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若田部副総裁記者会見(9月1日)要旨 [PDF 330KB]

SPEAKER記者会見(9月1日)要旨

PUBLISHED02/09/2021, 00:00:00
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20 21 年9月2日

日本銀 行

若田部副総裁記者会見要 旨

―― 2021年9月1日(水)

午後2時から約35分

(広島市・東京間オンライン開催)

(問) まず、本日の金融経済懇談会ではどのような意見交換をされましたで

しょうか。副総裁の感想などもありましたらお願い致します。また、コロナ禍

が続いていますが、広島県経済の現状に対する認識や先行きの展望について、

よろしくお願い致します。

(答) まず、広島県では、先月の豪雨により数多くの方が被災されたと伺っ

ています。心よりお見舞い申し上げます。本日の懇談会では、広島県の行政や

金融・経済界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や地域経済が直面する

課題などについて、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策

運営に関する率直なご意見、ご要望もお伺いし、大変有意義な意見交換ができ

たと考えています。ご多忙の中、本日ご出席頂いた皆さまに、本席をお借りし

て、改めて御礼申し上げます。 懇談会での話題は多岐にわたるものでしたので、

本席で全てを網羅することはできませんが、席上で伺ったお話を私なりに整理

して申し上げたいと思います。

足許の広島県の景気についてですが、新型コロナウイルス感染症の感

染拡大や、半導体不足などの供給制約による生産活動への影響など、下押し圧

力が高まっているものの、全体としてはひと頃より改善しているとの見方が多

く聞かれました。 先行きについては、 全体としては改善見通しではあるものの、

コロナ禍での世界的な需給の崩れを背景とする調達制約や原材料価格上昇に

対して懸念が高まっているほか、感染症の帰趨やその影響についても不透明感

が強く、見通しが立てにくい状況にあるとの認識が多く示されました。やや具

体的には、業種や品目でみるとばらつきが大きいとの見方が聞かれました。例

えば、製造業では、自動車関連業界などでは供給制約の影響が尾を引いている

状況にある一方で、半導体製造装置関連や産業用機械などでは海外需要を中心

に高操業を続けているとのお話でした。また、非製造業では、飲食・宿泊関係

や観光関連のサービス業において、感染症の影響から、売り上げへの下押し圧

力がなお強い状態にあるとの声が多かったです。

ただ、こうした中でも、行政や金融界、経済界においては、様々な形

での支援策を講じておられ、地元企業への資金繰り支援や、販路拡大、事業再

構築、雇用維持への取り組みを強化しているとのお話を伺いました。金融界の

方からは、感染症の影響で厳しい状況におかれている地元企業に対して積極的

に資金繰り支援を行っているが、足許では、 業況が改善して返済を始める先と、

なお厳しい業況のもとで返済条件を変更する先に分かれてきているとのお話

も聞かれました。

このほか、脱炭素化への対応について色々なお話を伺えたのも、大変

良かったと思います。広島県においても、産学官金が連携した実証研究などの

取り組みが始まっており、エネルギー多消費産業が多く、国際的なサプライ

チェーンからの要請も強い当地において、非常に関心が高まっていることが窺

われました。ものづくりの技術を活かせるチャンスだと思って、生産性の向上

や地域経済の発展に つながるよう取り組んでいきたいとの前向きなお話を伺

い、大変心強く感じたところです。

日本銀行に対しては、金融政策運営にあたっては、中小企業の実態に

十分配慮して、ソフトランディングを心 掛けてほしいとの意見がありました。

また、金融界の方からは、7 月に骨子素案を公表した「気候変動対応を支援す

るための資金供給」について、有効に活用していきたいと考えているので制度

設計について引き続き対話をお願いしたいとのお話もありました。

私どもとしては、本日頂きましたご意見等も踏まえつつ、広島支店を

通じ、広島県の金融経済情勢を丹念に調査し、広島県経済を支えておられる関

係者のご努力が、大きな成果につながっていくようサポートしてまいりたいと

思います。

続きまして、広島県経済の現状に対する認識や先行き展望について付

言させて頂きますと、先ほど申し上げたように、新型コロナウイルス感染症と

供給制約の影響で下押し圧力が続いていますが、なおその中でも緩やかな持ち

直し基調にあり、この点は、先ほどご紹介させて頂きました地元の方々の見方

と概ね同様であると考えています。

長い目でみての課題については、私からは講演で、人口減少や少子高

齢化ということが課題ではありますが、それが少し過大評価されているのでは

ないかというお話を致しました。これについては、国際比較でみたとき、ある

いは広島県の状況でみたときに、人口減少が必ずしも経済の縮小につながって

いないということを申し上げました。そのうえで、中長期的な課題としてどの

ように対応するかという点では、住民の暮らしやすさといった地域の魅力を向

上させることが重要ではないか、そのためには産学官金による積極的な投資と、

各種の技術・制度・政策イノベーションが欠かせないというお話をさせて頂き

ました。この点、講演でも紹介しましたが、当地においては、まさに産学官金

の連携による地域活性化への取り組みが活発であるように見受けられます。

例えば、都市機能の充実・強化に向けて、広島市中心部をはじめ、呉

市や福山市などでも再開発事業が実施されています。また、ICT技術を活用

した次世代交通網にかかる取り組みも複数の地域で進んでいます。産学官金が

参画するこれらの事業は、居住者や移住希望者が住みやすいと感じるまちづく

りにつながるとみられます。また、ものづくり、農業、保育現場など様々な分

野でAIやIoTなどのデジタル技術を活用するため、民間企業や団体、大学

などが連携して実証実験などに取り組んでいます。行政もそうした取り組みを

後押ししており、官民を挙げて生産性向上や技術革新を推進しています。この

ほか、二つの世界文化遺産など、日本有数の観光資源にも恵まれています。昨

年来、感染症の影響により観光地への人出や宿泊客数は低水準で推移していま

すが、個人旅行に着目した観光地域づくりや、アフターコロナを展望した観光

需要創出を目指す取り組みが始まっていると聞いています。

先ほども現地の方から伺ったように、社会的要請が高まっている気候

変動問題への対応についても、産学官金が連携して取り組むべき重要課題と考

えられます。当地で進んでいる産学官金が一致団結した各種の取り組みが実を

結び、広島県経済がますます発展することを期待しています。繰り返しになり

ますが、私どもとしては、広島支店を通じて情報収集や意見交換を行い、地域

活性化に向けた様々な取り組みに少しでも貢献できるように努めて まいりた

いと考えます。

(問) 今ほど、新型コロナウイルスの広島県経済界への影響をお伺いしまし

たけれども、併せて、7 月と 8 月には広島県、中国地方を中心に大雨の被害と

いうことも出ています。こうした大雨被害が経済界へ与えている影響、災害の

大規模化のリスクというところ、経済としてど のようにみて取られているか、

影響を教えて頂ければと思います。

また、日銀も金融政策として資金繰り支援などを積極的に続けてい

らっしゃると思いますが、長期化するコロナの影響から広島県が脱却そして成

長していくために重要なことは何か、今日の懇談会を通じて感じたことがあれ

ば教えてください。そうした意見を受けて、日銀広島支店と協力されて、どの

ように広島経済界を発展させていくかというところ、お考えがあれば教えてく

ださい。

(答) 7 月、8 月の豪雨については、過去に例のない降水量となり、人的被害

に加え、家屋の損壊、浸水、交通インフラの制約など、住民の方々の生活にも

多大なる影響が発生したと伺っています。また、経済界においても、施設や設

備などに被害を受けられている企業が少なからずあると伺いました。

これまでに伺った限りでは、今回の豪雨により、当地の経済活動全体

に重大な影響を及ぼすには至っていないと認識していますが、企業活動に何ら

かの制約が生じた先は少なくないと思われます。被災した企業や住民の方々に

おいては、復旧に向けて追加的な費用負担が発生するとみられ、そうしたこと

が企業業績などにも影響を及ぼすものと予想されます。この点、既に行政、経

済界、金融機関では相談窓口の設置や災害復旧融資の創設など、様々な支援策

を打ち出しており、そうした取り組みが経済への影響緩和につながることを期

待しています。

この間、日本銀行広島支店においても、中国財務局と連名で、金融機

関等に対して、被災者への金融上の措置を要請致しました。引き続き、広島支

店を通じて、今回の豪雨による地域経済への影響をしっかりと把握してまいり

たいと思います。

二点目の広島県の成長に何が必要なのかということですが、まず全体

の枠組みとして、日本銀行が必ずしも特定地域を対象とせずに行っている金融

政策、あるいは金融システムの安定化は、当然、回り回って広島県経済にも良

い影響をもたらすだろうと思っています。

そのうえで広島県が抱えている課題、あるいは広島県経済をいかに活

性化するかということについては、講演の中でも多少触れさせて頂きましたが、

大きく言って二つあるのではないかと思います。

大前提として、確かに人口減少、少子高齢化は大変ではあ りますが、

それにどのように適合していくのかが問われていると思いますので、そうした

形での取り組みを進めていくのだと思います。そのためには、まず、政策の側、

あるいは制度の面で、各種のイノベーションが必要であろうと思います。それ

が一点目です。

二点目は、地域の魅力を増すというのは、基本的にはその地域が暮ら

しやすいかという点にあるので、大きく言って、まちの魅力、そして暮らしや

すさ──雇用や所得、仕事の有無など──になるかと思います。その両方にお

いて、広島県の地公体、あるいは金融界、経済界の皆さまは、日々取り組んで

おられることを伺い、私も大変安堵している次第ですが、基本的には広島県の

成長というと、広島県が、住んでみたいと思うようなところになることが大事

になると思います。

(問) 気候変動対応と物価の関係についてお伺いします。午前の講演で、中

央銀行も気候変動問題への対応を行うことは可能で、それは使命からの逸脱で

はないという趣旨のお話がありました。気候変動対応を進めていくと、長期的

には、景気や物価の安定につながるということはイメージしやすいのですが、

例えば、短期的に物価を下押ししたり、持ち上げたりという、そういう力が一

時的に働くようなことはないのでしょうか。もし仮に、今の状態で短期的に下

押し圧力が強まるということがあれば、 2%の物価目標の実現との両立という

ことと、やや矛盾する面もあると思うのですが、その辺の見方について教えて

ください。

(答) 気候変動に対して、何か政策アクションをしたとしても、すぐに効果

が出るかという意味では、中長期的な対応が迫られるということだと思います

が、おっしゃったように、確かに短期的においても、気候変動の、例えば物理

的リスクや移行リスクが、物価や経済に下押し圧力になることは当然あり得る

と思います。

私が日本銀行に来てから痛感することは、日本経済の成長率が全体と

して低位であることにも関わると思いますが、例えば、2018 年 7 月の豪雨や

様々な自然災害が起きると──今回の8月の豪雨についてはまだ影響が明らか

でありませんが──、やはりこれは経済に少なからぬ下押し圧力をもたらして

きたということです。普通のマクロのモデルで考えても、需給ギャップの部分

が、一時的に更に供給超過といいますか下押しされると、その限りにおいては

物価に対して下押し圧力が働き得るということです。

私も今起きている集中豪雨が気候変動によるものかどうかについて、

確実に申し上げるだけの知見はありませんが、ただ、色々と起きている自然災

害なり、物理的リスク、そしてこれから考えていかなくてはならない移行リス

クが、需給ギャップあるいは予想インフレ率を通じて物価の安定に影響するこ

とは、十分考えられると思います。

そのもとで 2%の「物価安定の目標」と両立するかは、今挙げた例で

は下押し圧力が働いてしまうので、むしろ、経済政策についてはより拡張的に

運営すべきということになるかと思います。先ほど申し上げたように、日本経

済は、低成長が続いていることの裏返しですが、自然災害や経済構造の転換に

は直接的にコストがかかるわけで、そうした被害があったときに、それに対し

ていかに対応するかというときも、十分な余地、資源があるのとそうでないの

とは違います。ですから、そうした資源や余地を十分に持っておくという意味

でも、2%の「物価安定の目標」のもとでの金融緩和とは矛盾しない状況にある

と思います。基本的には、持続的な経済発展、あるいは災害に対して強靭な経

済を作っていくという観点からは、日本銀行が行っている政策と気候変動対応

は両立し得ると言えると思います。

(問) 質問の趣旨ですが、自然災害そのもののリスクが物価にどう影響する

かではなく、気候変動対応を進めることによって、物価にどういう影響がある

かということだったのですが。

(答) その点は、物理的リスクと移行リスクを減らすことにより──もちろ

ん本当に減らすかどうかは問われますが──、物価については安定的になると

は思います。また金融システムについても安定化に資するということだと思い

ます。ただ、その経路がどれぐらい時間がかかるかということについては、中

長期的に時間がかかるものかもしれないと整理できると思います。

(問) 景気の現状認識についてお伺いします。午前中の会議でもワクチンの

普及に伴って、企業から家計へ好循環の影響が向かえば、景気持ち直しの見通

しを示されていましたが、足許のワクチン普及が国民の大体 40%を超えるよう

な中でも、やはり感染の拡大が収まらずにサービス業種中心に厳しい状況が続

いています。この辺り、若田部副総裁としては、今の景気の現状というのは、

下振れリスクが顕在しつつあるのか、どのようなご認識なのか教えてください。

関連してもう一点ですが、 こうした状況で、 金融政策の対応の必要性、

コロナオペの延長を今年度いっぱい決めていますが、その辺りの拡充、ないし

は追加の金融緩和の必要性などについて、副総裁、今ご自身はどのように考え

ているのか教えてください。

(答) ワクチン接種あるいは新型コロナウイルス感染症の帰趨については、

今回の講演で不確実性ということを強調しましたが、まさに不確実な状況が続

いていると思います。私も少し前は、ワクチン接種が進むことによって、経済

は回復していくという筋道で描いていましたが、少なくともそこについては下

振れリスクがあり、回復という意味では、時期的には後ずれしていくだろうと

思います。これは、変異株の影響というものにより、感染が拡大してきたとい

うことはあるかと思います。現状、ワクチン接種の効果かとは思いますが、死

者数などに関しては、前回のピークほどは増えてはいないようですが、感染が

続くことを国民が不安に考えるならば、経済に対してはまだ下押し圧力が続く

だろうということです。これまで考えていた下振れリスクの一つがまだ残って

いる、あるいは消えていくスピードが遅いということなので、経済について、

明確に大きく下振れ していくということが現時点で顕在化しているとはみて

いません。ただ、ここのところは、やはり時期が後ずれすることにより、様々

な問題、 課題が生じてくる可能性はあるので、 注意深く検討したいと思います。

仮に下振れリスクが更に顕在化していく、景気が回復どころか底割れするよう

なことになってくると、当然、政策対応を考えなくてはならないと思います。

政策対応が何になるのかは、状況によってくるわけで、企業に対する資金繰り

支援が望ましいと考えるのか、あるいは追加の金融緩和が望ましいと考えるの

かは、経済の状況により判断せざるを得ないということだと思います。そのと

きには、そのための手段をきちんと用意しておくということで、私どもはいつ

も用意しているということです。

(問) 今が、底割れしているというほど ひどい状況ではないという理解で

しょうか。

(答) 今の段階で、少なくとも、色々と聞く、データをみる限りでは、デフ

レ的な圧力が非常に強まっている、消費も急激に落ち込んでいる、設備投資も

急激に落ち込んでいる、といったことではないと思います。消費は確かに足踏

みをしていますが、供給制約はあっても、海外部門の好調さを受けた輸出の拡

大は続いていますし、設備投資も今のところ堅実な動きが続いています。経済

のエンジンという点で家計と企業をみると、企業はそこそこ底堅く推移してい

ますし、家計は、持ち直しがまだ遅いということだと思いますが、急激に底割

れしているような印象はありません。

(問) 物価で二点お伺いしたいのですが、午前の講演では、コストプッシュ

による物価上昇について警戒感を示されている感じなのですが、副総裁は、先

行きはエネルギーや資源価格の動向によって、物価が上振れする可能性も相応

にあり得ると考えておられるのでしょうか。 また、 コストプッシュであっても、

適合的にインフレ予想の引き上げを促す面はあると思うのですが、物価安定目

標の実現という観点において、コストプッシュインフレ、これをどのようにと

らえておられるのか、ご見解をお願い致します。

(答) 講演でも申し上げたのですが、持続的にインフレが起きるためには、

コストプッシュ要因ではいかないだろうというのが私の趣旨です。1960 年代後

半から、よく言われる大インフレが起きましたが、あのときも、例えば「石油

ショックが起きてインフレが ひどくなった」との認識の人が多かったです。

もっとも、大インフレそのものは、1960 年代後半の国内におけるマクロ経済政

策の拡張的運営によって起きたもので、それにより短期のみならず中長期の予

想インフレ率も上がったということでした。ですから、今、足許で多少コスト

プッシュ的なことが起きているとしても、それがより広範に日本経済に拡がっ

ていくためには、それこそ講演の冒頭で前向きな循環、良い循環という言い方

をしたように、家計や企業に滞留、待機している資金が支出されていくという

動きがないといけないと思います。コストプッシュだけでインフレが起きると

はみていないので、やはり日本国内の要因をきちんとみなくてはならない、と

いうのが、私が申し上げたかったことです。

もっとも、適合的期待を通じて予想インフレ率が上振れる可能性はな

いかと言われれば、そうかもしれないですが、その場合、みなくてはならない

のは、短期の予想インフレ率というよりは、むしろ、中長期の予想インフレ率

です。この部分は米国経済をみるところでも争点になっていますが、中長期の

部分はかなり 2%前後でアンカーされているということであるならば、仮に、

コストプッシュで、適合的期待によって短期の予想インフレ率が上がったとし

ても、それがそのまま持続的なインフレ率につながってくることはないだろう

とみています。もちろん、経済は色々なことが起こり得るので、例えば、石油

ショックのようなことで、大幅に予想インフレ率が上がるようなことがあれば

別ですが、そのようなことが今起きているとはみていない、 とお考えください。

(問) まず、午前の挨拶でも、気候変動対応とそれから中央銀行のマンデー

トについてご発言がありましたけれども、今年は、日本銀行は地域金融機関向

けの「特別当座預金制度」も始めるなど、日銀がカバーする領域というのが非

常に広くなっている のですけれども、若田部副総裁として、現状の日銀のカ

バー範囲が広過ぎるというふうにお考えでしょうか。

また、午前の挨拶でもありましたけれど、喫緊の課題は、やはり物価

目標の達成ということでありまして、ただ、今、日銀の金融政策の重心はコロ

ナ対応にあるわけなのですけれども、副総裁は、政策の重心がコロナ対応から

物価 2%目標の達成に向けた政策対応に移るタイミングについて、現時点でい

つ頃というふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

(答) まず、二点目の質問からお答えさせて頂きますと、いつ頃というよう

なカレンダーベースでは申し上げにくいのが、まさに不確実性の最たるところ

で、逆にカレンダーベースに縛られて、何かこれぐらいまでと 申し上げると、

予測が外れる危険性の方が高いのではないかと思います。ただ、現状で新型コ

ロナウイルス感染症の影響が続いていることはその通りなので、例えば、先ほ

ど来話が出ているワクチン接種が進む、あるいはもう少しワクチン接種が進ん

だことを前提として社会の中の枠組みが変わっていく、そして、感染症とある

種共存するための手段がもう少し出てくる、というようなことが起きるのかど

うかです。あるいは、例えばワクチンではなくて治療薬であったり、あるいは

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国民の多くの人が今関心があるのは病床数の確保ですが、例えば、実際に罹患

したときに病院に行けるのか、治療を受けられるのかというような色々な課題

がどう展開していくのか、ということに非常によってくると思います。その転

換は、米欧などではある程度起きつつあると思っていたのですが、そこでも変

異株が生じるということなので、それを追いかけている我々としても、なかな

かうまい形で局面転換がなされていないという感じは致します。やはりそうし

た局面転換がなされていない間は、どうしてもコロナ対応というフェーズが続

かざるを得ないのではないかという気は致します。

最初の質問で、日本銀行のカバー範囲が広過ぎるのではないかという

話ですが、広くなっていると言えるのかどうか はよく分かりませんが、マン

デートの観点からは、講演でも申し上げたように、物価の安定と金融システム

の安定ということに沿っての対応なので、そこから外れているということはな

いです。ですから、それに何か別のマンデートが加わっているかという意味で

は、広くはなっていないということだと思います。また、つい最近、インター

ネットでも話題になった本ですが、服部正也さんの『ルワンダ中央銀行総裁日

記』を読むと、ルワンダでということもあったと思いますが、いわゆる中央銀

行としては、非常にたくさん色々なことを行っていたことがよく分かります。

現状でも新興国においては色々なことを実施していますし、過去の日本銀行の

歴史をみても、それこそ産業金融などを行っていたわけです。ですから、そう

した時代に比べて、今の時代の日本銀行が、そんなにたくさん行っているのか

な、という気はしないではないです。さはさりながら、色々な制度をローンチ

しているので、その部分が、実施していることが増えているかのように見えて

いるかもしれませんが、 基本は、物価の安定と金融システムの安定です。ただ、

日本経済がおかれている色々な課題がたくさんあるので、そうした課題に物価

の安定と金融システムの安定という観点から対応するためには、色々な工夫を

しなくてはならないという意味だとは思います。 もっとも、それをもって広

がっているというよりも、現場の感覚からすると、粛々と課題に対応している

ということだと思います。

(問) 気候変動の部分なのですが、午前中の講演の中で、政府との適切な連

携・分業がきわめて重要という指摘がありました。ここの部分、もう少し具体

的にお話をお伺いしたいのですが、政府としての役割としてはどういう部分で

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あって、日銀としてできる、分業としてできる部分というのは、今進めている

ような資金供給の部分が想定されるのか、それよりも更に先に何かこれ以上の

ものも、 今後、 タクソノミーでの議論等が進めばできるようになってくるのか、

その辺のお考えをよろしくお願い致します。

(答) 気候変動というのは、基本的にはグローバルな意味での市場の失敗で、

この市場の失敗に対応する ためにどういう手段があるかということで考える

と、政府というよりは国会も含めた国会・政府ですが、新しく法律を作る、新

しく法律に体現化されるような規制を設ける、あるいは政府が持っている手段

でいうと税制や補助金などがあります。市場の失敗、例えば、環境問題での対

応でいうと、 様々な外部性、 負の外部性への対応には、 いわゆる教科書的な色々

な対応法があり、 そうしたものは、 政府が行い得る手段であるということです。

逆にいうと、日本銀行はその手段を持っていないので、 日本銀行が

持っている手段、つまり経済に対して流動性を供給する部分、そして考査・モ

ニタリングを通じて金融システムの安定に配慮するという部分で何ができる

のか、という問い立てになると思います。ですから、金融にかかる部分で日本

銀行が影響を及ぼし得る手段があるというところについては、今回の手段に限

らず、今後、更に色々と状況が変わってくれば対応するということはあるとは

思います。もっとも、それはそれとして、税制、補助金、あるいは規制といっ

たところに関しては、政府あるいは規制監督官庁が行うという分業関係になる

かと思います。

以上

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