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6月19日(金) [PDF 418KB]

SPEAKER) 高田 創 ( 〃

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2026.6.19

日本銀 行

政策委員会

金融政策決定会合

議事要旨

(2026年4月27、28日開催分)

本議事要旨は、日本銀行法第 20 条

第1項に定める 「議事の概要を記載し

た書類」として、 2026 年6月 15、16

日開催の政策委員会・金融政策決定会

合 で 承 認 さ れ た も の で あ る 。

公表時間

6月19日 (金) 8時50分

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合(引用は

含まれません)は、予め日本銀行政策委員会室までご相談ください。

引用・転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

1

(開催要領)

1.開催日時: 2026 年 4 月 27 日(14:00~15:59)

4 月 28 日( 9:00 ~11:57)

2.場 所:日本銀行本店

3.出席委員:

議長 植田和男 (総 裁)

氷見野良三 (副 総 裁)

内田眞一 ( 〃 )(注)

中川順子 (審議委員)

高田 創 ( 〃 )

田村直樹 ( 〃 )

小枝淳子 ( 〃 )

増 一行 ( 〃 )

浅田統一郎 ( 〃 )

(注)内田委員は、電話会議により出席。

4.政府からの出席者:

財務省 前田 努 大臣官房総括審議官(27 日)

中谷真一 財務副大臣(28 日)

内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(27 日)

水田 豊 大臣官房審議官(経済財政運営担当)(28 日 9:00

~9:13)

城内 実 経済財政政策担当大臣(28 日 9:14~11:57)

(執行部からの報告者)

理事 清水誠一

理事 神山一成

理事 諏訪園健司

理事 中村 康治

企画局長 奥野聡雄

企画局政策企画課長 井出穣治

金融機構局長 鈴木公一郎

金融市場局長 峯岸 誠

調査統計局長 川本卓司

調査統計局経済調査課長 須合智広

国際局長 近田 健

(事務局)

政策委員会室長 福田英司

政策委員会室企画役 三浦幸大

政策委員会室企画役補佐 梶谷 勉

企画局企画役 八木智之

企画局企画役 北原 潤

企画局企画役 伊藤雄一郎

2

Ⅰ.金融経済情勢 に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節については、前回会合( 3月 18、19 日)で決定された

金融市場調節方針 (注)に従って運営し、 無担保コールレート (オーバー

ナイト物)は、 0.726~0.728%のレンジで推移した。

この間、長期国債の買入れについては、 2026 年3月は月間 2.9 兆円

程度の買入れを行った。 2026 年4月は、 2025 年6 月の会合で決定さ

れた 減額計画に沿って、 月間の買入れ額を 2,000 億円程度減額し、月

間 2.7 兆円程度の買入れを行っ た。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、翌日物金利のうち、無担保コールレートは

0.75%程度で推移した。GCレポレートは、無担保コールレート並み

の水準で推移した。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)

は、 概ね横ばい となった 。

わが国の株価(TOPIX)は、 米欧 の株価に連れて上昇したが、

原油価格上昇に伴う 交易条件の悪化などが意識されるもとで 、上昇幅

は米欧 の株価対比小幅となった。 長期金利( 10 年物国債金利)は、 緊

迫した中東情勢によるインフレ圧力の高まりや、不確実 性を意識した

投資家の様子見姿勢の強まりなどから、上昇した。 国債市場の流動性

指標をみると、総じて改善方向の 動き が継続して いる。 為替相場をみ

ると、円の対ドル相場 は概ね横ばいとなった一方、 円の対ユーロ相場

では、 円安方向の動きとなった 。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、 中東情勢の影響もあって 一部に弱めの動きもみ られる

が、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、 一部に弱めの

動きもみ られるが、 総じてみれば堅調な 成長 を維持 している。欧州経

済は、 一部に弱めの動きもみられるが 、内需を中心に底堅さを維持し

ている 。中国経済は、 消費に力強さを欠きつつも、輸出の増加などに

支えられて 、このところ持ち直している 。中国以外の新興国・資源国

経済は、 一部に弱めの動きもみられるが、 総じてみれば緩やかに改善

している。

(注)「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推移するよう促す。」

3

先行き の海外経済は、 当面 、中東情勢等の影響 が下押し圧力と なる

ものの 、その後は、 中東情勢の影響が和らぐとの前提のもとで、 グロー

バルなAI関連需要にも支えられて 、緩やかな成長を続けると考えら

れる。 先行きの見通しを巡っては、 当面、中東情勢の今後の展開と、

それが国際金融市場や 世界 経済に与え る影響について注意が必要な

ほか、引き続き 各国の 通商政策の影響 やAI関連のグローバルな需要

動向 など について、不確実性が高い。

海外の金融市場をみると、 米国とイランの停 戦交渉の進展期待など

を受けて、市場 センチメント は幾分 改善 して いるものの、先行きの不

透明感が意識された状況が 続いている 。米国 や欧州の長期金利は、 緊

迫した中東情勢によるインフレ圧力の高まりと景気後退の双方が意

識され るもと、 概ね 横ばいとなった 。米国や欧州 の株価は 、中東情勢

の緊迫化を受けて下落する場面もみられたが、 AI関連 の好調さや米

国とイランの停戦交渉の進展期待などから、期間 を通じてみれば、上

昇した 。この間、新興国通貨は、 米国・イラン間の一時停戦合意を受

けた 市場 センチメントの改善を背景に、上昇した。 原油価格は、 事実

上のホルムズ海峡封鎖が続く中で、 引き続き高値圏で推移した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、 中東情勢の影響もあって 一部に弱めの動きもみら

れるが、緩やかに回復している。先行きについては、 当面は、 グロー

バルなAI関連需要の堅調さや政府による各種施策が下支えとなる

ものの、 物流の停滞による生産調整の動きや、エネルギー・原材料価

格の高騰による交易条件悪化が下押しに作用することから、景気は

いったん減速すると見込まれる。

輸出 は、 基調としては横ばい圏内の動きを続けている。先行きは、

グローバルなAI関連需要の堅調さは情報関連や資本財を中心に押

し上げ要因となる一方、中東情勢の不安定化を受けて、中東向けの自

動車輸出が減少するほか、素材産業の稼働率低下も関連財輸出の下押

しに作用することから、当面は、横ばい圏内の動きを続けると考えら

れる。

鉱工業生産は、 やや長い目でみれば、 横ばい圏内の動きを続けてい

る。先行きは、 グローバルなAI関連需要の堅調さや経済対策にも支

えられた設備投資需要の底堅さは下支え要因となるものの、中東情勢

の不安定化に伴う素材産業や輸送機械の生産調整が下押し要因 とし

て作用すること から、全体としては横ばい圏内の動きを続けると見込

4

まれる。

企業収益は、 製造業において米国の関税政策による下押しの影響が

みられるが、全体としては高水準を維持して いる。 業況感 は、中東情

勢の影響を受けつつも良好な水準で推移している。 こうしたもとで、

設備投資は 、緩やかな増加傾向にある。先行きの設備投資は、 既往の

投資案件の受注残を解消する動きが下支えに作用するものの、エネル

ギー価格上昇を受けた企業収益の悪化や建設コストの上昇による下

押し圧力が強まってくることから、増勢は徐々に鈍化していく可能性

が高い 。

個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善

を背景に底堅く推移している。 消費活動指数 (実質・旅行収支調整済)

をみると、 10~12 月に小幅に 増加したあと、 1~2月の 10~12 月対

比も、若干 の増加 となるなど、このところ緩やか な増加 傾向にあ る。

企業からの聞き取り調査や 業界統計、 高頻度データに基づくと、 3月

以降の個人消費は、 前月 から 増加 して いる とみら れ、中東情勢による

悪影響が本格的に顕在化している様子は 、これまでのところ 窺われな

いが、先行きの物価上昇を予想する消費者による前倒し需要が一部に

影響している 可能性には留意する必要があ る。消費者マインドは、 食

料品価格の上昇率低下や 政府によるエネルギー負担緩和策を背景に

改善してきたが 、足もとでは、 不安定な中東 情勢 やガソリン価格上昇

を受けて急激に悪化している 。先行きの個人消費は、 当面は、既往の

経済対策や燃料油補助金の再開といった施策は下支えとなるものの、

エネルギー価格を中心とした物 価上昇による実質購買力の低下を主

因に、減速した状態が続く可能性が高い。

労働需給は、引き締まった状態が続いている。そうしたもとで、 雇

用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数 は、伸び率が低下

している 。一人当たり名目賃金は、 振れを伴いつつも、 着実な上昇を

続けている 。先行きの雇用者所得は、 振れを伴いつつも 、当面、現状

程度のペースで着実な増加を続けると見込まれる 。

物価面について、商品市況 をみると 、原油価格 は中東情勢の不安定

化を背景に急激かつ大幅に上昇したあと、足もとでは幾分値を戻して

いるが 、きわ めて大きな振れを伴いつつ高値圏での推移が続いている 。

銅価格も、大幅に上昇したあと、高値で揉み合いと なっている。 この

間、食料 の市況 価格は 横ばい圏 内で推移 している 。国内企業物価の 前

年比は、既往の 原油価格下落 や米などの食料品価格上昇ペースの鈍化

を主因に 低下 傾向にあ ったが 、足もとでは 中東情勢を受けた石油・石

炭製品や化学製品の値上がりを主因に、上昇率がはっきりと高まって

5

いる 。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、人件費上

昇等を背景に高めの伸びを続け ているが 、前年度 にみられた値上げの

一巡などから上昇率が低下 傾向にあ り、足もとでは2 %台後半 となっ

ている 。消費者物価(除く生鮮食品 )の前年比は、 賃金上昇の販売価

格への転嫁の動きが続くもとで 、米などの食料品価格上昇の影響 も

あって 2% を上回って 推移してきたが、足もとでは、政府によるエ ネ

ルギー負担緩和策の効果などから、1% 台後半 まで低下 している。予

想物価上昇率は、緩やかに上昇している。先 行きの消費者物価 の前年

比は 、目先は米などの食料品価格の上昇率低下や政府による エネル

ギー負担緩和策は下押し要因となるものの、中東情勢を受けた原油価

格等の上昇の影響が強まっていくのに伴い、再びプラス幅を拡大して

いくとみられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、緩和した状態にある。

実質金利は、マイナスで推移している。企業の資金調達コストは、

上昇している。資金需要面をみると、経済活動の回復や企業買収の動

きなどを背景に、増加している。資金供給面では、企業からみた金融

機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好

な発行環境となっている。 こうした 中、 銀行貸出残高の前年比は、5%

台前半となっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、 6%台半

ばとなっている。企業の資金繰りは、良好である。企業倒産は、 横ば

い圏内で推移 している。

この間、マネーストックの前年比は、 2%程度 となっている 。

(3)金融システム

わが国の金融システムは 、全体として安定性を維持している。

大手行の収益は、 国内 貸出金利息 を中心とする資金利益の増加 など

を背景に、 増加 している。この間、信用コストは、低水準となってい

る。そうしたもとで、 自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上

回っている。

地域銀行の収益は、 資金利益の増加など を背景に 、増加 している。

この間、信用コストは、低水準となっている。 そうしたもとで、 自己

資本比率は、引き続 き規制水準を十分に上回っている。

金融循環面では、金融システムレポートで示しているヒートマップ

を構成する全 14 指標 のうち 12 指標 がトレンドから大きな乖離のない

状態 となって いる 。金融ギャップは、 ひと頃と比べて プラス幅が縮小

6

した状態が続いて おり、現在の 金融活動に 大きな不均衡 はみられ てい

ない。ただし、 不動産 価格や株価といった資産価格の動向には 引き続

き留意が必要であ り、今後も、 金融活動が実体経済活動から大きく乖

離することがないか、注視する必要がある。 また 、今後の中東情勢の

展開や、 AI関連投資の収益性、 海外ノンバンク部門の動向 等が、 様々

な経路を通じて 金融システムに及ぼす影響については丁寧にみてい

く必要がある。

Ⅱ.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済・物価情勢の現状

国際金融資本市場 について、委員は、 中東情勢の緊張緩和への期待

感から 株価が反発するなど、 市場の センチメントは幾分改善している

ものの、先行きの不透明感が意識された状況が続いている との見方 で

一致 した。 一人の委員は、 3月の段階では 中東情勢の 先行きが 全く 見

通せなかったが、 最近では 停戦に向けた動きもあり、ある程度予測で

きるリスクに転化した と受け止められるようになったこ とが、多くの

国々 の株価 上昇 につながっている と指摘した 。

海外経済 について、委員は、 中東情勢の影響もあって一部に弱めの

動きもみられるが、総じてみれば緩やかに 成長している との認識を共

有した。 何人か の委員は、 世界経済は 、AI関連需要 の拡大 や拡張的

な財政政策 等により 、堅調 に推移している と指摘 した 。このうちの一

人の委員は、 原油高による経済の下押し圧力はあるものの、多くの国

で拡張的なマクロ経済政策が採用されていることを踏まえると、本年

の世界経済は回復に向けた 転換 局面にあると 述べた 。ある 委員は、 中

東へのエネルギー依存度が高いアジア経済の動向を とくに 注視する

必要がある が、PMI サプライヤー納期指数等の指標 からは 、グロー

バル サプ ライチェーン は、今のところ大きな 影響 を受けていないよう

にみえる との認識を示した 。

米国経済について、委員は、 一部に弱めの動きもみられるが、総じ

てみれば堅調な成長を維持して いる との認識で一致した。 ある 委員は、

AI 関連 需要の拡大 や企業・家計における関税負担の緩やかな転嫁と

いった 要因に加え 、最近では 潜在成長率 も上昇しているとみられ 、経

済成長 が底上げ され ている との 見方を示し た。

欧州経済について、委員は、 一部に弱めの動きもみ られるが、内需

を中心に底堅さを維持している との見方を共有した。

7

中国経済について、委員は、 消費に力強さを欠きつつも、輸出の増

加などに支えられて、このところ持ち直している との見方を共有した。

中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、 一部に弱めの動

きもみられるが、 総じてみれば緩やかに改善している との認識を共有

した。

わが国の 金融環境 について、委員は、緩和した状態にあるとの認識

で一致した。 複数の 委員 は、長期金利は大きく上昇しているが、 経済

活動に及ぼす影響が大きい短中期ゾーン の金利は、実質ベースでみて

引き続きはっきりとしたマイナスで推移しており、 金融環境 は緩和的

な状況 が続いていると の認識を示した 。このうちの一人の委員 は、企

業等の資金需要は増加を続けており、3月短観でみても 、金融機関の

貸出態度は引き続き積極的である と指摘した。 別の一人の委員は、マ

イナスの実質金利が続いていることに伴い貸出に動意がみられて い

ることや 、不動産を中心 に資産価格 が上昇 していることに注意が 必要

であると述べた。 ある委員は、 前回の利上げから4か月が 経過したが 、

企業ヒアリングや短観、貸出動向アンケート調査等をみ ると 、金融緩

和の度合いが縮小 し、景気刺激効果が弱まった気配は、 現時点で ほと

んどみ られ ていない との認識を示した 。この 間、一人の 委員は、 中東

情勢の金融 環境 への影響はこれまでのところ限定的で、 わが国の金融

システムは、総じて安定性を維持しているとの見解を示した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、

わが国の経済・物価情勢 に関する議論が行われた。

わが国の景気 について、委員は、 中東情勢の影響もあって 一部に弱

めの動きもみられるが、緩やかに回復している との認識を共有した。

複数 の委員 は、石油備蓄 の存在 に加えて 、原材料の代替調達に向けた

各種 取り組みが 進められている こともあり 、中東情勢の影響は、 これ

までのところ、輸出や 設備投資、個人消費などのハードデータに は大

きく 表れていない との認識を示し た。このうちの一人の 委員 は、企業

や家計のマインド指標は、原油価格上昇の影響で慎重化しているもの

の、政府 の呼びかけなどもあり 、国内 の過剰 な反応 や支出活動の大幅

な変動は抑制されて いると指摘した。

輸出や鉱工業生産について、委員は、 基調としては横ばい圏内の動

きを続けている との認識で一致した。

設備投資について、委員は、 企業収益が全体としては高水準を維持

し、業況感 も中東情勢の影響を受けつつも 良好な水準で推移している

もとで、緩やかな増加傾向にある との認識を共有した 。ある 委員は、

8

3月 短観 の結果等 をみると、企業収益 の好調 さが続くもと 、今年 度の

設備投資計画も堅調であり、 企業部門は、これまでのところ1月の展

望レポート の見通しに沿った動きであると 指摘 した。

個人消費について、委員は、 物価上昇の影響を受けつつも、雇用・

所得環境の改善を背景に底堅く推移している との認識で一致した 。一

人の 委員は、 家計のセンチメント は、原油価格上昇の影響で 慎重 化し

ているものの、 これまでの 賃金上昇 と今後の上昇継続 期待 に加え、 先

行きの物価上昇を見込んだ 支出 前倒し の動き もあり 、足もとの消費に

は強さ がみられ るとの見方を示し た。

雇用・所得環境について 、委員は、 緩やかに改善している との見方

を共有した。 多く の委員は、 春季労使交渉 (春闘) における連合の 集

計結果をみると、 大企業だけでなく、相対的に 規模が小さい 企業にお

いても、3%台半ばのベースアップ率 となっ ており、これまでのとこ

ろ、幅広い企業でしっかりとした賃上げが実現して いる と指摘した。

このうちのある委員は、 4月の支店長会議で は、今後の 中東情勢次第

では中小・零細企業の 賃上げスタンスが 慎重化 する可能性 があるとの

声も一部に 聞かれたが 、多くの先は、 人材確保の 必要性 や最低賃金上

昇の影響から 、昨年並みの上昇 を見込 んでいるとみられると付け加え

た。

物価面 について、委員は、 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、

賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、米などの食料品価

格上昇の影響 もあって 2%を上回って推移してきたが、足もとでは、

政府によるエネルギー負担緩和策の効果などから、1% 台後半 となっ

ている との認識で一致した。 ある 委員は、 期初の値上げについて、 報

道等によれば、 食料品は比較的落ち着いているものの、人件費や物流

費の上昇を 販売 価格に転嫁する動きが続いているほか、外食や公共交

通などでも値上げの動きが 広がってきて おり、企業の積極的な価格設

定行動が続いていることが窺われると 述べた 。複数の委員は、 3月 の

輸入物価 の前年比プラス幅が拡大し ているだけでなく 、エネルギー関

連を主因に 国内企業物価の 伸び率が拡大して いるほか、 企業向けサー

ビス価格も 外航貨物輸送の伸びが目立つ など、中東情勢の影響は、 既

に国内の 物価面に 表れ 始めていると の見方を示した。 一人の委員は、

米を使わない加工食品の価格上昇率は 、足もと 若干落ち着いたとはい

え、依然 5%程度 の高い 伸びを示していると 述べたうえで、 この先、

輸入原材料の高騰に伴い、再び上昇に向かう可能性が高いとの認識を

示した。 この間、予想物価上昇率について、 委員は、 緩やかに上昇し

ているとの見方で一致した。 ある 委員は、 中東情勢の緊迫化以降 、3

9

月短観における企業の物価見通し や市場参加者のインフレ期待を示

すブレーク・イーブン・インフレ率など、中長期の 予想物価上昇率 は

幾分 上昇して おり、今後の動向を注視する必要があると指摘 した 。別

の一人の委員は、 企業や家計の予想物価上昇率は、既に概ね2%に達

しているとの認識を示したうえで、 ここ数か月、 消費者物価 (除く生

鮮食品 )の前年比 伸び率 が縮小 してきた 中にあって も、予想物価上昇

率が低下しなかったことは 、デフレマインドから インフレマインドへ

の転換 を端的に示していると の見方を示した 。

2.経済・物価情勢の展望

2026 年4月の「経済・物価情勢の展望」 (展望レポート)の作成に

あたり 、最初に、委員は、 中心的な見通しの前提 について議論した。

委員は、 中東情勢 を巡って は、なお不透明な状況が続いており、 今後

の帰趨や、それがわが国の経済・物価に及ぼす影響について様々な見

方が存在する中にあっては、 委員の間である程度議論の前提を揃える

ことが、日本銀行としての中心的な見通しを検討し、その結果を対外

的にわかりやすく伝える観点から望ましいとの認識で一致した。その

うえで、委員は、今回の展望レポートの中心的な見通しは、今後、 中

東情勢 の影響が和らぐもとで、 原油価格が、 先物市場で想定されてい

るような かたち で下落し、サプライチェーンの大規模な混乱が生じな

いことを共通の前提として作成することが適当であるとの認識を共

有した。 また 、委員は、 今後の 中東情勢の帰趨次第では、 経済・物価

の見通し が大きく 変化 する可能性がある との認識 も共有 した。

次に、 委員は、 これらの前提のもとで、 経済情勢の先行きの中心的

な見通し について議論を行った。 委員は、 わが国経済について、①2026

年度は、原油価格上昇に伴う交易条件の悪化などから、成長ペースは

減速するものの、 企業部門における高水準の収益や 政府による各種施

策、緩和的な金融環境 などが経済を下支えするため、緩やかな成長を

続ける 、②2027 年度以降は、原油高のマイナスの影響が減衰し、所得

から支出への前向きな循環メカニズムが徐々に強まっていくことか

ら、成長率を緩やかに高めていく との認識を共有 した。

中東情勢がわが国経済に及ぼす影響について、 委員は、 原油価格の

大幅な上昇 、とりわけドバイ原油の高騰 は、中東産の原油への依存度

が高いわが国の交易条件の悪化につながり、エネルギーや原材料の価

格上昇を通じて、企業収益や家計の実質所得に対する下押し要因とし

て作用するとの見方を共有した。 一方で 、委員は、 企業部門 における

高水準の収益や、しっかりとした賃上げ の実現に加え、政府による各

10

種の負担緩和策や緩和的な金融環境 など を踏まえると 、中東情勢 に伴

う下押し圧力に対して、わが国経済はある程度の耐性を有している と

の認識を共有した。 この点に関し、 ある委員は、企業 によるコスト増

加分の 価格転嫁や 、ガソリン補助金 等を通じた家計への所得移転策 な

どによって 、交易条件悪化による負担増は、 企業・家計・政府の 各部

門に分散され ていく との見方を示した。 別のある委員は、石油・化学

産業では輸入物価が大幅に上昇している一方、IT産業では強いグ

ローバル の需要を背景に円建ての輸出価格が上昇するなど、産業別の

違いが生じる中、 わが国の 交易条件 に及ぼす 影響については、 全体 の

状況 をみていく必要があると述べた。 別の一人の委員は、供給制約へ

の不安は根強いが、過去の原油価格高騰時の経験を振り返ると、わが

国は、購入価格の引き上げにより量を確保してきたとの見解を示した。

わが国の輸出や鉱工業生産について、委員は、 グローバルなAI関

連需要の強さが続くものの、中東情勢の影響により、中東 向け自動車

輸出等に下押し圧力がかかることから、当面は横ばい圏内の動きにな

ると の見方で一致した。 その後は、中東情勢の影響が和らぎ、海外経

済の緩やかな成長が続く中、緩やかに増加していくとの 認識 を共有し

た。

設備投資について、委員は、 交易条件悪化の影響を受けて 増勢は鈍

化すると見込まれるが、既往案件の受注残の存在に加え、政府の経済

対策や緩和的な金融環境が下支え要因として作用すると の認識を共

有した。その後は、 人手不足対応の省力化投資や能力増強投資に加え、

貿易構造やサプライチェーンの変容に適合するための投資案件など

も押し上げ要因となり、増加傾向を維持するとの見方を共有した。 あ

る委員は、 交易条件の悪化に対し、 高水準の企業収益 は設備投資を進

めるうえでのバッファーに なるとみているが、米国の通商政策や足も

との中東情勢 が業種 ごとに異なる影響を及ぼし得る 中、今後、 個別企

業の投資 活動に どのような 変化 が生じるかを確認 していく必要があ

ると 述べた 。

個人消費について、委員は 、賃金の増加に加えて、政府による各種

施策を通じた家 計への所得移転が下支え要因となるものの、エネル

ギーを中心とした物価上昇の影響から、横ばい圏内の動きになると の

認識 で一致した 。その後は、物価の上昇ペースが徐々に落ち着いてい

くと見込まれる中、緩やかな増加基調に復していくとの見方を共有し

た。ある委員は、 今後、仮に ガソリンの 節約 が呼びかけられるように

なった場合には 、小口の 配送に影響 が生じ、 Eコマースの活動を 下押

しする 可能性がある 点には留意を要する と指摘した 。

11

雇用者所得について、委員は、 当面、現状程度のペースで増加を続

けたあと、見通し期間中盤には、企業収益の悪化からややタイムラグ

を伴って、いったん伸びがやや低下すると の認識で一致した。また、

見通し期間終盤にかけて は、企業収益の回復 を反映して 、増勢も幾分

強まっていく との見方を共有した。 ある委員は、 中東情勢の 影響を受

ける中 、企業部門に蓄積された 高水準の企業収益が 、賃上げ を進める

うえで のバッファーとして 、どの程度 機能し得る かに注目している と

述べた 。一人の委員は、 中東情勢に伴う 収益 悪化 により、とく に中小・

零細企業 において、 従業員の終身雇用を守ることを優先し、賃上げを

控える動き が生じないかどうかには 留意 が必要との 認識を示した 。

こうした議論を経て、委員は、 中心的な成長率の見通しは、 1月の

展望レポート時点と比べる と、原油価格 の大幅な 上昇を受けて、 2026

年度 が下振れている との認識を共有した 。

続いて、委員は、 物価情勢の先行きの中心的な見通し について議論

を行った。委員は、 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、 賃金上

昇を販売価格に転嫁する動きが続く もとで、 原油価格上昇が、エネル

ギー価格や財価格を中心に押し上げ方向に作用することから、 2026 年

度は2%台後半になると予想され、その後は 、原油高の影響が減衰し

ていくもとでプラス幅を縮小していき、 2027 年度は2%台前半、 2028

年度は2%程度になるとの 認識 を共有 した。 また、 委員 は、 この間、

人手不足感の強い状況が続く中で、賃金と物価が相互に参照しながら

緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上

昇率は上昇していく との見方で一致した。 そのうえで、 大方 の委員は、

消費者物価の 基調的 な上昇率は 、徐々に高まっていくと予想され、

2026 年度後半から 2027 年度にかけて 「物価安定の目標」と概ね整合

的な水準 となり、その後も同程度で 推移すると の認識 を共有 した。こ

れに対して、 一人の委員 は、物価が上がらないノルムが解消し、賃金

が上昇する中で、 基調的な物価上昇率も含め、消費者物価は、既に概

ね「物価安定の目標」 に達する水準にあると の認識を示した 。また、

別の ある委員 は、春闘にお ける 3年連続で の高い賃上げ 率の実現 に加

え、特殊要因を除いた 消費者物価 の前年比が 2%台 の伸びを 続けてい

ること や、中長期の予想物価上昇率 が概ね2%に達していることを踏

まえると、 基調的な 物価 上昇率は 、概ね2%程度 に達し たと判断して

良い状況にある との見 解を示した。

消費者物価の見通しについて、 多くの 委員 は、原油は、様々な産業

の上流 から下流にかけて広く原材料として使われているため、原油価

格の上昇は、エネルギー価格だけでなく、幅広い財を中心に価格を押

12

し上げると の見方を示した うえで、現在のわが国では、企業の賃金・

価格設定行動が積極化して いることなどから 、原油価格上昇を起点と

する価格転嫁のスピードは、これまでよりも速くなっている可能性が

高いとの認識を示した。 このうちの一人の委員は、 3月短観をみると、

製造業、非製造業とも、販売価格判断DIが上昇しており、 仕入価格

の上昇を 速やかに 販売価格に転嫁 しようと する 姿勢が窺われると 付

け加えた 。別の ある 委員 は、事業者 向け電力の価格設定フォーミュラ

の見直しや化学産業におけるサーチャージ制の導入 、中小受託取引適

正化法の施行 等など、最近 の取引実務 や法制度の変更も、 価格転嫁 を

速める方向に作用している と指摘した。 また、この 委員は、原油高に

よる経済下押しがあるとしても、その実現には時間 を要 するほか、海

外のマクロ環境のサポートもあるだけに、時間軸上、まずは物価・イ

ンフレ予想の上昇が生じる可能性が高いと述べた。

こうした議論を経て、委 員は、 消費者 物価(除く生鮮食品) の中心

的な見通しは、前回の展望レポート時点と比べると、原油価格上昇の

影響から、 2026 年度が大幅に上振れているほか、 2027 年度も幾分上

振れているとの認識を共有した。

基調的な物価上昇率 について、 何人かの 委員は、 その水準が2%に

近づ いている中 、 「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観

点からは、 2%程度の水準で定着するかどうかも確認していく必要が

あるとの認識を示した。 中東情勢 が物価の基調に 及ぼす 影響 について、

ある 委員は、 原油価格が 迅速に 元に 戻ればあまり 影響は ない と考えら

れる が、原油等の供給回復が緩やかとなる今回の展望レポートの 想定

を前提 にすると 、景気減速に伴う 物価の 下押し圧力と、予想物価上昇

率の上昇を通じた上押し圧力の両方 が考えられる との 見方 を示した 。

一人の 委員は、わが国のインフレ予想は適合的に形成される傾向 があ

ること を踏まえると、中東情勢を受けた今年度の物価上昇は、基調的

な物価上昇率の上振れに つな がり得ると指摘した。 別のある 委員 は、

燃料費の高騰で 国内物流費 が更に上昇 することは避けられず、これに

よって 基調的な物価上昇率が2%に 届く 時期 が早まることが考えら

れる と述べた。

次に、委員は、 経済・物価の見通しのリスク要因 (上振れ・下振れ

の可能性)について議論を行った。委員は、 リスク要因としては 様々

なものがあるが、当面は、今後の中東情勢の展開が、金融・為替市場

やわが国の経済・物価に及ぼす影響をとくに注視する必要がある との

認識で一致 した。

そのうえで、 中東情勢を巡るリスク として、 委員は、① 中東情勢を

13

巡る混乱が 長期化し、原油価格が高止まりするリスク、②サプライ

チェーンの大規模な混乱が生じ、わが国企業の生産活動に大きな影響

をもたらすリスク 、の2点を挙げた。 その一方で、委員は、こうした

シナリオとは逆に、 中東情勢を巡る緊張が急速に和らぎ、市場の見方

以上に原油価格が速いスピードで下落する可能性もあると指摘した 。

委員は、 原油価格が高止まり した場合には、 交易条件の悪化など を

通じた経済へ のマイナスの影響が大きくなるリスクがある一方、物価

面につ いては、上振れリスクの方が大きいとの認識を共有した 。ある

委員は、 戦闘が停止したとしても、 ホルムズ海峡が商業的に航行可能

になるまでには時間を要するため、原油価格が しばらくの間 高止まり

するシナリオ も視野に入れる べきであると指摘した。 別のある 委員は、

こうしたシナリオが実現した場合には、 企業収益や家計の実質所得が

大きく下振れることで、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上

昇していくメカニズムが弱まる可能性がある ものの 、実際には、 原油

価格の上昇は、エネルギー価格だけでなく、幅広い価格において物価

を押し上げる上振れリスクの方が大きいと の見解 を示した 。この間、

一人の 委員は、 ロシアによるウクライナ侵攻後の 資源価格高騰時と比

べると、企業・家計のインフレ予想の高まり、企業の価格設定 行動の

積極化、労働市場のタイト化 といった変化が生じていると指摘 したう

えで 、物価の 中心 的な 見通しが大きく上方修正される中、 原油価格が

高止まりした場合には 、物価の更なる上振れリスクにつながるとの認

識を示した 。この委員 を含む何人かの委員 は、わが国の インフレ予想

は、米欧と異なり 物価目標に アンカーされて おらず、実際の物価変動

の影響を受けやすい こと など を踏まえると 、中長期的な予想物価上昇

率や基調的な物価上昇率 が2%を超えて上振れ るリスクも 懸念 され

ると述べた 。別の 一人の委員は、長年、脱デフレに向け金融財政政策

が総動員さ れてきたもとで、政府の各種施策が制度として定着し、賃

上げ・価格転嫁の慣性が働く中 で、原油価格上昇により 物価が更に上

振れるリスクが存在すると 指摘し た。

委員は、 サプライチェーンの大規模な混乱が生じ た場合には、経済

の大幅な下振れにつながる可能性があり、 これが 基調的な物価上昇率

を下押 しする 方向に作用することも考えられる一方、供給制約が顕在

化すると、物価の上振れリスクが一段と高まるとともに、基調的な物

価上昇率の押し上げにもつながる可能性があるとの認識 を共有 した。

ある委員は、 サプライチェーンへの影響については、 原油 などの 供給

制約の状況とその長さに依存するだけでなく、 中東諸国 に損害が広が

ることに伴うその他の資源供給を通じた影響も 相当にあると述べた。

14

一人の委員は、 石油化学製品の量的 制約が生じ る可能性もあり 、これ

が経済を どこまで 下押しするのかを見通すことは難しいが、基幹産業

である自動車 や、データセンタ ーの設営 など AI関連にも 影響が 及ぶ

かどうか についても 注意してみていく必要がある と指摘した 。別の 一

人の 委員は、 大規模な数量制約が長期化するシナリオでは、 賃金 と物

価が相互 に参照 しながら緩やかに上昇していく メカニズムが 途切れ 、

物価の基調が物価安定の目標を大きく下回る 可能性 もある との 認識

を示し た。これに対して 、ある委員は、 中東情勢の影響が価格面だけ

でなく数量面にも及び、供給制約が顕在化した場合には 、非常に強い

物価 上押し圧力 になる との見解を示した。

委員は、 原油高を起点とする物価上昇の 二次的波及 の捉え 方とその

程度について も議論した。 何人かの委員は、二次的波及 という言葉は

多義的であり、 供給ショックに伴う一時的・部分的な物価上昇が、 様々

な財・サービスの 価格に 広く波及していくこと や、賃上げ率や予想物

価上昇率、あるいは基調的な物価上昇率の上昇に つな がる ことなど、

様々な 意味で 使われて いるほか、 波及の有無を判断する尺度について

も多様な 考え方がある と指摘した。 この点に関し、 ある委員は 、二次

的波及 の有無を 判断する 際には、 原材料コスト の上昇に直面する企業

の収益マージン が改善 したり、 物価上昇の波及効果から 労働生産性 を

上回 るかたち で賃金が上昇するケース、すなわち、 物価上昇 がユニッ

ト・プロフィット やユニット・レーバー・コスト の上昇 につな がるか

否かが ひとつの ポイント になるのではないか、 との見方 を示した。そ

のうえで、この委員は、 現状、 企業収益が高水準にあることを踏まえ

ると、企業がコスト上昇分以上に価格転嫁を進める可能性はさほど高

くないと考えられると 述べた 。これに対し、 何人かの 委員は、 ここ数

年、企業の価格設定行動が積極化する 中、足もとの原油高に 伴う コス

ト上昇 分だけでなく 、過去の 人件費上昇 分も価格 転嫁する動きが出て

くる 可能性は高いと指摘したうえで、こうした動きが 広がれば、人々

のインフレ期待が上昇し、基調的な物価上昇率も 上振れる 可能性が高

いとの見方を示した 。次に、物価上昇の賃金への波及について、何人

かの委員は、ここ数年、現実の物価上昇率が2%を大きく上回る中に

あっても、 実際の賃上げ率 は物価安定目標の 2%と概ね整合的な 水準

で決着 していることなど を踏まえると、 わが国において、 賃金と物価

がスパイラル的に上昇 していく 可能性は高くないとの認識を示した。

これに対して、 何人か の委員は、近年 、デフレ ノルムの解消とともに、

物価上昇が賃金に波及 する動きが強まっている ことを踏まえると、程

度問題ではあるが、物価と賃金の上昇率がともに上振れるリスクに は

留意が必要であるとの認識を示した。 別のある委員は、今次局面の金

15

融財政環境や価格転嫁・賃上げの動向をみると、第一次石油危機時ほ

どではないにせよ、賃金と物価の高騰を抑制した第二次石油危機時と

異なり、原油価格上昇を起点とした二次的波及が生じやすくなってい

ると 指摘した。 こうした議論を踏まえたうえで、 一人の委員は、 デフ

レノルムが解消し、足もと基調的な物価上昇率 が2%に近づい てきて

いるが、今回の供給ショックにより、これが 更に上振れ ることがない

かどうかが、 二次的波及を議論するうえでの重要なポイントであると

の見解を示し た。

この間、 委員 は、中東情勢以外 の主な リスク要因 として、①AI関

連需要を含む海外の経済・物価動向、②今後の為替相場の変動がわが

国の経済・物価に及ぼす影響、③わが国を巡る様々な環境変化が企業

や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響、の3点を挙

げた。 ある委員は、米国 について は、 本年秋に 中間選挙を控える中、

現政権の政策運営 とその経済への影響に 関する 不確実性 が高い ほか、

中東情勢の混乱 もあって 、中国 が外需取り込み を企図し て輸出 を拡大

し、欧州やわが国経済 に影響 を及ぼす可能性にも 注意が 必要 との認識

を示し た。一人の 委員は、 1970 年代の 石油危機 を機に 省エネ化が進 ん

だことが 、その後のわが国 経済の構造変化に つな がっ たと指摘し たう

えで 、こうした 変化 は、生産性 の向上 を通じて潜在成長率に影響を及

ぼし得るため、 今回の中東情勢 の影響で、 わが国経済 に構造変化のモ

メンタムが生じるかどうか について、 今後議論 していきたいと 述べた。

リスクバランス について、委員は、各委員が示したリスク評価を全

体として評価すると、 2026 年度を中心に、経済の見通しについては下

振れリスク、物価の見通しについては 上振れリスクの方が大きいとの

認識を共有した。

Ⅲ.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政

策運営に関する議論を行った。

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針 について、 多くの委

員は、 「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0. 75%程度

で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見

解を共有 した。

多くの委員は、中東情勢 を巡って不透明な状況が続く 中、中心的な

見通しが実現する確度は、 これまで ほどは高くないほか 、現時点では、

経済の下振れリスクと物価の上振れリスク の持続性や両者の関係な

どについて も評価が難しい と指摘したうえで 、中東情勢 の帰趨や、そ

16

れが わが国経済・物価に及ぼす影響を 、もう 少し 確認したい との認識

を示した。 このうちの 一人の 委員は、中東情勢はなお不透明であ るが、

ひと 頃より落ち着いて きて おり、今後何らかの進展も期待できると述

べたうえで 、現在は、 急いで利上げをしなければならないほど切迫し

た状況ではない との見解を示した 。ある 委員は、既往の食料品価格上

昇の剥落等もあって、3月の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年

比が引き続き2%を下回っている中、 わが国のインフレ予想 もある程

度は適合的 と考えられる こと から 、今回 は現状維持で良いと の認識を

示した 。別のある 委員は、足もと、 インフレ抑制を優先した利上げは、

雇用・生産などへの悪影響をもたらす可能性が高い 一方、 現在は 利下

げできる環境にもな いとしたうえで 、中東情勢の帰結が不透明である

ことを踏まえると、 金融政策は現状維持が最善である との見解を示し

た。

一方 、何人かの 委員は、今 回の決定 会合で、政策金利 を 1.0%程 度

に引き上げることが望ましいとの見解を示した。 このうちの一人の 委

員は、 中東情勢の影響 が小さく短期に止まる とはいえない中 、原油価

格が上昇するもとでも、株価からみたセンチメントは堅調さを保って

いる ほか 、物価上昇に対する 企業の価格改定行動 は積極化して おり 、

物価の上振れリスク は高いと指摘した。そのうえで、この委員は 、物

価の安定という日本銀行の使命と、国民の暮らしを守り、安心を支え

る観点から、金融緩和度合いを調整することが適当 であるとの見解を

示した。 ある 委員は、「物価安定の目標」 が概ね達成 されている中、 わ

が国の実質政策金利は群を抜いて 世界最低水準にあり 、海外発の 物価

上昇の二次的波及に備えて、マイナスの実質金利の調整を続ける必要

がある との意見を 述べた。 別の一人の 委員は、物価 上振れ リスクが 大

きく拡大する中、将来的に 金融引き締めを余儀なくされる可能性を考

えれば、 今のうちから 政策金利を中立的な水準に少しでも近づけてお

くべきである との見 解を示した 。

先行きの金融政策運営 について、 委員は、 基調的な物価上昇率が

2%に近づいている中、現在の実質金利がきわめて低い水準にあるこ

とを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利

を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当であるとの

認識を共有した。 何人かの 委員は、 経済 の成長ペース がいったん減速

したとしても、基調的な物価上昇率の経路にさほど影 響を及ぼさない

ということであれば、 引き続き政策金利を引き上げていくことになる

ほか、物価の上振れリスクが経済の下振れリスクを大きく上回ると判

断される場合にも、利上げの是非が議論の対象になり得る との見 解を

17

示した 。そのうえで 、このうちの一人の委員は、 緩和度合いの調整を

巡る経路がこれまでよりも複雑化していることを踏まえると、金融政

策運営の指針に関して、 従来の「経済・物価情勢 の改善に応じて」と

いう文言は、このタイミングで変更することが望ましいと 付け加えた 。

金融緩和 度合いの 調整のタイミングやペース について 、委員 は、中

東情勢の展開がわが国経済・物価に及ぼす影響を注視したうえで、経

済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、

検討していく ことが重要で あるとの認識で一致した。

多く の委員は、 基調的な物価上昇率が、 2026 年度後半から 2027 年

度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準となるという 見通

しが実現する 確度が 高まっていると判断できれば、 これまでと同様、

適切なペースで 金融緩和の度合いを調整していくこと が適当である

との認識を示した。 ある 委員は、中心的な見通しに沿って原油の 供給

回復が見通せるように なれば、従来の利上げペースに戻ることが適切

であると述べた。 一人の 委員は、現在の国内産業では、賃金と物価の

強いスパイラルが起こることは考えにくく、また、現在の基調的な物

価上昇率からすれば今の時点で慌てる必要はないが、 中東情勢の影響

による 景気減速の明らかな兆候がない限り、早期に利上げに進むべき

であるとの見 解を示した。 別の ある 委員は、潜在成長率が底堅く推移

し、わが国経済が緩やかに回復するもとでは、先行き物価上昇に伴い

実質金利の低下が生じた場合に、利上げを通じて金利の正常化をより

進めていくことが適切であるとの認識を示した。

ある委員は、今後、中東情勢が国内経済に及ぼす影響がある程度み

えてくることを踏まえると、仮に中東情勢の帰趨が不透明な状況が続

き、中心的な見通しが実現する確度が 高まらない状況であっても 、経

済・物価を巡るリスク の大きさや方向次第では、 次回以降の決定会合

での利上 げの判断は十分にあり得るとの 認識 を示した。 この点に関し、

別の一人の委員は、経済の下振れリスクの主因が物価上昇である場合、

まずは物価の安定に努めて経済の下振れを和らげることが、物価の番

人としての日本銀行の使命であ ると指摘した。 何人か の委員は、中東

情勢の緊迫した状況が長期化し、原油価格が高止ま りするリスクがあ

る場合には、基調物価の上振れを防ぐため、 中立金利に向けて、より

早く 政策金利を 引き上げることが 望ましいとの 認識 を示した。 このう

ちの一人の 委員は、 中立金利までまだ距離があ り、今後、 数か月に一

度のペース で利上げを続ける 必要があると指摘したうえで、 物価の上

振れリスクが高まる場合には、利上げペースを 躊躇なく加速 する必要

があるとの見解を示した。

18

この間、 ある 委員は、 サプライチェーンの大規模な混乱が生じ 、数

量面の制約が深刻化し た場合には、 賃金と物価の相互参照メカニズム

が途切れ 、物価の基調が物価安定目標を大きく下回る リスク もあるた

め、利上げは行わずに 緩和的な金融環境を維持することが望ましいと

の見解を示した。 これ に対し て、別の ある 委員は、 サプライチェーン

の大規模な混乱が生じる場合、 物価には大きな上押し、景気には大き

な下押し圧力がかか ることになるが、こ の場合の中央 銀行 の対応は、

利上げをやめることではなく 、必要に応じ、 市場に潤沢に流動性を供

給して企業の資金繰りを支える ことであると 指摘し た。

こうした議論を経て、委員は、経済の下振れリスクや物価の上振れ

リスクがともに高まることも考えられるが、金融政策運営においては、

とくに、物価上昇率が大きく上振れるリスクが顕在化し、それがその

後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要があ

るとの認識を共有した。

このほか、 ある委員は、円安を阻止するために利上げ をすべきとの

論調 も散見され るが、金融政策は為替ターゲットを目的とするもので

はなく、 変動相場制の下では、為替レートの決定はなるべく 市場 に任

せる べきであ るとの見解を 示した 。また、 一人の委員は、 政策 運営の

考え方に関する市場との対話について、 「 利上げ 前には日本銀行が必

ずシグナルを出す」と受け止められているとすれば、それは好ましく

なく、コミュニケーションのあり方を工夫していく必要があると指摘

した。

以上のような議論を受けて、 議長は、 執行部に対し、 「展望レポート」

で、先行きの金融政策運営についてどのように 記述することが考えら

れるか、案を示すよう指示した。執行部からは、①金融政策運営につ

いては、基調的な物価上昇率が2%に近づいている中、現在の実質金

利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価・金融情

勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整

していくことになると考えている、②そのうえで、調整のタイミング

やペースについては、中東情勢の展開がわが国経済・物価に及ぼす影

響を注視したうえで、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度や

リスクを点検しながら、 検討していく方針である、 ③日本銀行は 、 2%

の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観

点から、適切に金融政策を運営していく、と記述することが考えられ

ると報告した。

執行部の説明に対し、委員は、執行部の示した案は適当であるとの

見解を共有した。

19

Ⅳ.政府からの出席者の発言

内閣府 の出席者 から、以下の趣旨の発言があった。

⚫ 日本経済は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視す

る必要がある。

⚫ 政府は中東情勢を受けて、 緊急的激変緩和措置を講じるとともに、

原油や重要物資の安定供給の確保や流通の円滑化等に努めており、

経済財政運営に万全を期す。

⚫ 強い経済成長と安定的な物価上昇の両立に向け、 適切な金融政策

運営が重要である。日本銀行には、内外の経済情勢等を十分に注視

しつつ、日本銀行法、政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政

府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に

向け、適切な金融政策運営を期待する。

また、 財務省 の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

⚫ 中東情勢について、 政府としては、 関係閣僚の緊密な連携のもと、

経済活動への影響を最小限に抑えるべく、全力で対応し ている。

⚫ 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、中東情勢がわが国経

済に与える影響を含め、内外の経済情勢等を十分に注視し、市場と

のコミュニケーションを図りつつ、2%の物価安定目標の持続的・

安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

Ⅴ.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、 議長 から、委員の 多数 意見を取りまとめるか

たちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され た。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりと

すること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で

推移するよう促す。

20

これに対して、 中川 委員 からは、 中東情勢の不透明感はあるが、経

済情勢を踏まえると 、緩和的な金融環境の下で、物価の上振れリスク

が高いとして 、高田委員 からは、 「物価安定の目標」は概ね達成されて

おり、海外発の物価上昇の二次的波及から国内物価の上振れリスクが

既に高まっているとして、 田村委員 からは、物価上振れリスクが大き

く拡大する中、中立金利に少しでも近づけるためとして、 それぞれ、

以下の議案が提出された。

金融市場調節方針に関する議案(中川委員・高田委員・田村委員案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりと

すること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.0%程度で推

移するよう促す。

金融市場調節方針に関する議案 ( 中川委員・高田委員 ・田村委員 案)

は、採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

賛成: 中川 委員 、高田委員、田村委員

反対: 植田委員、氷見野委員、内田委員、 小枝委員、増委員、

浅田 委員

金融市場調節方針に関する議案(議長案)は、採決の結果、賛成多

数で決定された。

採決の結果

賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、 小枝 委員、 増委員、

浅田 委員

反対: 中川委員、 高田委員 、田村委員

2.対外公表文( 「当面の金融政策運営について」 )

議長 から、対外公表文( 「当面の金融政策運営について」<別紙>)

が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会

合終了後、直ちに公表することとされた。

21

Ⅵ. 「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、 「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討さ

れ、 多数意見が 形成 された。

これに対し、 高田委員 からは、 ①経済の見通しについて、 「グローバ

ルなマクロ環境のサポートやAI関連需要の高まりに加えて、国内企

業部門で高水準の収益が続いてきたことや、政府による各種施策、緩

和的な金融 環境な どが経済を下支えするため、わが国経済は、伸び率

を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみられる」とすること、②

物価の見通しについて、 「基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は

既に概ね「物価安定の目標」に達する水準にあると考えられる 」とす

ること 、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の

結果、反対多数で否決された。

採決の結果

賛成:高田委員

反対: 植田委員、氷見野委員、内田委員、 中川 委員、 田村 委員、

小枝 委員、 増委員、 浅田 委員

田村委員 から は、①消費者物価の基調的な上昇率について、 「 「物価

安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する と考えられる 」とするこ

と、②中長期的な予想物価上昇率について、 「 概ね 2%程度 の水準 で

推移 すると考えられる 」とすること、 など を内容とする議案が提出さ

れ、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

賛成:田村委員

反対: 植田委員、氷見野委員、内田委員、 中川 委員、 高田 委員、

小枝 委員、 増委員、 浅田 委員

議長 から、会合における多数意見 を取りまとめるかたちで、 「基本的

見解 」の議案が提出された。採決の結果、 賛成多数 で決定され、会合

終了後、 直ちに公表することとされた。 また、 背景説明を含む全文は、

4月 30 日に公表することとされた。

採決の結果

賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、 中川 委員、 小枝 委員、

22

増委員、 浅田 委員

反対: 高田委員、田村委員

Ⅶ.議事要旨の承認

議事要旨( 2026 年3月 18、19 日開催分)が全員一致で承認され、

5月7日に公表することと された 。

以 上

23

202 6年4月28日

日本銀行

当 面 の 金 融 政 策 運 営 に つ い て

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会

合までの金融市場調節方針を、 以下のとおりとすることを決定した (賛成6反対3)(注)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.75%程度で推

移するよう促す。

以 上

(注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、小枝委員、増委員、浅田委員。反対:中川委員、高

田委員、田村委員。中川委員は、中東情勢の不透明感はあるが、経済情勢を踏まえると、緩和

的な金融環境の下で、物価の上振れリスクが高いとして、高田委員は、 「物価安定の目標」は概

ね達成されており、海外発の物価上昇の二次的波及から国内物価の上振れリスクが既に高まっ

ているとして、田村委員は、物価上振れリスクが大きく拡大する中、中立金利に少しでも近づ

けるためとして、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促

すとする議案を提出し、反対多数で否決された。

別 紙

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