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2023年12月7日
日本銀行
氷見野副総裁記者会見
――2023年12月6日(水)午後2時30分から約30分
於 大分市
(問)
副総裁、ようこそ大分へ。それでは 、質問を二つほどさせて頂きたいんですけども、
最初一つ目ですね、今日の金融経済懇談会ということで、どのような議論が行われ
ましたか。
それから、印象に残った話し合いとかですね、何かありましたら、よろしくお願い
致します。
(答)
今日の意見交換会では、大分県の経済の状況ですとか、あるいは企業経営の うえで、
どんな課題に直面しておられて、どういう取り組みをされているかとか、あるいは
日本銀行の政策についてのご意見とか、大変率直にいろいろお伺いすることができ
て、大変貴重な機会だったと感謝しているところであります。今日お伺いした印象
では、全体としては大分県の経済もコロナ前の状況に戻りつつあるけれども、業 種
によって、あるいは企業規模によって直面しておられる状況 には、かなりそれぞれ
違いがあるというような印象を受けました。また多く経営者の方々から聞かれた、
今、直面している課題みたいな話としては、一つは、原材料価格の上昇の影響とか、
人手不足の問題とか、あるいは物価高が消費に与えている影響の話とか、そうした
課題に苦労しながら取り組んでおられる様子をお伺いしたところです。
日本銀行の政策につきましては、中小企業の状況、小規模企業の状況をよくみ なが
ら、柔軟に対応してほしい、というご意見ですとか、あるいは 何か動くときにも一
気に何かやるというよりは、段階的な対応 を考えてほしいというご意見だったよう
に記憶しております。
(問)
それからあと二つですね、地元紙なもので、大分県内の 金融それから経済情勢につ
いて、どういうふうにみられていらっしゃいますでしょうか。
(答)
まず大分県の経済の方ですけれども、様々な特産品があって、製造業については 、
新産業都市指定以来、県内各地にいろんな工場の集積があって、 更に観光業につい
ては、様々な観光資源に恵まれて、また [宿泊旅行に関する]アンケートでは、全
国で総合満足度一位といったような結果も出ているということで、大変いろんな強
みのある経済だというふうに受け止めております。今後につきましては、他の多く
の地域と同じですけれども、人口減少が一つの課題ですが 、いろいろ対応策も工夫
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されているというふうにお聞きしておりますし 、また、新しい成長分野を作りだす
ような取り組みも進めておられるということですので、いろんなそうした取り組み
が、経済の更なる発展につながっていくことを期待しております 。金融情勢につい
てもということでしたけれども、特にコロナの間というのは、コロナに苦しんでお
られる事業者の方を支えるということで、地域の金融機関もいろんな工夫 をしなが
ら、きめ細かな対応をしてこられたというふうに承知しております 。そのうえで、
ゼロゼロ融資の返済も本格化する中で 、事業面の改善も含めて、伴走型支援という
ようなことも聞きましたけれども、お客様に寄り添った取り組みを進めて 、そのう
えで健全性と金融仲介機能の発揮の両立に努めておられるというのが現状かなとい
うふうに理解しております。
(問)
金懇での挨拶でですね、副総裁、「賃金と物価の好循環を良く見極めて、出口や進
め方を適切に判断する」とおっしゃいましたが、その出口を判断できる時期を 具体
的にどうお考えなのか、好循環の実現を見通せるには来年の春闘が重要なポイント
となりますけども、連合が 5%以上の高い要求水準を掲げて、 更に大企業の一部で
はですね、積極的な賃上げを既に表明している企業もありますけども、この 3 月中
旬の集中回答まで待つ必要があるのか 、また、3 月の中旬の集中回答を状況をみて
から判断するのか、または中小企業というのはその後になりますから、中小企業の
状況が判明するのは、そうすると 4 月以降になるのか、その辺のタイミングについ
てですね、伺えないでしょうか。
それともう一つ、進め方も適切に判断するとおっしゃいましたが、出口の進め方に
ついてですね、マイナス金利の解除とかYCCの撤廃、またマネタリーベースのオ
ーバーシュート型コミットメントを どうするのかとか、その辺の進め方について想
定されているものがあれば、伺えないでしょうか。
(答)
タイミングと進め方について、ご質問 頂きました。まずタイミングですけれども、
結局、物価安定の目標を持続的・安定的に実現できると見通せるかどうか 、という
ことになるわけですが、その見通すにあたってどういう要素が大事かということに
なりますと、今お話があったように賃金と物価の好循環の状況というものをよく み
ていく必要があると、それをみていくうえで、いろいろ考慮し得るポイントという
のについては、今日いくつかご紹介させて頂いたわけですけれども、それに加えて、
消費ですとか設備投資の状況、あるいは海外の経済の見通し 、様々なものをみなが
ら判断していく必要があります。 ただ、いろんなものをみていくといったときに、
全部青信号が灯るということも実際の経済ではない わけですし、全部赤信号という
状態もないわけで、実際には経済の動きの中でいろんなシグナルが混じって 観察さ
れる中で、どこかで判断していく必要があるという ことだというふうに思います。
ですので、どこの段階でとか、これをみ てからとか、何か予めスケジュールを決め
てというよりは、何が起こっているかというのを本当に虚心坦懐に みていくという
ことを続けるということではないかというふうに思います。
あとは進め方ということで、現在の 大規模な金融緩和にもいろいろな要素がある わ
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けですけれども、それを例えばどういう順番で外していくのかとか、大変ご関心の
強いところだというふうに思います。これについては、実は今年の 5 月に金融研究
所が国際コンファランスというのをやりまして、そこで オルファニデス先生が、海
外の当局がある意味出口を経験したときのことをいろいろ比較して議論をされてお
られたんですけれども、まずこれをやってからその後これをやりますみたいなこと
を言った結果、タイミングが間違ってしまったみたいなこともあったというのがオ
ルファニデス先生の見方で、可能な範囲で政策反応関数って言っておられましたけ
ども、どういうふうな考え方かということを 説明していくことは、大事なんだけれ
ども、予めいろんな対応の順番とかを決め打ちすることは、マイナスが大きいとい
うことをおっしゃっておられまして、私もそうかなという感じを 持っております。
もちろん私どもも、物価安定の目標を持続的・安定的に達成できると見通せるまで
は続けるということは、フォワードガイダンスをしている わけですけれども、では
その条件が満たされたときに、どれからどういう順番でということについては、む
しろその時点できちんと判断していくということの方が望ましい のではないかとい
うふうに考えております。
(問)
質問は二点でして、一点目は、今の質問に関連するんですけども、好循環というお
言葉、今日の挨拶でもありました。これからそこを見極めていくといったお話です
けども、今の時点でですね、統計のお話もいろいろご説明 頂いてるんですけども、
既に好循環は起きているという認識なのでしょうか。
もう一つはですね、マイナス金利の解除について、マイナス金利といいますか 、正
常化に関して、した場合の影響の試算をお示しになられてますけども、実際そのマ
イナス金利が続くことの副作用というか、マイナス面についてはどのようにお考え
でしょうか。
(答)
好循環が起きているのかということについては、ゼロではもちろんないと思います。
少しずつ起きているということではあると思いますし、今後それが 更に強くなって
いくことを期待しているわけですが、では現在の進み方の状況をこの程度まで来て
ると、何合目まで来てると言えるだけの自信があれば、今日申し上げた のですが、
そこまでの判断ができていないので、いろんなことを みながら、こういうことを考
えておりますということをご紹介させて頂きました。
あと、出口の影響について、非常に狭い範囲の金利の受 け払いの変化に着目して、
多少その他のこともお話ししたわけですが、影響はそれだけにとどまるわけではな
くて、おっしゃる通り、ある意味いわゆる副作用と言われてるものが、今度は逆に
出口を経れば副作用が小っちゃくなっていくというようなこともあるだろうという
ところは、併せてみていく必要があることだろうというふうに思います。そうした
副作用の面とかについては多角的レビューの中で、実は 一昨日のワークショップで
も、例えば金融市場の機能に与える影響ですとか、金融機関行動に与える影響とか、
副作用も含めて、議論を行ったわけですけれども、ワークショップの議論の結果も
踏まえて、ブラッシュアップした うえで、私どもなりの効果と副作用両面の見方と
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いうのは、お示ししていきたいというふうに考えております。
(問)
二点ありまして、一点目は午前の挨拶の中で、企業の価格 ・賃金設定行動に変化が
あるかどうかというところで、氷見野さんは 4 段階まで示されたんですけれども、4
段階は植田総裁もおっしゃってないことで、新しい要素かと思うんですけれども、
氷見野さんは物価目標を達成するかどうかの見極めの際には、この第1段階から第4
段階まできちんと変わってきてるってことまで見極めないと、物価目標達成という
判断はできないとお考えなのか。 そうした場合に、来年の春闘集中回答日過ぎても
やはり見極めには時間を要するということなのか、この点が一点目です。
二点目は、同じく挨拶の中ですけれども、先ほど言及ありましたけれども、結構か
なりのパートを出口戦略を取ったときの家計・企業・金融機関の影響の説明に割い
てるわけなんですけれども、これはむしろ出口戦略を取るタイミングが近いので、
この読み手の方には心の準備をしてくださいという意味で、氷見野副総裁としては
この説明を入れたのか、この辺の真意はどこなのか、以上、二点お願い致します。
(答)
まず、一つ目の企業行動の変化の 4 段階ということですが、何か新しいことを言っ
たかというと実はそうではありません。植田総裁の大阪や名古屋での講演を読んで
頂くと、いくつかまとめて話しておられるんですが、詳しく読んで区分していくと
同じことになると思いますので、はっきり言って正直言い方が変わってるだけで 、
中身はそんな変わってるというふうには自分では考えておりません。これはもう四
つの条件を決めてハードルを上げたのかというご質問だったと思いますが、これは
起きてることをなるべくうまく理解していくための道具として申し上げた わけで、
さっきも申しましたが、全部青信号がつかないとって言ってると 、そんなこととい
うのは世の中は起きませんので、よく理解したうえで判断していくと、ですので何
か春闘をみても、何か第 4 段階が確認できるまでは何もすべきでないとか、そうい
う主張をする意図は全くありません。
あと、出口の話をいろいろしたのは何か意図があるのかというご質問だったかと思
いますが、既に金融学会で植田総裁も仮に出口のような状態になった ときに、日銀
の財務にどういう影響があるかというのについては、大変詳しく講演をしていると
ころでありまして、出口ということについては、物価安定の目標の持続的 ・安定的
な実現が見通せる状況になれば、検討するということであって、そこは何ら変化が
ないわけですし、そこで何をするかというのについても、先ほど申し上げた通り、
何か順番とか決め打ちできるわけではないということで、そこに何か変化があると
いうことではなくて、仮に条件が満たされれば出口も考えていくということであれ
ば、出口ということが起きた場合のことについても、日銀の財務に与える影響だけ
ではなくて、考え得る点はそれなりに考えてみようということで、申し上げた わけ
です。
(問)
私からも二点お願いします。まずですね、足元の物価高についてです。先ほど、氷
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見野さんのお話の中でも、地元の企業の方も物価高で原材料高に困ってらっしゃる
という声もあったと思うんですけど、やっぱり国会でも、なかなか日銀の金融緩和
的な姿勢もあって、円安が進んで、物価高が進んでるんじゃないか 、という声も出
ておりました。そのことに対する受け止めと、あと、今日の地元の企業さんとの懇
談の中で、そういったご意見はなかったか。物価高に対するもう少し具体的な声な
どがあればお願いします。
二点目がですね、賃上げと人手不足についてお願いします。日銀の 過去のいろんな
調査の中でも中小企業さんにとっては、なかなか今年度と同じような賃上げができ
るかどうか迷ってる企業が多いみたいな声もあったと思います。今日 の大分の皆さ
んとの懇談の中で、そういった賃上げについてどんなご意見があったか、教えてく
ださい。そして人手不足という話もありましたけど、 今、九州では熊本の半導体工
場の関連で九州全域的に人手不足というのもありますけど 、そういった影響など出
ているのか、どのように分析されてるのか、お願いします。
(答)
まず、懇談会で物価高についてお話があったかということですけれども、輸入物価、
原材料価格の上昇で経営に影響があるというお話とか、あるいは その物価高が、個
人消費にどういう影響が出ていくのか、気にしているといったお話とか、そうした
お話が出ておりました。そのうえで、足元、物価高なのになぜ緩和しているのか 、
というところは、おっしゃる通りいろんな方がなぜだろうというふうに思っておら
れる問題ではないかというふうに思いますし、私どもも 足元の物価高、特に食料品
とか日用品とかは、全体の上昇よりも 更に大きいということがありますので、家計
とか、あるいは中小企業の方とか、影響が大きいということは十分認識しているつ
もりであります。そのうえで、なぜそういった中で緩和を続けているのかというこ
となんですけれども、私どもの分析では、足元の物価高は輸入物価の上昇の影響の
波及という面が大きいというふうに考えておりまして 、その輸入物価の上昇につい
てはかなり落ち着いたということで徐々にその影響が出て、輸入物価が原因となっ
ているような物価高というのは落ち着いていくだろうと 。だろう、だろう、と申し
上げて、なかなかそうならないので、ちょっと申し訳ないんですけれども、 火曜日
に出ました東京都区部の 11 月の速報でみますと(注)、少し輸入物価の影響というも
のが、減衰してきたようなしるしがみえてきたような感じも致します。ですので、
足元の物価高を何とかしたいということと、経済の緩やかな回復を守っていきたい
ということと、来年の賃上げがきちんと行われるような環境を整えていきたいとい
うことと、もう一度デフレに戻ってしまうことは避けたいということをいくつか悩
んだうえで、金融政策というのは効果が完全に出るまでは 1 年以上かかるといった
ようなこともありますので、現時点では粘り強い緩和を続けていくことが、そうい
ったいろいろなところを考えたうえで、ギリギリ一番良い対応ではないかと思って 、
こういうことを行ってきたわけであります。
もう一つは賃上げ、あるいは人手不足の状況、それで次、賃上げどの程度やってい
くのかという点についてですけれども、今日お伺いした話は、来年度どうするかと
いうお話はあまりお聞きできませんでした。ただ人手不足には、大変直面しておら
れて、人件費を上げなければならないということも、経営には圧迫要因になってる
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といったところは、お伺いしたところであります。来年度どうなっていくかという
ところについては、なかなか見通しがたいところがありますし、多くの経営者の方
はまだ迷っておられる方も多いんだと思います 。私どもとしては、いろんな今日行
ったようなヒアリング、あるいはいろんな経済団体、労働団体の方のご発言、 更に
はその企業収益の状況とか人手不足の状況とかをみ ながら、どうなっていきそうか
っていうところをよくみていくということだと思いますけれども 、今の時点で予想
を言うのはちょっと早いんだと思うんですが 、企業収益の状況とか、あるいは、足
元までの物価上昇の状況とか、あるいは人手不足の状況とかからすれば、それなり
にしっかりした賃上げが来年度も続く可能性というのは、それなりにあるんではな
いかというふうに考えております。
(問)
先ほどのお話の中で、四つの条件について、春闘みてもその条件が確認できるまで
は、というつもりはないというふう におっしゃっていましたけれども、逆に賃金と
物価の好循環が、年内もしくは年明けに確認できる可能性はあるのか 、ある場合は
どの程度と現時点でお考えかお伺いできればと思います。
(答)
四つの条件とおっしゃいましたが四つの条件というつもりはありません で、四つの
段階という区別の仕方をして、起きてることを理解しようということで 、条件とい
うつもりはございません。そのうえで、じゃあ一体いつ頃見極められるのか、年内
なのか、年明けなのかというご質問だったと思いますが、いつ見極められるだろう
というふうに特定の予想は、私は現在持っておりませんで、非常に賃金と物価の好
循環だけでも複雑な現象ですので、今日、講演で申し上げたかったことは 、引き続
きしっかり見極める努力を続けていくことが大事だということを申し上げたところ
にとどまるわけで、それ以上の洞察は現在持っておりません。
(問)
先ほど大分の経済情勢についてもお話がありましたけれども 、今回の懇談会の中で
は、原材料価格の高騰であったりとか人手不足の課題ってものが地元の経営者に は
あるっていうところで、それに対して、具体的にどういった対応が 求められるのか
っていうことのお考えをお聞きしたいのがまず一つ。
あともう一つがTSMC、これ熊本ですけれども、TSMCの中で大分も含めて九
州への波及効果としてどういったことが考えられるのかってこと、そこについて の
お考えをちょっとお伺いしたいです。
(答)
原材料価格の上昇ですとか、人手不足に企業としてどう対応していったらいいかと
いうのについては、なかなかこれをやればいいんだというアドバイスができるほど
の知見はないんですけれども、今日出席された経営者の方からお聞きした話で申し
上げますと、原材料価格の面については、一つは政府の対応に期待するという声が
ありました。転嫁について公正取引委員会とか中小企業庁とかも始め、いろいろ企
業への働きかけとか、モニタリングを進めている わけですけれども、そうしたこと
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をもっとしっかりやってほしいといったようなお話がありました。また人手不足に
つきましては、いろいろ工夫をされていて、例えば今まで 、あんまり言うとどなた
がおっしゃったかわかってしまっちゃうんですが、こういう範囲で 人集めをしてい
たけれども、これまで必ずしもお願いしてこなかったような人材、年齢とか性別と
か、そういった採用のスコープを広げることで工夫してます 、といったようなお話
もあったところであります。
九州全体、半導体関係の工場の新設などを含めて人手不足が厳しくなるという面も
あるわけですけれども、全体としては経済活況を呈する方向にあるということかと
思います。昔から、私も古い世代なんで、格言では「景気 は西から」というふうに
言っておりまして、九州で起きてることが日本全体に伝わっていって 、景気が西か
らで広がっていくということになっていったらいいなというふうに 考えております。
(注)会見では「月曜日」と発言しましたが、正しくは「火曜日」です。
以 上