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2021年12月2日
日本銀 行
安達 審議 委員 記者会見要 旨
―― 2021年12月1日(水)
午後2時30分から約30分
(大分市・東京間オンライン開催)
(問) まず、本日の懇談会でどのような内容をお話しされたのか、教えてく
ださい。
(答) 本日の懇談会では、まず大分県の行政、経済界、そして金融界を代表
する方々から、地域経済の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関し
て色々なご意見を賜りました。極めて有益な意見交換ができたと認識していま
す。まずはこの場を借りて、ご出席頂いた方々に御礼を申し上げたいと思いま
す。本日の懇談会では、様々な意見が出たため、ここで全てを網羅してご紹介
することはできませんが、席上で聞かれた話題等を私なりに整理して申し上げ
たいと思います。
まず、大分県の足許の景気については、製造業大手の出先企業が大分
県にはたくさんあって、半導体関連に加えて鉄鋼・化学および素材業種は高水
準の生産を続けており、 地域経済を牽引しているという話を伺いました。 他方、
これは新型コロナウイルス感染症の影響の特徴ですが、観光や飲食、交通・運
輸業等では、感染症の落ち着きとともに幾分持ち直しているものの、やはりイ
ンバウンド客が殆どいない──「蒸発した」という表現をされていましたが─
─こともあり、感染症拡大前に比べると客数の水準は低く、依然として厳しい
状態が続いているという見方が示され、不均一性はかなり大きい印象を受けま
した。また、特に中小企業で、原材料価格、燃料の高騰や供給制約による仕入
れ難から収益が押し下げられている先も一部にみられるという 意見も聞かれ
ました。この間、令和 3 年度の大分県の最低賃金が 792 円から 822 円に 30 円
引き上げられた点については、行政の方からは必要な施策であるという声が聞
かれた一方、やはり企業経営者の方々からは、短期的には収益の押し下げ要因
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につながって非常に厳しい、ただ、中長期的な労働力確保といった観点では、
従来大分県が最低賃金の水準が低かったこともあり、それを引き上げたという
点で重要な施策であるという意見を伺いました。
こうしたもとで、 都市部への人口流出が続く大分県においては、 今後、
DXの推進等を通じてサービス産業の生産性を上げる必要がある、つまり「人
への投資が重要である」という意見も伺い、非常に印象に残りました。コロナ
禍においてリモートワークが普及したことで、地方に移住するという方向に
フォーカスが当たっている点に関しても、大分県として期待するという声も聞
かれました。
また、金融面については、感染症の影響が長期化するもとで、行政サ
イドでは各種給付金の支給や家賃など固定費の補助を行っているほか、金融機
関においては実質無利子・無担保融資の実行、そして条件変更にも積極的に応
じており、そうした行政、金融機関双方の支援もあって、中小企業の資金繰り
は緩和的な状況にあり、企業倒産も低水準に抑えられているという見方を伺い
ました。さらに、話は少し違いますが、次世代産業の育成とか金融のイノベー
ションにつながる動き、これを今後は積極的にサポートしたいという声も聞か
れ、大変力強く思いました。
私ども中央銀行の立場から考えますと、やはり物価安定のもとで経済
の持続的成長を実現していくこと、および金融システムの安定性を確保するこ
とを通じて、当地関係者のご努力がより大きな成果へつながっていくようにサ
ポートしてまいりたいと思っています。
(問) 今の中でもコロナの影響などについてお話がございましたが、そうし
たことを踏まえて、昨日オミクロン株の感染者も国内で確認されましたけれど
も、今後のオミクロン株など変異株がまたまん延するかもしれないという状況
の中で、それが地域経済に与える影響について、安達審議委員はどのように考
えていらっしゃいますでしょうか。
(答) 先ほど申し上げたように、足許、いわゆる対面型サービス業において
は、最悪期は脱したものの依然厳しさが残っています。一方、製造業等に関し
てはかなり戻してきている状況で、全体としては持ち直しの動きがみられて、
このまま新型コロナウイルス感染症が落ち着けば、次のステップであるポスト
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コロナへという期待が高まっていたところでした。もっとも、ここ数日、オミ
クロン株という新しい変異株が出現し、国内でも一部発見されたということで
す。ただ、オミクロン株自体も、症状やどの程度重症化するのか、どういう年
齢層、欧州では若年層の感染が多いようですが、どのような人体的な影響を与
えるかはまだ不透明な状況です。従って、例えば人流をどれくらい抑えるべき
なのか、そうした懸念で人流が抑制されてしまうのかというところは、今後み
ていく必要がありますし、かなり大きな不確実性として、経済にマイナスの影
響が出ないかどうか注視していく必要があると思っています。
(問) 先ほどもお話があったのですが、新たな産業モデルという面で、大分
県の宇宙産業の現状と展望について、どのようにお考えになられているのかお
聞かせください。
(答) ロケット産業に目をつけたというのは、目のつけどころが非常に素晴
らしい、と思いました。まず、宇宙産業は非常に大きな成長余地を残しており
フロンティアであることから、そこに注力するのは非常に重要なことだと思っ
ています。もうひとつは、例えば大分空港が宇宙港になるという話はあるわけ
ですが、地域間というより国際的な地域に拡がる競争に大分が入っていったの
は非常にチャレンジングなことだと思いますし、素晴らしいことだと思います。
経済に与える影響としては、もちろん成長フロンティアが非常に拡がっている
ということで、その最先端の企業、宇宙産業が上手く成功すれば大分県経済を
浮上させる非常に大きな力になり得るということもありますが、もう一つ大き
いのは、宇宙産業は非常に夢がある産業だということです。ドラマや漫画にも
ありますが、やはり子供たちが宇宙産業、実際はその企業が身近にいることで
刺激を受けて、その人材を、特に理系教育は非常に重要だと言われていますか
ら、大学、行政と企業が協力して育成することができれば、中長期的な成長余
力にもなります。これは県だけではなく日本国全体にとっても成功例という形
になる可能性を秘めていますので、非常に大きいことだと期待しています。
(問) 2022 年3 月末で期限が切れるコロナオペについてお伺いします。安達
審議委員の午前中の挨拶で、感染が再拡大し、公衆衛生上の措置を再びとる状
況になった場合には、企業の資金繰りを支える必要が生じるという趣旨の話を
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されていました。足許の状況をみると、オミクロン株が日本でも見つかり、政
府も外国人の入国を当面停止するという措置を打ち出しています。こうした状
況を踏まえると、日銀のコロナオペ、全てを打ち切るという選択肢を取り得る
のかという点についてお伺いします。
それとあわせて、とはいっても大企業の資金繰りは落ち着きを取り戻
していますし、安達審議委員も企業の倒産件数はきわめて低い水準にあるとい
うような話をしています。そういうことを踏まえると、コロナオペも例えば社
債・CPの買入れの縮小など一部見直してもいいのではないかという意見もあ
るようですが、この意見について安達審議委員はどのようなご見解でしょうか。
(答) まず、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラ
ム)」、これは社債、CPの買入れも含めてですが、これについては、まだオー
プンクエスチョンといいますか、実際にどういう方向性でやっていくべきかと
いう話はまだしていない段階ですので、私からは何とも言えない状況であると
いうことをご了承頂きたいと思います。そのうえで、事実として、ご指摘のよ
うに、大企業の資金繰りはかなり緩和されており、最近では昨年調達した資金
を返す動きもあります。 ただ、足許オミクロン株という新しい変異株が出現し、
状況がまだ全く読めない状況となったことから、大企業の資金繰りは緩和して
いるという話は確かに流れとしてはあるわけですが、やはりもう少しオミクロ
ン株の状況をみたいというのも正直なところです。
もう一つの論点として、本日の金融経済懇談会でも伺ったのですが、
私どもの立場からみていますと、例えば今回のコロナ禍の影響の不均一性とい
う見方があるわけです。その不均一性というのは、例えば業種別、セクトリア
ルであるとよく言われているのですが、どうもよく話を聞いてみると、同じセ
クターでも資金繰りに特に困っていない企業もあれば困っている企業もある
ということで、同じセクターの中でもかなり不均一性は高いという印象を受け
ました。従って、全体として資金繰りが緩和している、という話と同時に、同
一セクターの中の資金繰り逼迫度の分布もよくみていきたいと思っています。
そういう意味ではまだ検討する課題が多いと思いますので、今のところはやは
りオープンクエスチョンで、立場としてはやはりニュートラルだと考えていま
す。
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(問) 午前中の講演の中で、 物価が先行き上がっていくというお話をされて、
賃上げが必要だということを言われていたかと思うのですが、現実的に日本で
はなかなか賃金が上がらない中で、食料品や原油等々上がって、家計の実質所
得を下げているということもよく言われるのですが、その消費へのマイナスの
ところの影響を現状でどのようにみていらっしゃるのかについてお 伺いしま
す。
(答) ご指摘のように賃上げはなかなか厳しくて、本日の金融経済懇談会で
も多くの方から最低賃金について指摘がありました。一般的な賃上げと基本的
には同じだと思うのですが、やはり企業の収益がある程度上がってきて賃上げ
をしても企業業績は揺るがない状況にならないと、原理的には賃上げしにくい
という状況であるのは確かだと思います。ただ、周りをみてみますと、例えば
ファーストフード産業で、販売価格の上昇がみられ始めており、アルバイトの
賃金も上がってきています。その上昇幅はあまり大きくないですし、全産業の
中では限定的な動きではありますが、非常に安い賃金で人を雇って安い値段で
売るという薄利多売型のビジネスモデルは、従来のデフレの局面と比較すると
かなり後退してきていると思います。それは、前回の日銀短観で販売価格を引
き上げたいという企業の数がかなり増えてきていて、逆に下げたいという企業
が少なくなってきている状況からもみえていると思いますので、短期間におい
て急に賃上げが実現してデフレ完全克服とはなかなかならないとは思 います
が、中長期的にはじわじわとそういう流れが強まっていくのではないかという
ことで本日お話させて頂いた次第です。
(問) 安達委員は挨拶の中で当面感染症の影響を注視して、必要があれば企
業による事業の継続を支援する観点から、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講
じる姿勢であるとご発言されまして、先ほどの質問にありましたけども、オミ
クロン株の動向も今不透明な中ですけれども、もし感染拡大して公衆衛生上の
措置が再び導入されるような事態になった場合に、安達委員としてはコロナ特
別プログラム延長を支持されるのか、それとも追加緩和策を打ち出す必要があ
るとお考えなのでしょうか、というのが一つです。
また、反対にオミクロン株の感染がそれほど拡がらず、いわゆる公衆
衛生上の措置まで踏み切らなかった場合には、来年3 月でコロナ対応特別プロ
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グラム終了になるのですが、公衆衛生上の措置までいかなければ 2022 年 3 月
で終了しても良い、とお考えでしょうか。
(答) 最初の点ですけれども、やや表現が不適切だったかなと思っているの
ですが、追加緩和云々というのは基本的にはテールリスクに対する対処だと理
解して頂いた方が良いと思います。従って、例えばオミクロン株が世界的に感
染を急拡大させて、また昨年の初め頃みたいに世界各地で完全に経済活動が止
まってしまう状況が起きた場合、そしてその際に、ここ数日規模は小さいです
が発生している感じもありますが、いわゆるリスクオフの流れで円高・株安、
海外株の急激な下落というのが生じた場合、そしてそれがある程度長く続くと
いうようなある意味のテールリスクが生じた場合には、追加緩和を考えるべき
ではないかと思います。このため、一般論としてコロナオペを拡充させるとい
う意味では必ずしもないということです。
二点目につきましては、先程の質問でありましたように、「特別プログ
ラム」に関しては、現時点ではオープンクエスチョンという言い方をさせて頂
いています。オミクロン株の感染の趨勢がどうなったらどうなるというのは仮
定の質問になりますが、現時点では場合分けを明確にする程の情報がない、と
捉えています。
(問) 前回 10 月の短観で、コロナの中でもITが日本経済を牽引する構図
が明らかになっているかと思うのですが、その後約2か月経っていて、この足
許の直近の動きはありますけれども、国内外で、そうした動きが具体的な業種
などを含めて、どのようになっているのかという安達委員のご見解をお伺いで
きますでしょうか。主に、ITを中心に、どのようにみていらっしゃいますで
しょうか。
(答) まず、新型コロナウイルス感染症の状況においては、私もあまり外に
出歩いて見ているわけではないのですが、例えば再開された飲食サービス等を
みても、なるべく人との接触を避けるようなオペレーションが増えてきている
印象があります。この動きは特に大きいチェーン店というよりも個人で経営さ
れている小さな飲食店で本格的に拡がっている、そういうところにお金をかけ
ながら事業をまた再開させる、 という動きが拡がっており、 そういう意味では、
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生産性はサービス業の分野でもじりじりと上がる可能性 を秘めていると思い
ます。また、よく言われていることですが、やはりリモートワークを積極的に
活用していかないとコロナ禍では 企業のオペレーション自体が回っていかな
いということは、殆どの企業の中で定着したと思います。当初はやはり設備も
十分ではなく、マシントラブルも結構あったようですが、最近はかなりスムー
ズに進み、割と良い機械を揃えた企業もありますので、そういう面でも進んで
いるのではないかと思っています。
(問) 大きく二点伺いたいのですが、まず、安達審議委員に先ほどおっしゃっ
て頂いた、セクターの中でも資金繰りに困っている、困っていないとバラツキ
がある、不均一性とおっしゃいましたか、全体として国内企業の資金繰り環境
が改善してきているという話だとは思うのですが、やはりまだまだ一部に厳し
さがあるという中で、こういう一部の厳しいところに対しても引き続きコロナ
オペとして対応が必要だというふうなお考えなのかという点 をお伺いします。
もう一つは、今後、いずれ感染症が落ち着いてくれば、コロナオペの
修正ですとか、 廃止というのもみえてはくると思うのですが、 その後になって、
やはりコロナは不確実性があるということで、再びまた感染症が増えてきた場
合に、例えばコロナオペを再び導入するとか、拡充するとか、そういう政策の
スジ論として、それは適切だと考えるのかどうなのかをお伺いします。
(答) まず、不均一性に関連したところですが、要するに新型コロナウイル
ス感染症対応金融支援特別オペ(コロナオペ)を続けるかどうかの一つの要素
としては、もしコロナ禍がなかったらきちんと事業ができていたかもしれない
という企業と、もともと収益性が非常に低い、そして既存の債務の利払いすら
も危うかったかもしれない企業があって、コロナオペと政府の政策対応等のも
とで資金供給を受けている先はもちろんあると思います。コロナ禍においては、
やはり前者といいますか、なるべくコロナが無ければ普通に事業活動ができて
いた企業を助ける方を優先すべき状況であると思っています。その観点と、い
わゆる一種のモラルハザードかもしれませんが、本当は事業を継続できないの
に上手いこと制度を利用して事業を継続している企業、産業の新陳代謝等を阻
害するいわゆるゾンビ企業の副作用とどちらが大きいかというのを日々確認
し考えながら、コロナオペの継続の是非を考えていかねばなりません。そうい
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う意味で、今のところまだオープンクエスチョンだと申し上げたわけです。こ
のため、そういう意味ではどちらを優先すべきかという問題は、緊急事態宣言
も現時点では出されておらず事業活動も再開されている状況ですが、その中で
オミクロン株が出てきたので、まだ定まってないと思っています。できるだけ
決定のタイミングまでに考えて、何らかの結論を出していきたいというのが今
のスタンス、オープンクエスチョンということです。
二点目ですが、これも仮定の話で、やめるかどうかも全く決まってい
ない状況ですが、当然コロナ禍により、程度の問題ですけれども、また強制的
に経済活動が止まってしまう状況が万が一来るのであれば、当然それがなけれ
ば事業を継続できる企業が立ち行かなくなることになるので、仮に一度やめた
としてももう一度導入することに関しては、問題はないのではないかと考えて
います。ただ、そうした事態が起こるかどうかはまだ全然わからないというこ
とです。もう一つは、やはりこれは日本銀行だけでなく、政府の施策もあって
のことですから、政府との協調もポイントとしてはあると思います。
以 上