1
2026年6月26日
日本銀行
田村審議委員記者会見
――2026年6月25日(木)午後2時00分から約40分
於 神戸市
(冒頭発言)
今日はお忙しい中ありがとうございます。冒頭 、私の方から、本日午前中の金融経
済懇談会の模様について、いくつかポイントを整理してご紹介したいと思います。
まず、兵庫県の経済情勢については、製造業を中心に強固な産業基盤を有するもと
で、神戸空港の国際化、あるいは都心部やウォーターフロントの再開発など、そし
て将来に向けた前向きな取り組みを多くの方が語られたのが印象的でした。スター
トアップ支援やオープンイノベーションについて、複数の方が言及しておられまし
た。また、インバウンド需要の増加によって、県内観光産業の回復が続いていると
いったお話や、六甲山を活用した資源循環 型社会の実現や里山の再生への取り組み
など、環境と経済を両立させる地域独自の取り組みについてお話を頂きました。一
方で、燃料価格や原材料コストの上昇、人手不足などが企業の経営環境を厳しいも
のにしているという課題も指摘されました。特に中小企業では、大企業と比べて賃
上げや価格転嫁が進みにくい現状について懸念が示されました。同時に、企業の人
材育成やDX、イノベーションを通じて生産性を向上し、こうした構造的な問題を
克服しようという積極的な取り組みを紹介 頂き、とても心強く感じました。中東情
勢については、原材料価格上昇や調 達難といった影響がみられ、緊張緩和へ向かう
見通しが窺われるものの、依然として正常化への道のりには時間がかかるのでは、
との声が聞かれました。これに対して金融機関や行政からは、相談窓口の設置や資
金繰り支援を積極的に行っていくとの力強い声が聞かれました。日本銀行に対して
は、物価安定を図るとともに、これらの地域経済の現状と課題に寄り添った政策を
お願いしたいとのご要望を頂きました。日本銀行としましては、本日頂きました貴
重なご意見をしっかりと踏まえ、物価の安定を図ることを通じて持続的な経済成長
の実現に資するとともに、金融システムの安定確保に努めることで、地域経済の発
展を後押ししてまいりたいと考えております。私からは以上です。
(問)
地元の経済記者クラブを代表して質問させて頂きます。二点質問させて頂きます。
足元の兵庫県経済についてどのような印象を持たれているでしょうかというのが一
点。
そしてもう一点、中東情勢の影響について、懇談会で聞かれた意見も踏まえて、兵
庫県経済にどのような影響を与えているとみているでしょうか。以上二点、よろし
くお願いします。
(答)
はい、ありがとうございます。一つ目の足元の兵庫県経済に対する印象ですが、私
2
は 40 年ほど前、社会人になった当初、兵庫県の芦屋市と尼崎市に、合わせて 3 年ほ
ど住んだことがあり、当時、週末は神戸三宮辺りにもよく出かけていました。非常
に懐かしく覚えておりますが、当時も今も、私にとって、兵庫県の印象は非常にポ
ジティブなものです。現在の兵庫県経済に ついても、次の時代に向けた種まきが
着々と進んでいるという前向きな印象を持っております。阪神工業地帯や播磨臨海
工業地域に代表される全国屈指の生産拠点を有する中、最近は生成 AIの普及やデ
ータセンター需要の拡大を背景に、先端半導体や発電・電源・送配電設備のサプラ
イチェーンに連なる企業の生産活動や設備投資が活発化しています。また、神戸医
療産業都市を中心に、創薬や再生医療、それから昨日視察させて頂いたんですが、
医療用ロボット、こういった先端分野でイノベーションが生まれているほか、これ
も昨日視察させて頂きましたが、官民 が連携して水素サプライチェーンの構築を進
めるなど、次世代産業の育成に取り組んでおられます。更に、昨年 4 月には神戸空
港に国際チャーター便が就航したほか、三宮やウォーターフロントエリアで再開発
が進んでおり、都市としての魅力を更に高めていることを、今回の訪問で実感した
ところです。今後の当地経済の発展について、引き続き楽しみに注視をしていきた
いと考えています。
次に二つ目のご質問、中東情勢の影響ですが、懇談会の場では、一部の製造業や建
設業では、原材料調達が困難となり、稼働率の低下や工期の延期といった問題のほ
か、エネルギー価格や石油由来製品の価格上昇の影響を懸念しているといった声が
聞かれました。もっとも、現状に関して言えば、全国同様、兵庫県においても、調
達が難しい原材料の代替調達、あるいは代替品への切り替え等といった皆さんの企
業努力が奏功し、生産・輸出面で、全体として言えば、大きな変調はみられていな
いと評価しています。また、家計への影響については、現時点では、消費者物価へ
の波及がまだ限定的であることもあって、実際の消費行動への影響はみられていな
い状況だと思います。現在、中東紛争の解決に向けた動きが進展しており、一日も
早く最終的な合意が実現することを期待しています。もっとも、今後の物流の回復
ペースを含めて、依然として不透明な状況が続いており、先ほど申し上げた通り、
本日の出席者の方々からも、正常化への道のりには時間がかかるのではとの声も聞
かれた次第です。引き続き、企業の生産・輸出・収益面への影響や価格転嫁の動向、
個人消費への影響について、丁寧に確認してまいる必要があると考えております。
(問)
質問二問ございます。一点目が、午前中の挨拶で、利上げについて数か月に一度と
いうイメージを持っているというご発言ありましたけれども、ここについて改めて
そのお考え、日本経済の足元への影響も含めてどういう意図を持ってご発言された
のかを教えてください。
二点目が足元の円安水準についてお伺いします。 6 月の決定会合で利上げを決定し
ましたが、足元ではドル円相場は 40 年ぶりの水準にまで迫っていますが、この日本
経済全体への影響とですね、日本経済の構造的な問題だという指摘もありますけれ
ども、現状どうみていらっしゃっているのか教えてください。お願いします。
(答)
3
はい、ありがとうございます。まず一つ目のご質問、今後の利上げのペースについ
ての考え方を改めて、ということに回答を申し上げます。現時点での私自身の考え
を申し上げれば、既に 2%の物価安定目標は実現されたと考えており、物価の基調
が 2%を超えて上昇していくのを避け るためには、政策金利を中立金利の近辺まで
引き上げる必要があると考えています。足元で物価の上振れリスクが高まっている
ことを考えればなおさらです。物価の基調が 2%を超えて上昇していった場合、そ
れを押し下げるためには、政策金利を引き締め領域まで急激かつ大幅に引き上げ、
それを長期間保持することが必要となってしまいます。そういった事態を避けるた
め、ある程度のペースで中立金利に近づけていく必要があると考えています。中立
金利の水準を探りながら政策金利を上げていく必要があることを考えれば、金利を
上げて、それを受けて経済・物価や金融環境がどう変わっていくのかという状況を
確認しながら引き上げていくということですので、結果、数か月に一度ぐらいのペ
ースで 0.25%ずつ、2%程度の中立水準に向けて利上げを進めていくということを
念頭に置いている次第です。
二つ目の円安についてのご質問ですが、まず 、為替相場の水準や評価、動きの方向
性について具体的にコメントすることは差し控えます。為替相場は、経済 ・金融の
ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要であると考えております。
そのうえで一般論として申し上げますと、為替相場は各国の中央 銀行の政策スタン
スに影響を受ける面もありますけれども、それだけではなく、国際金融資本市場の
動向、輸出入に伴う為替需給など様々な要因によって変動するものと認識をしてお
ります。また、為替相場自体が、わが国の経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の
一つです。この点、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで 、過去と比べる
と、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があります。また、そう
した動きが予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性が
あることにも留意する必要があります。こういった点を踏 まえつつ、金融・為替市
場の動向やその物価への影響については今後ともしっかりみてまいりたいと考えて
おります。
(問)
最初の質問にもちょっと絡むんですけれども、利上げのペースで数か月に 1 回のペ
ースで利上げが必要ということなんですが、今ご説明がありましたように、物価目
標が実現しているとのご認識のもとでは、この数か月に一度というのはですね、四
半期とか、もしくは場合によってはですね、連続利上げというものも視野に入れて
るんじゃないかと思うんですけども、この数か月に 1 回のもうちょっと具体的なイ
メージを教えてくださいというのが一点目です。
二点目なんですけど、国債買入れについてお伺いしたいんですが、同じ午前の講演
で、経済環境が大きく変化した現在、金融政策として日本銀行が国債を買い入れる
必要はないと、そういうふうに発言されまして、今回のようにですね、利上げをす
る一方で、国債の減額を停止するという対応というのはちょっとちぐはぐというか
ですね、むしろ政策の意図を誤解される懸念というのがないのか、これについて田
村委員のご見解をお願いします。
4
(答)
はい、ご質問ありがとうございます。利上げのペースについて、四半期に一度とか、
あるいは連続利上げがあるのかということですけれども、基本的に今時点の私の考
えは、先ほど申し上げた通り、政策金利を上げて、経済・物価や金融環境のその反
応をみながら引き上げていくということで、3か月なのか4か月なのかというところ
までは、その経済・物価の状況、金融環境の状況の確認次第だと考えております。
連続利上げがないのかというお話もございましたけれども、現時点では先ほどのよ
うに考えておりますけれども、今後、物価上振れリスクが顕在化する確度が高まっ
た場合には、利上げの頻度を引き上げていく可能性というのは当然あり得ると、そ
の辺りは状況を踏まえて物価を安定させるにはどうしたらいいのかという観点で、
きちんと考えていきたいと考えております。
それからもう一つのご質問が、利上げの一方で、買入れ減額 [を停止]するのはちぐ
はぐじゃないかといったようなご質問だったかと思います。まず申し上げておきた
いのは、今、日銀が金融政策として操作しているのは短期金利だけであって、国債
買入れ額をどうするのかというのを金融政策とは考えておりません。過去の金融政
策を正常化するに当たり、今日の原稿でも書いておりますけれども、私としてはも
う可能な限り早いペースで正常化していくべきではあるけれども、国債市場の安定
への一定の配慮も必要ということで、私自身はこれまでの減額 ぺースを続けたらい
いと考えていたわけですけれども、多くの委員は、国債市場の 安定性を考えると、
もう減額を止めた方がいいんじゃないかということで、あのような決定に至ったも
のです。従って、利上げと国債買入れの減額 [の停止]がちぐはぐというご意見です
けれども、それはそうではなくて、もう日銀が金融政策として行っているのは、短
期金利の操作だけとご理解頂ければと思います。
(問)
二点あります。市場では早ければ 10 月にも再利上げという観測が浮上しておりまし
て、今伺ったお話を踏まえたうえで、次の利上げのタイミングを図るうえで特に重
視している指標・データ等があれば教えてください。
二点目は、金融政策と財政政策のポリシーミックスについてです。委員がご指摘の
ように物価の上振れリスクが高まっているとすれば、電気代・ガソリン代の補助等、
物価高対策で歳出を増やす財政政策というのは、物価の上振れリスクを更に高める
可能性もあります。インフレ対応の観点から 、金融政策と財政政策のあるべき組み
合わせについてお考えをお願いします。
(答)
はい、ご質問ありがとうございます。まず一つ目のこれからどのようなデータを注
視していくのかという点については、私が思って いるのは三つ。三つというか、あ
らゆるデータ・情報を確認してまいりますけれども、特に今思っているのは三つあ
ります。一つ目は、消費者物価。企業物価がもう既にかなり上がっておりますけれ
ども、それが消費者物価にどのように波及していくのか、その大きさや広がりとい
うのを確認していきたい。また、サービス価格の動向。われわれ日銀が目指してい
るのは、賃金と物価が相互に参照し ながら上昇していくメカニズムを定着させるこ
5
とですけれども、その状況を、サービス価格がどうなっていくのかというので確認
したいと思っております。二つ目が、企業・家計の予想インフレ率がどうなってい
くのかということです。三つ目は、金融緩和の状況について判断するために、私が
何よりも重視しているのは、企業がどのような声を出しているのか。加えて、短観
などで、アンケート調査で、その時点の金利に対して、金利が緩和的なのか 、引き
締め的なのか、中立的なのか、その辺りを見極めていきたいと考えております。
次に二つ目のご質問、金融政策と財政政策のポリシーミックスについてですが、一
般論として語ることはできなくて 、そのときそのときの情勢にもよると考えており
ます。私、日銀審議委員という立場ですので、財政政策に ついてこうあるべしとい
ったことをこの場で言うのは適切ではないと思っておりますので控えさせて頂きま
すが、いずれにしても、財政政策が、経済・物価に与える影響も含めて、物価の安
定という観点から、日本銀行としての使命を果たすべく、金融政策を検討していき
たいと考えております。
(問)
今日の講演の中で中立金利の水準について 2%程度という数字が出てきたと思うん
ですけども、これまで最低でも少なくとも 1%というような言い回しだったかと思
うんですが、今回 2%という数字を出された背景ですとか、あとその辺りちょっと
この中立金利の見方が田村さんの中で変わってこられたりしているのか 、その辺り
お伺いできますでしょうか。
(答)
はい。ご質問ありがとうございます。中立金利の水準についてですが、そもそも中
立金利の推計値は手法によって大きなばらつきがあるほか、データ制約もあり、精
緻な推計は困難な状況です。特に、時系列モデルと呼ばれる推計方法は、長らくデ
フレ・ディスインフレが続いてきたわが国では、下方バイアスを有している可能性
が高く、先ほどおっしゃられた推計値の下限は、このモデルによるものである点に
注意が必要であると考えています。いずれにしましても、中立金利の水準を特定す
ることは難しく、かなりの幅を持ってみる必要がありますので、実際には先 ほど来
申し上げています通り、政策金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を みて中立金
利の水準を探っていくことになります。その際には、実質金利に加え、企業等の資
金需要、CP・社債市場や銀行貸出の状況などから金融環境を確認していくことに
なりますが、私が特に重視しているのは企業の声です。金利を含めた金融環境が企
業活動にどれだけブレーキをかけているのか、あるいはかけそうなのか、こういっ
た点を注意深くみていくことが重要だと考えております。そのうえで私が 2%程度
の中立金利を念頭に置いているのは、私自身が金融実務家として企業 や家計と接し
てきた感覚や、このところの企業や金融機関の声などを踏まえたものです。 更に付
言しますと、景気を加速も引き締めもしない水準である自然利子率というのがマイ
ナスということは、すなわち中立金利が物価上昇率よりも低いということ、これ は
平たく考えますと、預金者は物価上昇に常に負けてしまう 、あるいは企業経営者は
物価上昇ほどのリターンが得られない案件でも投資を行うという、そういう状態が
定常状態であるということは、ビジネス現場の直感には反するように私としては感
じているところです。
6
(問)
二点お伺いします。一点目はですね、まさに利上げに関する今質疑が続いてますけ
れども、今日の懇談会でですね、出席者の方から利上げに対してどういったご意見
だったりお声というのがあったのかというところを教えて 頂きたいのが一点目です。
二点目としましてはですね、40 年ほど前に兵庫県芦屋・尼崎に 3 年お住まいなられ
た頃、銀行に入られた頃でしょうかね、兵庫を実際肌でご存 じの田村さんからご覧
になってですね、今日の懇談会のやり取りであるとか、昨日視察されたというとこ
ろをご覧になって、兵庫県経済の可能性であったり課題といったところですね、お
感じになったことがあれば改めてお願い致します。
(答)
はい。ありがとうございます。本日の懇談会で、例えばこの利上げについて、この
利上げが企業活動の抑制につながっているといったようなご意見はありませんでし
た。一方で、先ほどご説明した通り、中小企業を中心に、資材価格の上昇あるいは
人件費の上昇で苦しい状況なんかも踏まえて金融政策を考えてほしいとい うご要望
はございましたし、当然私どももそういったことも含めて金融政策は考えていきた
いと思っております。特に金利を上げることによって物価を抑制するというのが金
融政策ですので、その辺りのバランスなんかには十分注意しながら進めていきたい
と考えております。
二つ目に、元兵庫県民としての兵庫県の課題、あるいは今後についてということで
すけれども、兵庫県は、海・山・温泉といった豊かな自然を保ちつつ、伝統的な地
場産業で培われた技術力、あるいはこの重厚長大型産業の発展による企業集積、整
備された高速交通網を背景に、今でも 全国トップクラスの工場立地件数を誇り、も
のづくり県としてわが国経済を牽引してきた地域です。一方で、全国同様、当地に
おいても人口が減少に転じており、特に若年層の人口流出が目立つなど、人口動態
に起因する課題に直面しておられます。本日の懇談会でも深刻化している人手不足
に関する話がありましたし、一方でそういう構造問題の中でどうやって企業を経営
していくのか、そういった観点も重要だというお話もございました。こうした中で
兵庫県では、若者・Z世代応援パッケージ施策などいろいろ取り組んでおられます
し、行政と民間企業が一体となった水素サプライチェーン構築の動きなど脱炭素に
向けた取り組みが加速されており、関連産業への波及が期待されるほか、それから
世界的な大手IT企業による人工知能を中心とした開発支援拠点の開設を受けて、
当地企業のDX推進やIT関連企業の集積も期待されていると聞いております。こ
うした取り組みが結実して、当地の経済が一層発展していくことを 、先ほども申し
上げましたが楽しみに期待していきたいと考えております。
(問)
一点目がちょっと先ほども質問が出てたんですけど、今後の利上げペースについて
です。仮に 3 か月に 1 回、0.25%ずつ政策金利を上げていったとすると、来年 6 月
会合には政策金利が2%に到達すると思います。田村さんの任期は来年7月になって
ると思うんですけれども、審議委員の責任としてビハインド・ザ・カーブに陥るリ
7
スクをなるべく減らしておきたい、任期中に減らしておきたい、だから数か月に 1
回なんだみたいなそういう思いはありますでしょうかっていうのが一点目です。
二点目が、ご挨拶の図表 17 で日銀法の条文を示されました。その中で、改めて物価
の番人としての役割を強調されたと思うんですけれども、昨日公表された 6 月会合
の主な意見で、内閣府から利上げへの説明責任とか、過度な景気変動が生じた場合
に対応してくれっていうような意見が出てたと思うんですけれども、示された日銀
法の第 3 条には日銀の自主性の尊重というものが謳われています。改めてこの条文
全体を示された理由とですね、独立性を維持しつつ、物価の安定に努めるっていう
その重要性を改めて感じてらっしゃるということでしょうか。
(答)
はい、ご質問ありがとうございます。まず一つ目の私の任期中に中立金利まで持っ
ていきたいと考えているかどうかという点につきましては、私は別に自分の任期中
にというようなことは特段意識はしておりません。その時々の物価情勢に合わせて
金利を調整していくと。更に言うと、日銀が金利を上げたいというわけではなくて、
日銀が行いたいのは物価を安定させたいということです。そのために利上げが必要
なときには利上げをするし、ということですので、なおのこと私の任期中にという
ようなことは考えておりません。ビハインド・ザ・カーブについては、ビハイン
ド・ザ・カーブという言葉の独り歩きがありますけれども、この定義にもよると考
えています。例えば、インフレ率が大きく上振れて急速な利上げが必要になるよう
な事態に陥ることをビハインド・ザ・カーブと呼ぶとすれば、現状はそうした状況
にはないと考えています。いずれにしても 、ビハインド・ザ・カーブにならないよ
うに、先ほど申し上げたようなペースを念頭に置きながら、でも実際はその時々で
の経済・物価・金融緩和の状況を踏まえながら、政策金利の引き上げを行っていく
必要があると考えております。
二つ目は、図表 17 で日銀法の条文を示したということですけれども、その意図・趣
旨というのが、そんなにこうですというものではありませんけれども、いろいろ物
事を考える中で、例えば中東の紛争が起きたときに、物価の上振れと経済の下振れ、
というようなことを考えるときに、やはり日銀としては、物価の番人として物価を
安定させることによって、経済の持続的 ・安定的な成長につなげるという、いわば
成長の土台を作る役割が日銀には課されていると思いますの で、改めて日銀法の条
文を掲載することによって、その辺りを自分自身、肝に銘じたいと考えているとこ
ろです。
(問)
一問、利上げの話で、物価目標に達成したときに中立金利の水準にいるというとこ
ろが理想、というようなお話もあると思いますけれども、実際そこからまだ 1%ほ
ど乖離がある中で、この数か月に一度のペースでいいのか、その上げ幅も 0.25 でい
いのか、今こそ躊躇なくっていうタイミングではないのかっていうところをご説明
頂けますでしょうか。
(答)
8
はい。ご質問ありがとうございます。私としては先ほど申し上げたような理由から、
現時点では数か月に一度、0.25%というぺースを念頭に置いておりますけれども、
今後、物価上振れリスクが顕在化する確度が高まってきたような場合には、利上げ
の頻度を上げる、あるいは場合によってはもう少し利上げ幅の拡大を検討する、そ
ういったことも必要になる可能性はありますけれども、今、現時点でそれが必要と
は考えていません。
(問)
午前中のご挨拶の中で、兵庫県経済の特徴の一つとして新産業の集積と神戸医療産
業都市のお話を挙げて頂いていました。こうした新産業の育成であるとかっていう
のは低金利に支えられていた面っていうのが割と大きかったのではなかろうかと思
うんですが、そうしたところは、利上げの影響を受けやすいというのが 、新産業の
育成あるいは、そういった集積が可能であるといったところも考えられると思いま
す。ということで、ただ、そうした一方で、新産業は日本全体の課題でもありまし
て、そういったところとか、何て言うか物価の安定の前に利上げの影響を受けてし
まうっていうような恐れはないんでしょうか。あるいはそうしたところは局所的な
現象であるとみるならば財政なんかで対応するべきなんでしょうか。何かお考えが
あればお伺いできればと思います。どうぞよろしくお願いします。
(答)
はい。ご質問ありがとうございます。もちろん、金融緩和度合いの調整を行ってい
くに当たり、今おっしゃられたような新産業の企業に対してどういう影響が出てく
るのか、そこは慎重にみていく必要があると思っております。ただ一方で、新産業
は低金利に支えられるものかどうかというのを考えたときに、日銀審議委員として
というよりは、その前、銀行で実務を担当していた頃の感覚で言いますと、そうい
った新産業というのは、リスクはあるけれども、ただ成長は速いようなもので、言
ってみれば、これを資金調達の面から言うとエクイティが必要で、一方でその上の
デットについては、あんまり金利には左右されない、そういう性格を持つ産業だと
理解しております。ただ、繰り返しになりますけれども、もちろん影響については
十分みながら、金融政策を考えていきたいと思っております。
(問)
ご質問では、今日、兵庫県なんですけれども、地域金融、信用金庫、信用組合たく
さんありますけれどもね、倒産が 600 件ぐらい今超えていて、かなりその地域、短
観なんか数字はいいわけですけれども、むしろそういうみえないような地域経済の
悪化があると思うんですね。この中で、今後その兵庫県 11 庫信用金庫ありますけれ
ども、地域金融の実情をどうみてらっしゃるかってことを質問したいと思います。
(答)
はい、ありがとうございます。この倒産、兵庫県の倒産に限らない話ですけれども、
今、全国でも倒産の件数は、前年と比べて上昇傾向にある、あるいは前年並みの状
況にあるということですけれども、その中身を、企業情報を調査する会社 の話を聞
きますと、コロナ禍以前からもう経営がしんどかった会社、これがゼロゼロ融資な
どで延命してきたものが今倒産に至っているっていうようなケースが多いと。その
9
理由についても、人手不足で人を確保できないあるいは人件費上昇や資材価格の上
昇などの影響を大きく受けていると聞いております。また、今日の懇談会の場でも
お話がありましたけれども、単なる延命ではなくて、抜本的な企業の構造改革 とい
うのが必要で、経済団体としてもそういった活動を支援していくというお話があり
ました。先ほどおっしゃられた兵庫県の倒産 600 件の内容を一つ一つを私はみてお
りませんけれども、もしも仮にその中に将来の企業価値を生むようなものが含まれ
ているとすれば、それは元来、地元の金融機関が支援してもらうべきところだし、
実際、今日の懇談会の場でも、各銀行も信用金庫さんもしっかりと支援していきた
いというお話はございましたので、その倒産件数、件数自体をみるというよりはそ
の中身をみていく必要があるんだろうと感じております。
(問)
あの先ほど神戸新聞さんの最初の質問に関連して確認です。先ほど利上げ は企業活
動の抑制につながるという意見はなかったというお話でしたけれども、逆にその物
価上昇の抑制のために、継続的な中立金利に向けた利上げは望ましいといったよう
な具体的な意見があったのか、あるいはそういう雰囲気だったのかというのを教え
て頂ければと思います。
(答)
はい。ご質問ありがとうございます。金融経済懇談会の場でも、ホームページで皆
さんにお示ししているような内容のお話をしました。中立金利に向けて利上げを進
めていくというお話に対して、雰囲気と言われても難しいところはありますけれど
も、それに対して違和感というのは示されなかったととらえております。
(問)
具体的な発言があった、例えば好ましいという意見があったということではない。
(答)
元来、適正な金融の正常化を進めるべきだっていう意見は 頂きました。ただ全員み
んながそう言ったというわけではないですが。
以 上