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201 8年7月5日
日本銀 行
原 田 審 議委 員 記 者 会 見 要旨
―― 2018年7月4日(水)
午後2時から約30分
於 金沢市
(問) 2 点、お伺いします。午前の懇談会では出席者とどのような意見を交わ
されたのかという点と、懇談会での意見交換も踏まえまして、石川県経済の現
状と今後をどのようにご覧になっていらっしゃるのかという点をお願いします。
(答) まず、本日の出席者からのご発言、ご意見についてお答えします。本
日の金融経済懇談会では、石川県の行政や財界、それに金融界を代表する方々
にご出席を賜り、地域の金融経済情勢や日本銀行の金融政策運営に対する貴重
なご意見を頂き、大変有意義な意見交換ができました。この点について感謝申
し上げたいと思います。懇談会の場では、ご意見が多岐にわたったため、全て
網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整
理して申し上げたいと思います。
石川県の景気については、総じてみれば好調であるとのご意見をお伺
いしました。2015 年の北陸新幹線開業の効果が 3 年を経てもなお継続している
ことや、年間60 万人にも上る海外からの観光客の消費が好調といった明るい話
題が聞かれました。一方で、労働市場がタイト化する中、経営上の課題として
人手不足を訴える声も聞かれました。また、人手不足が省力化投資を拡大する
ことが、当地の産業にも利益をもたらすとのご意見もありました。こうした中
で、出席者の皆様から、技術力や生産性を一層向上することで、現在の好調な
県内経済を天井とせず、更なる拡大を期待する前向きな声もお伺いしたのは非
常に印象的でした。
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金融界の皆様からは、今後の金融政策の運営において、マイナス金利
政策を長期に継続させた場合には、金融システムを不安定化させるのではない
か、というご懸念も伺いました。私どもは、中央銀行の立場から、物価安定の
もとでの経済の持続的成長を実現していくことや、金融システムの安定性を確
保することを通じて、当地を支える関係者のご努力がより大きな成果へとつな
がっていくようサポートしてまいりたいと思っています。
次に、当地の経済情勢についての認識ですが、石川県を含む北陸経済
は「拡大している」とみています。現在、日本銀行が「拡大している」と評価
している地域は、北陸と東海地方だけであり、その意味で、当地は日本の中で
最も景気のよい地域とも言えます。北陸経済が「拡大している」最大の理由は、
電子部品、工作機械、建設機械など当地に集積している世界的にも競争力の高
い産業が、世界経済の着実な成長を取り込む形で経済を牽引しているためです。
また、良好な収益環境のもと、当地企業の設備投資は増加基調にあり、雇用 ・
所得環境の着実な改善から、個人消費も着実に持ち直しています。景気拡大の
裾野も、製造業から非製造業へ、大企業から中堅 ・中小企業へと、緩やかなが
らも着実に広がっています。また、2015 年の北陸新幹線開業の効果は、3 年経っ
た現在も継続しており、足許では、インバウンド観光客の増加も目立っていま
す。さらに、ホテルの建設計画やオフィス需要の高まりなどの 2 次的効果もみ
られているほか、北陸新幹線の2022 年の敦賀延伸に向けての準備も急ピッチで
進んでいます。
石川県ならびに北陸経済は、世界経済が着実に成長を続ける もとで、
インバウンド観光客の増加なども相俟って、今後も良好な状況を維持していく
とみております。
(問) 日本銀行の政策を受けて、石川県を含めて北陸の金融機関について、
経営の現状をどのようにご認識されているかについて教えて下さい。
(答) 当地の金融機関経営の現状についてですが、北陸地域の地域銀行およ
び取引先信用金庫 21 行庫の 2017 年度の決算をみますと、コア業務純益、当期
純利益ともに減益となるなど、厳しい収益環境が続いています。 低金利環境が
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継続する中、金融機関間の競争の激化もあり、貸出金利息が減少したことが主
な背景です。
こうした収益環境を踏まえ、 当地の金融機関では、 収益力を高めるべく、
引き続き店舗体制の見直しや人件費の抑制などの経費削減に努めるとともに、
事業性評価に基づくいわゆるミドルリスク先向けの融資やコンサルティング業
務の強化、各種手数料の引上げなど非金利収入の増加にも取り組んでいます。
経費削減や非金利収入の強化に向けての取組みは、金融機関の基礎的収益基盤
の強化につながるものであり、また、事業性評価に基づく融資は、適切なリス
ク管理のもとで行われれば、地域経済の振興にもつながり得るものです。私ど
もとしては、こうした取組みの進展をしっかりとモニタリングしていきたいと
考えています。
(問) 2 点、お伺いします。1 点目は、本日の懇談会の挨拶要旨では、2%の
物価目標達成に向けて失業率がさらに低下する必要があるというご指摘があり
ましたが、現状2.2%とかなり低くなっている中で、原田委員としては、具体的
にどの程度の水準まで下がっていけば物価に波及していくというようにお考え
なのか、教えて下さい。
2 点目は、新しい失業率の数字ですとか、5 月の消費者物価など、少し
ずつまた新しいデータなどが出てきている中で、今後2020 年度まで見通した時
に、物価がどのような軌道を描いていくのか、改めてその見通しをお聞かせ下
さい。
(答) まず、物価と失業率の関係ですが、それは本日の挨拶要旨の 17 ページ
にフィリップス・カーブが描いてありますが、 これに則っていくと、 失業率が2%
半ばよりも更に低くなる過程で、物価が順調に上がりだしても 不思議ではない
ということです。まず、ある時期まで、3.5%程度が構造失業率で、それを下回
れば物価上昇率が徐々に高まっていくと考えられていたことは誤りです。次に、
失業率がどのくらいであればよいかというと、2.5%前後であれば、そろそろ物
価が上がるのではないかと、私は思っていたのですが、 最近の動きをみますと、
更に失業率が下がらないと物価が上がらないのではないかと思っています。そ
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の理由としては、構造失業率が更に低くなっている可能性があるということで
す。本日の挨拶要旨でもその理由について色々なことを述べています。1つだ
け申し上げると、現在、労働者に占める中高年の比重が高くなって おり、若者
の比重が低くなっています。そうしますと、昔は若者の比重が高いので、若者
の失業率が高いことから、昔の失業率は高いのです。ところが、現在、若者の
比重が低くなっているので、需給に対して同じくらいの圧力をかける失業率が
もっと低くなっている可能性があります。これを前提として、1992 年の失業率
を2017年の年齢構成に合わせて失業率を計算すると1.9%になります。これは、
構造失業率がもっと低いかもしれないということを示唆する 1 つの試算になり
ます。そうしますと、失業率は更に下がっていく必要があります。
それから、その時の物価上昇率がどのくらいかということも重要です。
日本銀行の色々な資料で繰り返し述べられていることです が、物価上昇率は、
需給ギャップと期待物価上昇率で決まるという ことです。その期待物価上昇率
は、過去の物価上昇率に引きずられて決まると 日本銀行は述べています。そう
すると、その時の物価上昇率がどのくらいであるかが大事です。例えば、物価
上昇率が1%半ば以上になって、かつ、失業率が構造失業率を多少割るようなと
ころ、具体的に言うと、かなり2%に近い、あるいは2%を割るような失業率ま
でいけば、物価上昇率が 2%になるのではないかと考えています。
2 点目の質問は、そういう議論を前提として、今後の物価上昇率をどう
みるかということです。それにつきましては、これからの 政策決定会合もあっ
て、次回の会合は展望レポートを公表する会合でもありますので、具体的に言
うことは現在の段階では避けたいと思います 。いずれにしても、今述べました
ようなメカニズムで、物価は上昇すると考えています。
(問) 2 点、お伺いします。1 点目は、4 月の展望レポートで物価目標の達成
時期が削除されまして、本日の挨拶要旨でも触れられておりましたが、今、 「で
きるだけ早期に」というのは、どれくらいの期間を指す、あ るいはそれに期限
があるのかどうか、お考えをお聞かせ下さい。
もう 1 点は、最近の決定会合では金融緩和の副作用についての議論が
なされているかと思いますけれども、本日の懇談会では、むしろ金利を引き上
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げると民間銀行は打撃を受けるというような発言をされていたかと思います け
れども、物価目標が実現していない状態でも、副作用の高まりを理由にした金
利引上げなどの政策調整はあり得るのかどうかということについて、お考えを
お聞かせ下さい。
(答) 物価が 2%程度に達する時期の見通しを削除した理由と、それから「で
きるだけ早期に」とは一体どういう意味かという ご質問かと思います。削除し
た理由については、この挨拶要旨の中で述べている通りですが、展望レポート
での記述は単に見通しを述べているものであって、物価は色々な要因で決まり
ますので、この見通しを削除したということが政策とダイレクトに結び付いて
いるわけではないということです。それから「できるだけ早期に」というのは、
まさに「できるだけ早期に」なのですが、その時に大事なことは物価上昇のモ
メンタムが続いているということだと思います。 今の経済情勢をみれば、 一時、
物価上昇率が低下するような局面もあったわけです が、直近の東京都の物価な
どをみますと、そういうことはないのではないか と考えています。それから失
業率は下がっており、需給ギャップも益々逼迫の方に進んでいるので、モメン
タムが失われているということはないと考えています。
もう 1 つは、金融政策の副作用ですが、これは当たり前のことを言っ
ているだけです。つまり、金融緩和政策の効果と副作用を常に点検するという
ことは、当たり前のことでありまして、あらゆる政策については、そういうも
のだと思います。実際にどうするかは、具体的に考えてみないといけないわけ
で、効果の方は本日の挨拶要旨で述べていますように、生産性も上がっていま
すし、女性の労働参加率も上がっていますし、あらゆる面で日本経済にとって
よいことが起きています。財政収支も結果としてよくなっています 。よいこと
はこれだけあります。そう考えますと、副作用は効果に比べて非常に小さい 。
従って、私としては現在の政策を引き続き続けていくことが大事だと考えてい
ますが、副作用が非常に大きいということを具体的に指摘されれば、また考え
なければいけないと思っています。
(問) 2 点、お伺いします。1 点目は、挨拶要旨の 18 ページの先程もお伺い
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した件ですが、理屈がよくわからないのですが、「オーバーシュート型コミット
メント」がある限り、物価上昇率が 2%を超えて安定するまで緩和を続けられる
ことが基本だと思うのですが、失業率が 2%になるまで金融緩和を続けるべきだ
と申し上げている訳ではない、ということは、 原田委員が想定されている中で、
失業率が2%まで下がらなくても、何か他の現象で物価上昇が安定的に2%にな
るということを考えられているのでしょうか。
もう 1 点は、挨拶要旨の 12 ページの銀行経営が苦しいのは資金需要に
対して供給が多過ぎるからだということですが、一部には日本銀行の大胆な金
融緩和の表れではないでしょうか。あるいは 、地銀等の数が多くて競争力がな
くて、もっと合併等で数を少なくするべき、効率を上げるべき、ということ な
のでしょうか。
(答) まず、最初の「オーバーシュート型コミットメント」と現在の緩和的
金融政策をどこでやめるのかということですが、物価上昇率が 2%にいっていな
くても、同じ政策を続けていれば、2%を突き出て、突き出るのは目標ですから
突き出るのですが、突き出過ぎてしまうという可能性 は当然あります。米国の
場合を考えても、突き出ています。突き出る前に、これまでの緩和から、緩和
を弱めるないしは引締めの方向に動いているわけです。ですから、日本におい
ても当然そういうことはあり得る。つまり、2%を超えて物価が順調に上がって
いくことが確認できれば、実際に2%を超える前から、金融緩和の程度を弱める
ことは十分あり得るということです。
もう 1 つの銀行経営の問題ですが、まず事実として、借りる人に対し
て供給が多いというのは、これはマクロの関係を 述べたものでありまして、資
金の需要に対して資金の供給が多過ぎるということです。これ自体は、もう何
十年ものトレンドとして続いているものです。こういう状況を日本銀行が作っ
たというわけではなくて、むしろ金融緩和政策を しているからこそ、資金需要
が増えているわけです。つまり、設備投資が増えれば当然資金需要が増えます
から、トレンドとして資金需要が減っている中で、日本銀行の金融緩和政策に
よって、少しは資金需要が増えているということだと思います 。従って、日本
銀行の政策によって、資金供給が過大になったということはないと考えていま
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す。銀行の数とかそういうことではなくて、マクロ的に みた資金の需給のこと
を申し上げたということです。
(問) 副作用についてですが、本日の講演でも、日本銀行の財務に悪影響を
及ぼすようなことはないという副作用に否定的なご発言もありましたけれども、
先程、十分点検していく必要もあるというご発言もありました。一方 で、昨年
11 月の講演ではQQE自体には副作用といわれる根拠はないというようにおっ
しゃっていたと思いますが、金融緩和が長期化する中で、この副作用懸念とい
うのをどのように考えていらっしゃるか、お考えをお聞かせ下さい。
(答) 既に申し上げた通りですけれども、一般論として申し上げれば、あら
ゆる政策には効果と副作用は当然あります。効果と副作用を比べるということ
は当然のことで、それをきちんとみていくということを申し上げているに過ぎ
ません。前回の金懇の挨拶要旨でも、副作用といわれているものを具体的に考
えてみると、それが非常に大きなものになる可能性は極めて小さいのではない
かと申し上げたわけです。具体的に、例えば日本銀行の財務についてです けれ
ども、出口の時に金利を上げれば日本銀行の財務が傷むということを多くの方
がおっしゃっていますが、最終的に金利が上がると、今度は通貨発行益が増え
ることになりますので、最終的な利益で一時的な損失は十分埋められます。ま
た、QQEの過程で、日本銀行の収益も増えるということもありますので、 Q
QEを始めて途中までの利益と、QQEの出口の損失と、出口後の利益を全部
足せば、プラスの方がずっと大きくなると前回述べて います。そう考えれば、
副作用といわれるものが顕現化する可能性は非常に小さいのではないかという
ことです。
(問) 挨拶要旨の 20 ページでは、色々な神話、伝説、歌舞伎の話をされてい
て、この 3 つの話はいずれも、日本銀行が神に挑戦した人間のような存在であ
るという批判があることを前提に、こういう話を出されているのかどうか を教
えて下さい。また、そういう批判があるとすれば、誰がどういう風な批判をし
ているのか具体例を挙げて頂きたい。と言いますのは、インパール作戦に例え
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た話などは、具体的にそういう批判をされている方も注 で書かれているので、
具体的にどういう批判があるのか教えて頂けますでしょうか。そうして頂けな
ければ、この 3 つの話をよく分かっている方々も、原田委員が何に対してどう
いった批判をされているのか全く分からないため、ここのところの解説を含め、
誰のどのような批判に対しての反論なのかをご説明下さい。
(答) まず、QQEというのは、異常な金融政策であって、そういう異常な
ことをやるべきではない、というようにおっしゃっている方がたくさんいらっ
しゃるので、それに対して、そういうことはありませんと 述べたわけです。こ
こでは色々と述べているため分かりにくかったかもしれませんが、挨拶要旨の
20ページの下から 3 行目の最後に、「貨幣に関わる金融政策は、神のものではな
く人間のものです。人間のものであれば、理論と事実に基づく議論を避けるべ
きではありません」と述べています。つまり、こういう異常なことはもうやめ
ろとかいう議論ではなく、効果と副作用とか、どういう効果があるのかとか、
そういうものを具体的に認識して議論したほうがよいのではないかと申し上げ
ているわけです。確かに、最後の結論のところで、この下から 3 行目のところ
で段落を入れればもっと分かりやすくなったと思います。
(問) 午前中の懇談会で、以前、宮田支店長が発表された日本銀行金沢支店
の移転について、やり取りがあったのかどうか、やり取りがあったとすれば、
どなたが発言をされて、どのような話があったのかということをお教え頂きた
いです。また、地元では、金沢支店が今ある場所が一等地なので、賑わいのあ
るものになって欲しいということを考えている人が多いのですが、跡地活用に
ついて原田委員のご認識がどのようなものかをお伺いしたいです。
(答) まず、本日の午前中の懇談会は、どういう意見が具体的にあったのか
を対外的に言わないということを前提として、皆様方から率直な意見を伺って
いますので、詳細についてはお答えできませんが、跡地利用に対しての私の 認
識をお答えしたいと思います。
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本営業所の跡地の利用について、地元の方々が非常に高いご関心を持
たれているということについては、私どもは十分に承知しています。関係者の
方々から、日本銀行に対し、ご意見が寄せられれば、私どもの金沢支店におい
て、しっかりと耳を傾けてまいりますし、関係者の方々に対して、必要なご説
明も行っていくことにしています。日本銀行としては、公的機関として求めら
れる手続きの公平性と適切性を確保しながら、しっかりと対応してまいりたい
と思っています。
以 上