま
す。デフレが長期化すれば、当然、投資やお金の流れは停滞しますし、お金を
借りたい人がたくさん出てくる状況にはなりません。ですから、こうした状況
をできる限り是正していくためには、早期にデフレからの脱却を図っていくべ
きだと考えています。
(問) 副作用について、リーマンの時もそうだったと思いますが、結局、現
状は大丈夫だったけれど、その後にバブルが破裂したり、リーマンショックが
起こったりしています。日銀は物価の安定とともに金融システムの安定も使命
だと思います。現状ではこれといった副作用は見受けられないということです
が、現状は平気でも、先行きに金融の不均衡や銀行収益の下押しが見えない段
階で蓄積された結果、金融システムが壊れれば、2%の達成時期も後ずれして
しまうと思います。その辺に関してもう一度お伺いしたいと思います。
(答) 先行きについては、ご指摘の通り色々な状況が想定されると思います
ので、データや金融市場の動向等をみながら適切に判断していく必要がありま
す。 これはリーマンショック云々に関わらず、 常に重要であると思っています。
そうした中で、私自身は現状の数字をみながら、副作用については、まだそう
した兆候が具体的に出てきている状態ではないとみています。
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(問) 講演でも追加緩和の具体的な措置について述べられていますが、現状
でも 10 年債はゼロ%近傍であり、追加緩和の余地は乏しいのではないか、あ
るいは実施したところで実体経済に影響は及び難いのではないかという意見
があります。この点、片岡委員自身としては、追加緩和の余地はまだまだ十分
にあるとお考えでしょうか。また、その実体経済への効果についてはどのよう
に考えていらっしゃるのか、波及経路もあわせてお聞かせ下さい。
(答) 決定会合のステートメントにも記載されていますが、私は 10 年以上
の幅広い国債金利の一段の引下げと、予想物価上昇率の下振れに対して追加緩
和を約束するコミットメントを導入するように申し上げています。ご質問では、
金利の話のみをおっしゃっていたと思いますが、私個人としては、政策手段で
ある金利の引き下げと、物価2%を達成するという、現状の物価動向にあわせ
た強いコミットメントの合わせ技が効果をもたらすと考えています。
10 年以上の幅広い国債金利の引下げにつきましては、設備投資や住宅
投資を刺激すると考えています。政府が、例えば、賃上げ等に前向きな企業を
税制面から支援することを決めていますが、金利を低下させることで、こうし
た政府の財政政策を側面から支援する相乗効果も期待されます。それから、超
長期ゾーンにおける海外との金利差が拡大しますので、他の条件が一定であれ
ば、為替を通じたチャネルも期待できると思います。以上申し上げた様々な経
路を通じて、需給ギャップの拡大を経て、物価上昇率を押し上げることになる
と考えています。
コミットメントの強化については、インフレ目標政策への信認を強化
することを通じて、予想インフレ率の上昇に繋がり得ると考えています。予想
インフレ率が上昇しますと、他の事情を一定とすれば、実質金利が低下するこ
とになりますので、現状の金利水準のままだとしても、金融緩和の効果が一段
と強まります。それが現実の物価上昇率を押し上げ、適合的な期待形成を通じ
て、予想インフレ率がさらに押し上げられるといった形で、相乗的に物価上昇
圧力が強まるとみています。
(問) 短期のマイナス金利の深掘りについては、これまで意見等で言及され
ていないほか、ETFについても金額の拡大について意見を出されていないか
と思いますが、これらのコストベネフィットのバランスについてどのようにお
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考えで、なぜ意見として出されていないのか、この辺りの判断をお聞かせ頂け
ますでしょうか。
(答) それらについては、現状賛成しておりますので、賛成している以上の
理由はございません。ステートメントに書いてある事項に基づいて判断してお
り、それについて賛成しているとご理解頂ければと思います。
(問) 講演の中で、来年の消費増税の景気への下押し圧力と、貿易摩擦が及
ぼす世界経済のリスクを挙げられています。来年の日本経済の先行きについて
少し下振れリスクがあるということだと思いますが、そうしたリスクを考える
と、来年以降、景気を支えるための追加緩和の必要性は高まっていくのでしょ
うか。また、そうであれば早めに対応するべきなのか、それとも、リスクがど
れくらい出るかをよく見極めてから動くべきなのか、その点をお伺いします。
(答) 将来の不確実性が増しているという話は、講演の中で申し上げたとお
りです。私自身、そうした状況も踏まえつつ、足もとの物価動向、ないしは先
行きの物価をみておりますので、その判断のもとで、どういう政策が望ましい
か申し上げているとご理解頂ければと思います。
(問) 先ほどから副作用の話が色々出ていて、また同じ話で恐縮ですが、一
般的に副作用と言われるもので、地域金融機関などの収益下押しの影響がある
と思います。現在その数値をみるとそういう状況にはなっていないといったご
発言がありましたが、例えば、どのような状況になれば、地域金融機関への影
響・副作用が出ていると言えるのか、あるいは長期金利なり国債市場がどうな
れば副作用が起きていると言えるのか。なかなか定量的に言えないかもしれま
せんが、何かメルクマールのようなものがありましたら、教えて頂ければと思
います。
(答) ご指摘のお話については、色々なデータ、状態、数字を総合的にみて
いく中で、判断していくものだと思います。ただ、少なくとも、金融仲介機能
が著しく阻害されている状態というのは、当然ながら好ましい状態ではないと
思っています。
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(問) 今朝、北海道で非常に大きな地震があり、現在もほぼ全域で停電して
います。地元の金融機関、地銀などで営業できない店舗があるなど、預金の払
出しなどが今後どうなるか分からないところもあります。日本銀行として、今
後こうした災害にどのような対応をされるのか、流動性の供給で何らかの対応
が必要になるのか、お考えがあれば教えてください。
(答) 今朝、北海道で大きな地震がありまして、その前のタイミングでも、
例えば6月の大阪府の北部地震、それから 7 月には西日本の豪雨、今週に入っ
ても台風 21 号による被害と、自然災害がこのところ続いております。私ども
としましては、被害に遭われた方々に対して、心からお悔やみ、お見舞いを申
し上げたいと思います。今回の北海道の地震については、まだ状況の全容が明
らかになっておりませんが、日本銀行としては、今後、情報収集に努めて、経
済等への影響を注視して参りたいと思っています。また、日本銀行は、いずれ
の地域におきましても、現状全ての支店・事務所が通常通り業務を行っており
ます。日銀ネットも正常に稼働しております。政府および地方自治体とも緊密
に連携のうえで、業務の継続に万全を期していきたいと考えています。
以 上