1
20 22年6月2日
日本銀 行
若田部副総裁記者会見要 旨
―― 2022年6月1日(水)
午後2時15分から約35分
(岡山市・東京間オンライン開催)
(問) まず、午前中の金融経済懇談会においての内容ですが、地元の経済界
の方々からどのような意見や声があったのかを教えてください。二点目は、岡
山県についての印象、ならびに岡山県経済の発展策というところもお伺いした
いのですが、午前中のご挨拶の中でもちょっと重複するところもあるかもしれ
ませんが、改めて教えてください。
(答) 最初の、本日の金融経済懇談会でどのような意見交換があったのかと
いうことについては、本日の懇談会、これは私にとっては2 年 4 か月ぶりの対
面での会合になりましたが、大変有意義なご意見を頂いたと考えています。本
日の懇談会では、岡山県の行政や金融・経済界を代表する方々から、当地の金
融・経済情勢や地域経済が直面する課題等について、大変貴重なお話を伺いま
した。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望もお伺い
し、大変有意義な意見交換だったと考えています。ご多忙の中、本日ご出席頂
いた皆さまに、本席をお借りして改めて御礼申し上げます。
懇談会での話題ですが、これは大変多岐にわたるものでしたので、本
席で全てを明らかにすることはできませんが、席上で伺った話を私なりに整理
して申し上げたいと思います。
足許の岡山県の景気につ いては日本経済全体とほぼ同じような動き
を辿っており、新型コロナウイルス感染症の影響や、半導体不足等の供給制約
による生産活動への影響等が残っているほか、業種・企業規模によって景況感
にばらつきがあるものの、全体としては持ち直し基調にあるとの意見・見方が
多く聞かれました。先行きについては、特に多くの中小企業から、原材料価格
の高騰に対する懸念が聞かれており、価格転嫁の成否等に留意が必要との認識
2
が示されました。こうした中、行政や金融界、経済界においては、地域活性化
や雇用維持など様々な形での支援策を講じているとのお話を伺いました。また、
やや長い目でみてSDGsや脱炭素化への取り組み、企業誘致の推進等、地域
の持続的な発展につながる施策を関係者一丸となって進めているとのお話 も
伺いました。こうした取り組みにより、岡山県の魅力を高め、それを全国に発
信し、住民のエンゲージメントを高めることが人口減少・少子高齢化への対応
にもつながっていくとのお話を皆さまから伺い、大変心強く感じたところです。
金融界の方からは、感染症の影響が長引く中で、取引先企業への資金繰り支援
に引き続き取り組みつつ、ポストコロナ・ウィズコロナにおけるビジネスモデ
ルの再構築や、 事業承継、 人材確保、 脱炭素化やデジタル化への対応といった、
中小企業が抱える各種の課題に対して、サステナブルファイナンスの提供も含
めてしっかり支援していきたいとのお話が聞かれました。
日本銀行に対しては、感染症やウクライナ情勢の動向等により、先行
きの不確実性が高まっている中、政府と連携して持続的・安定的な経済環境の
確保に努めてほしいとのお話がありました。また、業種に応じた適切な支援の
内容や、企業の生産性引き上げに向けたアドバイスなど、地域経済に関する調
査・分析の提供を一層お願いしたいとのご要望も頂きました。このほか、為替
レートの安定には一層の目配りをお願いしたいと のご意見も伺ったところで
す。日本銀行としては、本日頂きましたご意見等も踏まえて、中央銀行の立場
から、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくとともに、金融シ
ステムの安定性を確保することを通じて、当地関係者のご努力が、より大きな
実りへとつながっていくようなサポートをしてまいりたいと考えています。
二点目の岡山県経済の印象と発展の方法についてですが、これは私の
講演でもだいぶ論じましたので、ポイントだけ申し上げたいと思います。足許
の岡山県経済については、先ほど参加者の方々からの懇談でも聞かれましたよ
うに、感染症によるサービス消費への下押し圧力や半導体不足など供給制約の
影響はみられていますが、社会経済活動が継続するもとで持ち直し基調にある
と認識しています。当面は、感染症の影響が緩和するもとで、回復が続くとみ
ていますが、引き続き各種の下振れリスクには留意が必要であると考えていま
す。中長期的には、岡山県も他の地方経済と同様に、人口減少や少子高齢化へ
の対応が大きな課題となります。そのもとで経済成長を実現するためには、岡
山県の住みやすさ、暮らしやすさといった地域の魅力の向上が重要だと考えて
3
います。本日の金融経済懇談会でも、そうした観点から、岡山県の持つ強みや
今後の期待についてお話しさせて頂いたところです。例えば、文化的価値がも
たらす豊かさが挙げられます。岡山県には倉敷美観地区や岡山市のカルチャー
ゾーン、現代アートの舞台となっている瀬戸内海の島々、県内各地で地域住民
の生活エリアの一部として保存されている古い町並みなど、身近なところで文
化的な価値に触れられる環境が充実しています。このことは、居住者や移住希
望者が暮らしの豊かさを実感することにつながり、観光資源としての競争力を
高めれば、交流人口を増やす効果も期待されるところです。また、少子高齢化
社会では、教育や医療の充実は経済の面でも強みになります。産学連携の強化
や医療ネットワークの活用を通じて、地域での企業人材の育成・確保や健康寿
命の延伸に結び付けていくことが期待されます。吉備中央町では、「デジタル
田園健康特区」に指定されたとのことですが、医療分野でデジタル技術を活用
する取り組みが始まっていると伺っています。このほか、水島臨海工業地帯を
抱える岡山県では、製造業が経済の牽引役ですが、住みやすさの大前提となる
持続可能な地域社会の実現に向けて脱炭素化への取 り組みも進めていく必要
があります。これを経済成長に対する制約ではなく、イノベーションや新たな
事業創出の機会ととらえ、産学官金の連携のもと、地域ぐるみの取り組みによ
り、岡山県経済の活性化につなげることを期待しています。
(問) 今日、意見交換をされて、先ほどのお話の中にもあったかと思うので
すが、特に印象に残られたことというのは何になりますでしょうか。
(答) 特に印象に残ったという意味では、やはり地元のリーダーの方々が 、
岡山県の現状に対して危機感を抱いているということだと思います。このこと
は私も大変大事だと思っており、ここから先、岡山県が更に発展するにはどう
すればいいのかということを大変真剣に考えて いらっしゃるということを伺
い、一番強く印象に受けたところです。具体的には、少子高齢化のもとで、例
えば生産性を上げていくには、具体的にはどういうことが必要なのかというこ
とについて、岡山県として何ができるのかということを非常に真剣に考えてお
られたなという印象があります。
(問) 先日、内田理事が国会で長期金利の変動許容幅の拡大について、これ
4
は事実上の利上げであるというような趣旨の発言をされたと思います。若田部
副総裁も同様な考えなのかという点について教えてください。もし仮に同様で
あるとするのであれば、18 年 7月に、長期金利の変動幅を 0.1%からその倍程
度に拡大したこと、これも事実上の利上げという解釈になるのではないかと思
うのですが、その辺のことも合わせてお願いします。
(答) まず、長期金利の変動幅を拡大するということは、やはり事実上確か
に金利を上げるということにつながるだろうと思います。これは二番目の質問
にも関わりますが、18 年 7月に明確化というところで言ったのは上下 0.1%の
倍程度ということですが、その後これをかなり明確に 25bps と言ったので、
0.1%の倍程度というようなところに比べると、かなり踏み込んで数値も明ら
かにしたということですので、 それが0.25%から0.3%になるとなってくると、
「それではこれまで明確にしたことは何だったのか」ということが問われます
ので、事実上の金利引き上げということになると思います。
(問) 足許、資源価格の上昇を主因に交易条件が悪化していると思 います。
日銀は、コモディティ高が実質所得を押し下げて二次的波及が起きていない場
合には、引締めよりむしろ緩和すべきだという情報発信をかつてされていたと
思うのですけれども、現状、追加緩和の必要性については、副総裁、どのよう
にみていらっしゃいますでしょうか。
(答) 追加緩和を考えるか考えないかということは、当然金融政策決定会合
で決めていく事項ですので、この時点で、私がどのように考えているかをあま
り申し上げるのも適当ではないと思います 。ただ、蓋然性として、これ以上、
例えば追加緩和をすることがどの程度必要なのかということについては、それ
ほど高くないのではないか、というのが現時点での印象です。もっとも、経済
状況は下振れリスクも相応にあり、物価に関しては上振れリスクもあります 。
そうしたある種の不確実性を踏まえたうえで、当然、追加緩和の手段は残して
おかなければいけないとは考えていますし、そのことの検討はいつもしていな
いといけないと思いますが、現段階において、すぐに追加緩和というようなこ
とが必要なのかはやや懐疑的であるということです。現状で、例えば、海外に
対して所得が流出してい るのでその流出を打ち返すような政策がとられるべ
5
きだということだとは思うのですが、ただ、それは政府の対策もありますので、
政府の対策と相俟っての総合的な政策効果というのが期待されるところでは
ないかと思います。金融政策だけでそれを行っているというわけではなく、政
府側の対策とも相俟って、そうした下振れリスクあるいは交易所得の流出に対
して対抗策を打つということが行われていくと期待したいところです。
(問) 簡単な確認なのですけれども、そういう意味で言うと、追加緩和の蓋
然性が低いというのは、政府で対策をすれば現状は事足りるというか政府が対
策すべきだという観点から、という理解でよろしいでしょうか。
(答) 対策すべきかどうかということはともかく、私は政府と中央銀行との
適切な政策の分業といつも申し上げています。現状で起きていることは、講演
でも申し上げたように、やはり低インフレが持続しており、それに対して一部
の価格が急騰しているということですので、二つ政策目標があるときに、二つ
の政策手段が必要であろうということは原則としては考えるわけです。ですか
ら、政府が今般打ち出したような対策は、私が理解するところでは、まさに今
起きているエネルギー価格の急騰への対策であり、その意味では政府と日銀と
の連携は十分図られているといえると思います。
(問) 午前の講演ですが、2%の物価上昇率が半年から 1 年程度しか続かな
いのであれば、2%の物価安定目標が持続的・安定的に達成されたとは言えない
と、そういうふうに発言されておられました。副総裁は、持続的な物価上昇と
は 2%程度の水準がどの程度続く必要があるとお考えなのか、また、そもそも
コストプッシュの物価上昇であっても、それが 1 年以上続いたり、または 2%
を大きく上回るなど、期間や水準次第では金融政策で対応する必要が出てくる
とお考えなのか、この二点、お伺いします。
(答) まず、カレンダーベースで例えば何年続けばということはなかなか言
いにくいと思います。現状の、例えばコストプッシュを前提としたときに、コ
ストプッシュによる物価の押し上げ、一部価格が押し上げられるということに
よって統計上の消費者物価指数が高くみえるということが続くと、それが半年
から1年くらい経ったとしても、二番目の質問とも関わりますが、メカニズム
6
的には、それは実質所得を押し下げることにより、他の価格が下がってしまう
ということが起きるので、インフレ率は低くなっていくだろうと思います。そ
の限りにおいて、大事なのは、どれぐらいの期間続けばこれが持続的であると
か安定的であるかということを、何か先に決め打ちすることではなく、データ
を見つつ、例えば、実際の価格の分布、あるいは講演では物価の基調と呼んだ
刈込平均値ですとか最頻値ですとか、どこの価格が動いているのかということ
です。そして、なんといってもサービス価格が大きく動くかどうかというのが
インフレになるかどうかの要ですので、サービス価格と密接な関連があると思
われる賃金が上がっていくかどうか 、中長期の予想インフレ率がしっかりと
2%程度でアンカーされていくことになるかどうか、です。ですから、見るべき
指標は多く、大事なのは、メカニズムの問題として、コストプッシュであるな
らば、仮に例えばそれが1年以上続くとしても――それでそんなに続くのか少
し私自身は疑問なところがありますが、仮に1年以上続くとしても──、それ
がもたらす物価上昇というものは、言ってみれば持続的・安定的ではないと判
断せざるを得ないのではないかと思います。ですから、その場合、これもカレ
ンダーベースで1年以上続いたときに金融政策で対応する必要があるのかない
のかといわれると、そのもとで、賃金はあまり上がっていない、中期・長期の
予想インフレ率もあまり上がっていない、最頻値などもあまり上がっていない、
分布も 2%に到底近づいていない、ということであるならば、金融政策として
対応するのは望ましくないと考えています。コストプッシュへの対応について
は、前回の講演でも申し上げましたが、金融政策での対応はなかなか難しいと
思います。先ほどのご質問にも関わりますが、コストプッシュに対しては、中
央銀行が持っている道具以外の政策手段を使う必要があるということになり
ますので、中央銀行が対応すべき問題ではないと考えています。
(問) 二点お伺いさせてください。一点目は、講演の中で若田部副総裁は物
の値段を大きく二つに分類されて、エネルギーや食品といった大幅に値上がり
しているグループと、それ以外の一般価格は 0というか、殆ど上がっていない
というご指摘をされて、そのうえで政策対応を分けるといったお話をされまし
たけれども、今後、見た目のいわゆるコアCPIで 2%付近の上昇率が続いた
場合に、予想インフレ率が上がってきて、より広くこの二分法が通用しないよ
うな、いわゆる一般物価が広く値上がりしてくるという状況が出てくる可能性
7
はないのかというのが一つです。
二点目は、先ほど岡山県での金懇での意見の中で為替の影響について
目配りをお願いしたいというお声が出たようなのですけれども、若田部副総裁
の、こういった意見を受けてのご印象ですとか日銀としてのスタンスですとか
そういったところをお聞かせください。
(答) 一点目については、物価の基調をみたときに、分布がこれまで 0%の
ところだったのが少し 2%の方に寄ってくる、あるいは米国や欧州で起きてい
たようなもう少し分布が平たい形になってくるということが起きてくるので
あれば、それにより 2%が達成されるときには、当然のことながら、その背後
で賃金が上昇しているとか、予想インフレ率が上がっているということになる
ので、確かに 2%が持続的・安定的に実現される可能性は高まってくるという
ふうになると思います。ただ、コストプッシュから始まったものが、そういう
ところにいくかについてはやや難しいところで、言ってみれば、全体の名目所
得の額が決まっているところで、一部の価格が上がってくると、名目所得をそ
ちらに振り向けた分だけ他のところに対する振り向け分が小さくなる はずな
ので、そこに関してはインフレ的というよりはデフレ的な圧力、価格が下がっ
てくる圧力が働くはずです。短期的には、もう少しインフレ予想全体が上がる
ことで家計の支出そのものが上がってくると、その経路も、今、待機資金ある
いは強制貯蓄と呼んでいるものがあ りそれなりの支出のポテンシャルがある
ので、その部分に火がついて、例えば、賃金が上がってくる、あるいは支出が
増えてくるということが起きれば、ひょっとしたら 2%の持続的・安定的な経
路への道筋になっていくかもしれません。その可能性は否定しないですし、む
しろ何らかの形でその方向にいくことを期待したいところではありますが、コ
ストプッシュだけでとどまるならば、やはり少し力不足ではないかと考えてい
ます。
二点目の為替レートの動向への影響に対する配慮をしてほしいとい
う要望についてですが、為替については私から特に申し上げることはなく、こ
れは基本的にはファンダメンタルズの要因で決まることが望ましいですし、や
はり急激に為替が変動すると企業が事業計画を立てる うえで不確実性が増す
ので望ましくないと考えています。ただ 、前回の講演でも申し上げたように、
金融政策が目標とするのは国内における物価の安定であるとの観点から、為替
8
レートを目標として何か政策を発動することが望ましいわけではないと考え
ていることは変わっていないということです。
(問) 今の質問の回答の中にも言及がありましたけれども、強制貯蓄が今の
輸入物価の上昇などを吸収しているのか、あるいはする見通しがあるというふ
うにお考えなのか、あるいは予備的貯蓄に移っていくとみていらっしゃるのか、
若田部副総裁のご見解を伺えますでしょうか。
(答) 正直、どうなっていくかについて決め打ちするのは危険だとは思って
いますが、基調的なシナリオとしては、ここから先、行動制限が緩和されてい
くこともあり──こちら現地に来て多少そういう形で街の状況で すとか宿泊
施設の状況なども伺うところがありますが──、戻ってきているのは事実だと
思います。ですから、これまではひどく下押しされていた対面型サービスが、
行動制限の緩和などによって徐々にではあるとは思います が持ち直してきて
いるということは事実だということです。そこに待機資金があるということを
踏まえるならば全体として経済を下支えして いくだろうということがメイン
シナリオではありますが、一方で色々な形で下押し圧力もあることは講演で言
及したところですので、その両方のせめぎ合いが今起きているということです。
では、これは五分五分の勝負なのかというと、私としては、下支えの方が大き
いということを期待したいとは思っていますが、今後更に経済の不確実性が増
すようなことになってくると、強制貯蓄が予備的貯蓄へと転化していく、つま
り家計の 50 兆円が使われずにそのまま貯蓄になっていく危険性はあると思い
ます。ただ、その危険性はいくつか挙げた下振れリスクの一つであり、それが
メインシナリオというほど私は強く下振れリスクを警戒しているという わけ
ではないです。
(問) 世界的にちょっとインフレの波が来ている状況で、先ほどの朝の講演
でも、日本でのインフレ時代が来るのか懐疑的という発言もありましたけれど
も、この米欧でのインフレについて、抑える動きが失敗する、あるいは景気を
冷やし過ぎるという懸念があると思います。この辺りの動きが、今後日本経済
にどのような悪影響として出てくるか、この辺りの影響をどのように分析され
ていて、どう見ていらっしゃるのか教えてもらえればと思います。
9
(答) 米欧がとっている政策対応そのものについてコメントをする立場には
ないわけですが、これまでの、大きなインフレを経験した後の金融政策運営と
いうのは、インフレ目標を掲げ、経済が過熱してそれを上回ったならば抑え込
み、経済が下振れして冷え込み物価安定目標よりも下がってくるならば金融緩
和で下支えするという形で、ある種 、室温を調整するような形で金融政策を
行って来ました。その調節がいまひとつ、例えば欧州の場合でも 2%に届かな
いところだったので、 ずっと金融緩和をしていたわけですが、 ここに来て、言っ
てみれば、その上振れの局面に達したわけです。ですから、これまでのインフ
レ目標の考え方とそれに基づく金融政策のある種の実績を踏まえて言うなら
ば、米欧の金融政策当局はこのインフレを何らかの形で抑え込むことはできる
だろうと思っています。その場合、もう一つの質問として、オーバーキルのよ
うに経済が冷え込み過ぎる のではないかとの懸念は短期的には当然あり得る
と思います。これだけ上がったインフレを下げるにはよりドラスティックなこ
とをやらなくてはいけないと言う人がいるのも承知していますが、講演でも申
し上げたように、そのリスクは、感染症、ロシア・ウクライナ情勢と並び、国
際金融市場の変動という中で考えなければいけないことであると思います。た
だ、そうなったらそうなったで、今度は冷え込んできたところ、室温調整で言
えば少し温度が低くなり過ぎたということなので、今度はまた緩和の方に転じ
てくるのではないかと思います。その意味では、これまで 30 年以上、1990 年
代の初めくらいから始まったインフレ目標体制がそれなりに金融政策 に良好
な成果をもたらしてきたと思います。そのもとでリーマンショック やコロナ
ショックがあり、そこで迎えたこのインフレにどう対応するのかということが
問われてはいるのですが、私自身はそんなにインフレを抑え込めないというこ
とはないのではないかと思っています。むしろ抑え込んだ とき、例えばオー
バーキルのようなものに対してどうするかというときも、今度はまた緩和をす
ればいいという形で対応できるので、この枠組みで金融政策を運営していくこ
とができると考えています。
(問) 今日の講演の中でも触れられていたと思うのですけれども、中国のゼ
ロコロナ政策とそれに伴う中国の景気失速が日本経済に与える影響について
どのように分析されているのか改めて教えてください。
10
(答) ゼロコロナ政策自体は、 中国でも日々変わっていて、 例えば上海のロッ
クダウンも感染地区を除いて解除する方向にあるということですので、色々と
行きつ戻りつありつつもマネージしていくのではないかと思います。中国経済
を考えるうえで重要な点は、まず、中長期的な意味での潜在成長率の低下傾向
が続いており、トレンドとしてはかつてのような高度成長というよりは 5%、
場合によっては更に下がっていくというシナリオが人口動態等によって ある
ことです。そのもとで、今注意しなければいけないのが、もう少し短期的に経
済をどのように運営するかという部分で、トレンドとしては下がってくるとし
てもそこから更に下振れするリスクがないかということです。ゼロコロナ政策
の帰趨もそうですが、それ以外に、規制のあり方ですとか、あるいは不動産セ
クターの問題ですとか、 各種課題を抱えていることは事実だと思います。 ただ、
それがどのように影響を及ぼすのかは、メインシナリオとしてトレンドとして
下がっていくということはあるうえで下振れする可能性もあるとは思います。
もっとも、今のところそれは下振れリスクの一つとして十分に認識していると
はいえ、メインシナリオを覆すほど大きなものかについてはまだそこまで深刻
なものとは考えていません。ただ、リスクであることは事実で、そこについて
の不確実性は今後よくよく点検していかないといけないと考えています。
(問) 先ほどからの質問と被ってしまう事があるかと思うのですけれども、
ウクライナ情勢、先行きが見えない中で、岡山県の経済状況、今後の見通しを
いかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。
(答) まずコロナそのものの影響は、日本経済、日本中どこでも起きている
ことなので、ここから先、例えばまた新たな変異株が登場して、更に強力な行
動制限緩和、行動制限措置などがとられれば別のシナリオではありますが、そ
の場合でも全国並みの少なくとも基調としては同じようなことは岡山でも起
きるのではないかと思います。 そのうえで、 岡山の場合は、 製造業が比較的シェ
アが高いこともあり、世界経済の影響は他の地域対比では受けやすいのかと思
います。これは一方では、先ほど中国の話もあり、リスクもあることはありま
すが、世界経済全体が、講演の中でもありましたように、落ち込んだところか
ら今度は回復するところで、回復する後の姿でよほど大きく下振れしない限り
11
は世界経済の恩恵を岡山県経済も享受できるのではないかと思います。それ以
上に、今度は国内における観光客の招聘や企業の誘致、あるいは地域の事業承
継の問題など、各種の問題はありますが、これはある種どこの地域も抱えてい
る問題で、岡山県だけが持っているわけではないですが、本日伺ったところで
は、リーダーの方々は十分な危機感を持ってそれに対応しようとされていると
の印象を受けました。
以上