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2025年11月21日
日本銀行
小枝審議委員記者会見
――2025年11月20日(木)午後2時30分から約30分
於 新潟市
(問)
二点伺います。一点目なんですが、本日の懇談会ではどのような議論が行われたの
かということ。
二点目は、その懇談会を踏まえて、当地の経済の現状と課題についてどのように認
識されましたでしょうか。
(答)
本日の懇談会では、新潟県の行政や経済、金融の各界を代表する方々から、地域経
済の現状や課題に関する貴重なお話や日本銀行の金融政策運営に関するご意見等を
数多く頂きました。大変有意義な意見交換ができたことについて、この場を借りて、
懇談会にご出席頂いた方々や、関係者の皆さまに深く御礼を申し上げます。本日の
懇談会での話題の全てを網羅することはできませんが、席上で聞かれたご意見等を
整理して申し上げます。まず、新潟県の景気についてです。当地経済は、原材料価
格の高騰や人件費の上昇が、企業収益を圧迫しているものの、緩やかながら持ち直
し傾向にあるとの声が聞かれました。急速な少子高齢化、人口減少の中で、人手不
足が深刻化しているとの指摘が多くの参加者から聞かれておりました。こうした中、
賃金の引き上げや省人化設備の導入などを進めているといった話が聞かれました。
また、人手不足が深刻化している農業分野でも、AIやドローンを活用したスマー
ト農業が広がりつつあるとの話も伺いました。金融機関の方々からは、企業が経営
課題として認識している販路拡大、事業継承、M&A、DXなど多岐にわたる項目
に、膝をつき合わせながら一つ一つ解決に向けて向き合っていくことが使命であり、
それが地域経済の活性化、復興につながるとの考えも伺いました。日本銀行の金融
政策運営に関しては、中小企業が安心して企業経営に取り組める金融政策が実施さ
れることを期待しているといった声を頂きました。日本銀行としては、今後も、新
潟支店を通じて、当地の経済・金融情勢に関するきめ細かいモニタリングを続ける
とともに、当地経済の持続的な成長に向けた取り組みや金融システムの安定性の確
保を後押ししていきたいと考えております。
続いて、二つ目のご質問です。新潟県の経済の現状についてみますと、全国と同様
に、原材料高の影響を受けつつも、持ち直しているとみております。企業の生産は、
AI関連の電子部品・デバイス、化学製品の生産が堅調である中、横ばい圏内を維
持しているほか、設備投資は、省人化投資などにより、増加基調にございます。労
働需給も人手不足の中、逼迫した状態が続いています。個人消費は、所得環境の改
善などを背景に、緩やかな回復の動きが続いています。一方で、物価高の中で、消
費者の節約志向の動きもみられますので、留意が必要です。次に課題ですが、新潟
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県経済をやや長い目でみると、少子高齢化や人口の減少に伴う人手不足のほか、猛
暑や渇水、激しい豪雨や豪雪といった課題にも直面しています。こうした状況に対
応するため、企業は、省力化投資などの対応を進められているほか、米の生産では、
農地集約による大規模化やドローンやAIを活用したスマート農業など、環境の変
化への対応を積極的に推進されております。また、豊かな自然や魅力的な文化、
様々な農水産物、高い技術力を持った産業の集積といった強みを上手く活かしてい
くことで、今後の新潟経済の持続的な発展は十分に期待できると考えています。本
日の懇談でも、様々な取り組みもご紹介頂き、非常に心強く感じられました。今後、
当地関係者の幅広い取り組みが功を奏し、少子高齢化や人口減少などの課題に対応
しながら、新潟県経済が一層の発展を遂げることを期待したいと思います。
(問)
講演の内容について二問質問させてください。一問目は、講演の中でやはり、日本
の実質金利がまだきわめて低いために、これを均衡状態に戻していく、金利の正常
化を進めることが必要であるというふうにおっしゃってますが、金利の正常化って
いうのは、今、経済がわりとしっかりしていて、物価もやや強めということであれ
ば速やかに進めていくべきものなのか。また、政策金利を考える上で、中立金利も
意識しなければならないということですが、この中立金利について、委員はどれく
らいの水準とみてらっしゃるのか、まだちょっと先なのか、近づいているのか、そ
の辺りを伺いたいのが一点目です。
二点目は、円安が足元進行していて、これがやはり食品価格や輸入コストの上昇に
またつながる可能性が高いんですが、この円安が経済・物価、また日銀の金融政策
運営にどういう影響を及ぼすのか、こちらについてもお願いします。
(答)
まず、一点目の金利の正常化、実質金利がきわめて低い中、アウトプットギャップ
としては、大きくプラスでもマイナスでもない状態で政策金利を引き上げていくと
いうことは、やはり金利の正常化という面があると思いますが、そういったことを
速やかに進めていくべきものなのかという最初のご質問ですが、やはりそこは基調
的なインフレも、いろいろな指標があって、総じてみれば推計の幅だとか、計測の
誤差もあるんですけれども、総じてみれば 2%ぐらいになっていると思いますが、
それが定着しているか、アンカー度合いも引き続きみていかなければいけないと思
っておりますので、速やかに進めていくべきものなのかといったことに関しては、
やはり足元の経済・物価状況について確認しながら判断していくということになる
と思います。足元は、やはり海外経済の不確実性が継続する中、国内の企業の賃金
の設定行動に関して、その動向がどういう状況に今後なっていくかという今後の動
向についてをみながら判断していく、様々なデータや情報をみながら判断していく
べきものなのかなという、物価を取り巻く状況をみながら判断していくものだと考
えております。中立金利については、中立金利は自然利子率とインフレ率を加えた
ものですので、インフレ率についてはどのインフレ率を加えるのかという議論があ
るものの、2%のインフレ目標ということであれば、やはりその推計の幅は自然利子
率の方から来ていると私は考えています。自然利子率は、多角的レビューでもお示
しした通り、マイナス 1%から 0.5%の幅でお示ししておりましたけれども、その幅
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は、足元でも大きく変更はないかなと私はみております。いずれにせよ、足元の政
策金利は、中立金利のその下限をみても、政策金利は現在低い位置にあるのかなと
いうふうにはみております。
二つ目の質問の円安から物価へのところですけれども、円安が物価にどういうふう
に影響があるかと考えたときに、やはり輸入物価がどうなっているかっていう視点
があると思います。コロナ後、21 年以降(注)、円安とエネルギー高で輸入物価が大
幅に上昇しましたけれども、足元輸入物価の前年比でみると、この 1 年ほどマイナ
スで、足元も若干マイナスな状況でございます。この辺は引き続き、為替変動が物
価にどのような影響を与えているかというところは丁寧にみていきたいと考えてお
ります。
(問)
二点お伺いします。今日の講演の中で、実質金利がきわめて低い水準にあることを
踏まえると、金利の正常化を進めることが、将来に意図せざる歪みをもたらさない
ためにも必要であるというご発言がありましたけど、この意図せざる歪みは何を指
しているのか。もう少し補足説明をお願いできればと思います。
もう一点、市場の動きのところで、長期金利の方が、今日 1.8%を超えて、かなり
上昇しているという状況の中で、この動きをどうみていらっしゃるか、日銀として
何かしら考えなければいけないことがあるのかどうか。
(答)
まず最初の、実質金利がきわめて低い中、金利の正常化は将来の意図しない経済の
歪みを抑制するためにも、適度なペースで必要というところでしたけれども、歪み
とは何かというご質問で、実質金利のような、一般論として、マクロの実質変数が
その均衡から大きく離れている状態が続きますと、やはり資源配分に影響がある可
能性はあると思います。将来の時点で、その資源配分に偏りが出てきたですとか、
あるいは偏ったゆえ、将来からみて選択肢が狭まってしまったということになりま
すと、やはり持続的な経済成長というところと関係もあると思いますので、やはり
そういった面では金利の正常化というのは適切なペースで進めていくことが必要で
あると私は考えております。
二番目の市場の動き、特に長期金利のお話だったと思いますけれども、日々の長期
金利の水準ですとか、動きについての具体的なコメントは差し控えたいとは思って
おります。やはり、長期金利は金融市場で形成されることが基本で、ファンダメン
タルズに沿って変動することは適切だとは思っております。ただし、長期金利が急
激に上昇するといった例外的な状況があれば、市場における安定的な金利形成を促
すという観点から、機動的に国債買入れの増額やオペを実施するという、こういっ
た考え方は従来から変わっておりません。
(問)
今後の賃上げの見極めの指摘が、講演の中でもあったと思いますが、主要企業によ
る中間決算の上方修正もあったりしますが、来年の賃上げ、現時点でどうみている
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のかを、多面的な賃金動向が重要とのことなんですが、今年の最低賃金の引き上げ
幅ですとか、冬のボーナスの民間調査なども出てますが、それぞれどうみているか
っていう賃金のことが一点。
もう一点が、当地の、新潟県のですね、経済・社会を考えるときに、東京電力柏崎
刈羽原発があることも大きいと思うのですが、今回、当地の視察や懇談で、柏崎刈
羽原発の再稼働について何か考える機会があったりしましたでしょうか。
(答)
まず、最後の、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働についての動きですけれども、大変
注目されていることだとは承知しておりますが、本件について私からお答えする立
場ではございませんので、控えさせて頂きたいと思います。
賃上げの見極めということでしたけれども、一点目のご質問。やはり、春の賃金改
定に関する動向の情報は、今後、方向性として分かってくるところもございますし、
本行では日々のヒアリングなどを通じても、情報が蓄積されているところですので、
大変大事な情報の一つだとは思っております。同時に、賃金動向に多面性があると、
私、挨拶で申し上げて、冬のボーナスですとか、あるいは最低賃金ですとか。冬の
ボーナスに関しては、やはりその企業収益、全体としてみれば、企業収益の水準は
高い状況にあると思いますけれども、そういったことを反映して、個々の企業の冬
のボーナスがどうなっていくかというのは、これから分かってくる面もございます
し、最低賃金に関しては、大幅な上昇が、引き上げが今年ございましたけれども、
それがマクロでみた実質賃金にどのぐらい影響があるのかというところも、丁寧に
みていく必要があると考えております。
(問)
二点お願いしたいんですけども、基調的な物価が既に 2%になっているのではない
かという中で緩和的な金融環境を続けることによってですね、先行き基調が 2%か
ら上抜けてしまうリスク、いわゆるビハインド・ザ・カーブになってしまうリスク
というものが従来よりも高まってるんではないかという認識を小枝委員が持たれて
いるのかどうかというのが一点目で。
二点目なんですが、政府の大規模な経済対策が想定されてる中でですね、市場では
先ほど言った円安とか長期金利上昇が顕著になってるわけですが、こうした政府の
財政政策運営とか円安というものは消費者物価の上振れにつながるリスクがあると
思うんですけれども。対策とかですね、円安を踏まえた物価上振れリスクについて、
委員は今どのようにお考えか、この二点お願い致します。
(答)
一点目ですけれども、基調的なインフレについては、いろいろな指標を総合的にみ
て、計測誤差なども考えると、2%ぐらいになってきているとは思いますが、やはり
同時に、その定着度をアンカー度合いもみていく必要があると考えております。こ
うしたことから、基調的なインフレは、どの指標をみても緩やかに 2%に向けて上
昇してきているという傾向の中、ビハインド・ザ・カーブのリスクが高まっている
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かというご質問でございましたけれども、ビハインド・ザ・カーブって言ったとき
に、やはりそこは中央銀行はインフレをコントロールできているのかという問いと
関係していると思いますが、そこではやはり基調的なインフレがどうなっているか
ということで、それが緩やかに 2%に上昇してきていて、それが定着しているかを、
確認していくという段階だと思いますので、特に従来からリスクが大きく変更があ
ったということは、私としては 10 月の展望レポートなどでお示しした中心的な見通
しから大きく見解が変わっているわけではありません。
政府の大規模な財政、経済政策についての効果についてでしたけれども、現時点で
私、詳細について承知しているわけではないので、なかなか具体的なことは、申し
上げることはできないんですが、一般論として、財政の変数ってGDPのコンポー
ネントに入ってくるものですので、やはりわれわれの見通しには、組み込んでいく
必要があると考えております。なので、詳細が出てきたところでしっかりそこは見
通しに組み込んでいくという、分析に入れていくということになると思います。
(問)
講演でお話しされた基調的な物価上昇率が 2%ぐらいになってるというご発言につ
いてお伺いしたいと思います。実際に日銀さんが掲げる物価安定目標を達成するの
がいつ頃になりそうかっていうのと、どういった条件が整えば、達成したと言える
のか、小枝委員のお考えをお聞かせください。
(答)
やはり基調的なインフレ率、指標がたくさんある中で、総合的にみれば 2%ぐらい
になってきているっていう現状だと思いますけれども、それがどのぐらい定着して
きているのか、ですとか、あるいはアンカー度合いっていうのをみていくというこ
とだと思います。やはり物価を取り巻くいろいろな要因について、総合的にみてい
く必要があると思っていて、そこでは経済がどのぐらい底堅いのかですとか、需給
ギャップがどれぐらい引き締まっていくのかといったことも、やはりその基調的イ
ンフレのアンカー度合いに影響してくるものだと思いますので、そういったことは
本当に総合的な、様々な角度からみて判断していくのかなと考えております。
(問)
二点伺います。ちょっと金懇の話題と若干逸れるかもしれないんですけれども、全
国で金融機関統合が、普及しているんですけれども、当地だと第四北越フィナンシ
ャルグループと群馬銀行が経営統合に向けて議論を始めてるんですけれども、その
ことに関するご見解をお持ちであれば伺いたいなということが一点。それに付随し
てなんですけれども、規模の経済が効くような経済状況になりつつあるのかなと思
ってるんですけれども、金融機関にとって、今後の金融機関の方向性のようなもの
を何か示唆されるものがあれば教えて頂きたいです。
(答)
金融機関の経営統合のご質問だったと思います。一般論として、企業の数ですとか、
人口減少など構造要因によって、地域経済を取り巻く環境が厳しさを増していると
思います。そうしたもとで地域金融機関が将来にわたって地域を支えられるように
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十分な資本と収益力を確保するとともに、地域が抱える課題を解決する付加価値の
高い金融サービスを提供していることは重要だと考えております。こうした取り組
みのうえで、例えば経営統合ですとかそういったことは選択肢の一つではあると思
いますし、ただ、どう取り組んでいくかは、それぞれが地域経済の実情を踏まえた
各金融機関様の経営判断であるとは思います。
(問)
ご講演の中で金融政策の運営にあたって、市場や金融システムにおける動向を踏ま
えつつ判断すべきということですが、金融システムについては、今後意識すべき不
均衡等の現象が既にみえているのか、どういった点を注目されているのかっていう
点とですね。
基調的物価上昇率は非常に重要な概念なんですが、コミュニケーション上、分かり
づらいっていう声が、おそらくボードの議論の中からも主な意見等からみえるんで
すけれども、今後のコミュニケーション上、この基調インフレあるいは中立金利と
いった概念を、もう少し分かりやすく説明できないのか、その辺りについて委員ご
自身はどのようにお考えでしょうか。
(答)
まず、金融システムについてのご質問ですけれども、10 月のFSRでもお示しした
通り、わが国金融システムはそういった安定性を有していると私も判断しておりま
す。個々のミクロの情報についても、もちろん丁寧にみていきたいとは思っており
ますが、やはり総じてみて、安定性を有しているというふうに判断できると思って
おります。
基調的なインフレをどう伝えていくかっていう話だったと思いますが、私はいろい
ろ様々な指標をみてその詳細をみながら総合的に判断していくということで、日々
やらさせて頂いてはいるんですけれども、でもハードデータに基づいた、例えば計
算の仕方が分かりやすいわれわれのコアインフレっていいますか、CPI除く生鮮
食品とかの、その見通しについても今回 10 月の展望レポートでも少し記述を加えて
いるところでございますし、いろいろな指標がある中総じてみて、今どのぐらいか
というふうな判断というのは、定着度も含めて丁寧に行っていく必要があるのかな
と考えております。
(問)
二点ほどお伺いしたんですけれども、先ほど円安が物価や金融政策に与える影響に
ついてはお答え頂いたと思うんですけれども、そもそも、足元の円安の背景やその
持続性についてどうみていらっしゃるかという点がまず一点です。
二点目について基調的物価についてはその定着度合いをよくみる必要があるとおっ
しゃっていたと思うんですけれども、その定着度合いというのはどういった観点や
定義でみていらっしゃるかというところをお伺いしたいです。
(答)
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最初の円安から物価の、為替水準の話ですけれども、やはり為替相場の水準や評価
について具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。経済・金融のファ
ンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要だと考えております。為替の
変動が物価にどのように影響しているかというのは、引き続き丁寧にみていきたい
と、しっかりとみてまいりたいと考えているところでございます。
基調的インフレの定着度合いは具体的にどうみればいいのかということですけれど
も、やはりそこは需給がどのぐらい引き締まっているか、経済がどのぐらい底堅い
のか、賃金の動向がどのぐらい安定的に、賃上げの状態がみられるものかですとか、
様々な物価を取り巻く要因をみて総合的に判断していくことだとは思います。それ
に加えて、モデルからは長期のインフレの予測値はどういうところに収束していく
のかですとか、あるいはフィリップス・カーブの切片の状況などもあるとは思いま
すが、基本的には物価を取り巻く様々な要因をみて、総合的にその定着度について
は判断していくのが適切ではないかと私は考えております。
(注)会見では「21 年後」と発言しましたが、正しくは「21 年以降」です。
以 上