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2021年7月1日
日本銀 行
中川審議委員就任記者会見要旨
―― 2021年6月30日(水)
午後5時00分から約20分
(問) 本日、審議委員にご就任なさって、現在の心境と今後の抱負について
語って頂けますか。
(答) 本日辞令交付を受け、審議委員を拝命した中川と申します。 昨年来、
新型コロナウイルス感染症の影響が続いている状況は、皆さんご理解の通りか
と思います。こうした環境の中で、経済や物価の下振れリスクも、引き続き注
視が必要な状況と認識しています。こうした局面で、このような重責、つまり
審議委員に就任することは、身が引き締まると同時に、責任の重さを痛感して
います。私のバックグラウンドを簡潔にお伝えすると、30 年近く金融市場に身
を置いてきました。皆さんからご覧になれば一つの会社・グループの中でのみ
の経験ですが、色々な側面から金融市場に携わって、直に触れてきました。直
近は、機関投資家という立場で仕事をしてきましたが、その昔遡ったところで
は、 お客様の財務をみさせて頂く仕事、 その後は自分自身が所属している会社・
グループ全体の財務に携わりました。その経験から言いますと、日本の金融や
経済情勢の変化が、企業の行動・企業のあり方に大きく影響を及ぼすことを痛
感してきました。また、日本以外の情勢、場合によっては政策も、大きく影響
を及ぼすということも痛感した経験があります。こうした市場や環境の変化の
複雑さ、その影響の拡がりのスピードや大きさも、やはり多少なりともみて経
験してきました。こうした経験を活かして、審議委員としての職責をしっかり
果たせるように、執行部の説明、それから他の政策委員の意見 を聞く機会も
多々あると聞いていますので、しっかり自分の意見も持ちつつ議論を重ねて、
今後の政策運営に貢献していきたいと思っています。
(問) 二点お願い致します。まず一つ目が、日銀の異次元緩和が始まってか
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ら 8 年余りと、金融緩和が長期化しておりますが、2%の物価安定目標の達成
がなお実現できていない状況です。審議委員に就任するにあたり、これまでの
黒田総裁をはじめ日銀の金融政策運営をどのように評価していらっしゃるの
か、2%の物価目標に向けて、 今必要な政策は何だとお考えになっているのか、
お伺いさせてください。
そして、二つ目が日銀のETF購入策についてです。日銀がETFの
購入策を通じて株式市場に介入しておりますが、今ほどお話もありましたよう
に、アセットマネジメント業界ご出身かと思いますが、この政策をどのように
評価されていらっしゃるのか、在任中に出口戦略にめどをつけるべきかどうか、
今後の政策運営についてご所見を伺わせてください。またそのうえで、運用に
あたり信託報酬の一部が野村アセットマネジメントさんの方にも支払われて
きたかと思いますが、審議委員の就任にあたって、利益相反に当たるのではな
いかという見方もあります。こちらについて、ご自身としてどのように整理さ
れていらっしゃるのか、是非お考えを聞かせてください。
(答) まず一点目ですが、2016 年の「総括的な検証」、それから3 月に実施
されました「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」、こ
ういったものを拝見して、2%の「物価安定の目標」を実現するために、引き続
き現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、これを継続していくこと
が適当であり、そのために持続的な形で金融緩和を継続していく、それと物価
安定、それから経済・物価・金融情勢の変化に対しては、躊躇なく機動的かつ
効果的に対応していくという方針が重要であるとされています。この理解のも
と、本日拝命したばかりですので、次回の金融政策決定会合が7 月中旬と伺っ
ていますが、これまでのこうした情報、それからこれから頂く事務方からの情
報を踏まえて、私なりにきちんと情報を咀嚼して、私なりに理解して、そして
その場で議論して進めていきたい、意見を持っていきたいと考えています。
それから、ETFの購入についてですけれども、日本銀行のETFの
購入は、金融緩和の一環と認識しています。株式市場のリスク・プレミアムに
働きかけることを通して、市場の不安定な動き、例えば企業ですとか、個人の
方のいわゆるコンフィデンスの悪化につながるのを防止する、ないし緩和する
ことで、経済や物価にプラスの影響を及ぼすことを目的に実施されていると認
識しています。先ほど申し上げた3 月に実施された「より効果的で持続的な金
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融緩和を実施していくための点検」の中では、市場が大きく変動したときに、
より大きな規模で買い入れることが効果的であるとも書かれて いたと思いま
す。繰り返しになりますが、本日就任したばかりですので、ここから執行部の
説明も多々あると聞いていますし、7 月の決定会合に向けて、私なりにしっか
り準備をして、その場に臨みたいと考えています。
それから、利益相反という点で、どう整理をされているかとのご質問
を頂きました。そうした見方があることは承知しています。ただ、日本銀行の
政策委員会の各メンバーの方は、ご自身の経験それから知識、特に経済・金融
の分野、それ以外も含めたものを、個人としてご意見を持って議論を行い、そ
のうえで政策委員会としては9人のメンバーの合議によって決定していくと認
識しています。審議委員については、日本銀行法に基づく服務に関する準則に
おいて、「日本銀行の公共的使命を自覚し、職務の遂行に当たっては、公正を
旨とする」 とあります。 また当然のことながら、 守秘義務も課せられています。
これらを踏まえて、公正・中立、これを守りながら審議委員として職責を全う
していきたいと考えています。
(問) 先の金融政策決定会合で、日銀として、気候変動に取り組むというふ
うに打ち出しているのですけれども、ここへのご見解を伺えればと思います。
(答) 中央銀行という立場ですので、やはり、あくまで物価の安定、それか
ら金融システムの安定という使命に即した形で関与を行っていくのが前提で
あると理解しています。
金融政策面においては、今月の金融政策決定会合で、既にリリースも
されていると思いますが、金融機関が、自らの判断で取り組む気候変動対応の
投融資をバックファイナンスする制度を導入するということで、7 月の決定会
合においてその骨子案を公表する予定と聞いています。こちらも、本日辞令交
付を受けたばかりの立場ですので、7 月の決定会合までそう日もありませんが、
今後、私なりに理解を深めて、議論にきちんと参画していきたいと思います。
(問) 金融政策に関しては、いわゆるハト派ですとかタカ派みたいな言葉で
言われることが多いと思うのですけれども、ご自身のお考え、考え方というの
はどちらになるかとか、その辺りを伺えればと思います。
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(答) 都度、そのときに得た情報をもとにきちんと議論を重ねて、色々な方
のご意見も頂きながら判断していくということで、ご理解頂ければと思います。
(問) 二点お伺いしたいのですが、ETF買入れに関して、黒田総裁は国会
等で、日銀がETFを買い入れているけれども、そのガバナンスの点では、運
用会社がスチュワードシップコードに基づいてきちんと議決権行使をしてい
るから大丈夫だというような説明をされていますが、野村アセットマネジメン
トとして、議決権行使の現場というのはどういう感じだったのかというのが一
つ伺いたいことです。
二点目は、同じくETF買入れに関してですが、日本銀行として、ス
チュワードシップコードに基づいて、アセットオーナーの立場から、運用会社
がきちんとこの議決権行使ができているかきちんとチェックをしていくと、新
しく日銀としてそういう試みを行うべきかどうか、これについてのご見解をお
聞かせください。
(答) 一点目に関しては、運用会社各社そうだと思いますが、守秘義務等も
ありますので、コメントはここでは差し控えさせて頂きたいと思います。
二点目に関しましても、立ち位置といいますか役割等もありますので、
今の進め方ないしはオペレーションの仕方という形では、私は現時点では特に
違和感を持っていませんが、もし必要であれば、会合等で議論がなされるもの
と理解しています。
(問) 先ほど、日銀が大規模な金融緩和を長く続けているにもかかわらず、
2%が達成できていないという質問がありましたが、 そもそも物価上昇率2%を
目標として設定している、この妥当性について、委員はどのようにお考えか教
えてください。
もう一点は、長く大規模緩和、超低金利政策を続けていく中で、金融
機関、または金融市場に対する副作用が指摘されていますが、委員はこの緩和
長期化の副作用についてどのようにお考えなのか、ご見識をお願いします。
(答) 先ほど来申し上げていますが、今年の 3 月に点検という形で、非常に
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情報を充実させた形での公表が行われています。その中に、物価の変動メカニ
ズムの点検も含まれていたと認識しています。それらを踏まえながら、今後、
執行部の新しい情報の提供も受けながら、議論を深めていきたいと考えていま
す。
それから、副作用という点では、点検の中で触れられている通り、今
の金融緩和の政策は、「物価安定の目標」に向けて、より効果的で持続的な金
融緩和を実施・継続していくためのもので、こうしたことを継続していくこと
が適当であると今の時点では理解しています。もちろん金融緩和を持続的な形
で継続していくということが大事です。ただ変化があったら躊躇なく機動的に
効果的に対応していくということが重要であるということも示されています。
今の時点では、それに沿った形になっていると理解しています。
(問) 先ほど、審議委員からご説明がありましたけれども、証券会社の一般
職から、野村アセットマネジメントの初めての女性のトップになるという異色
のキャリアを積まれていると思います。こういった観点から、ご自身の経験と
か、視点の強みがどういうところにあるのか、また、新しい審議委員として、
期待される役割というのはどういうふうに、どこら辺にあるというふうにご認
識されてますでしょうか。
(答) 一般職で入社したこと、それからその後のキャリアが個別にどう影響
したのかとか、どう積み上げてきたのかは、個々には申し上げません。ただ、
冒頭申し上げました通り、一つのグループ内でしたけれど、色々な側面で金融
市場に携わるという経験をしてきて、多くのお客様のお話を伺う機会もありま
したので、こうした経験を活かす形で、今の審議委員という職を全うできれば
と考えています。
(問) 二点ございます。冒頭お話がありました新型コロナウイルスについて
なのですけれども、この影響が長く続いておりまして、金融市場のみならず事
業会社さん、各企業の資金繰り等々でいまだに影響が続いていまして、日銀も
これに対する資金繰り対応策をずっととられております。この長期化する中で、
中央銀行として果たすべき役割については、これまで中川さんご自身のお立場
としてはどんなふうにご覧になっていたのでしょうか。政策対応をこれまで眺
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めてみてのご感想をお伺いできればと思います。
二点目ですが、 ちょっと繰り返しになってしまうのですが、2%の物価
安定目標の達成にあたって、これが達成されるまでは今の大規模な金融緩和策
というのは粘り強く続けるべきだというお立場であるという理解でよろしい
のでしょうか。
(答) まず中央銀行という立場においては、物価の安定と金融システムの安
定という使命に即したものですので、そこに環境の変化、今回であれば新型コ
ロナウイルス感染症の発生、その拡がり、変異株といわれているものの変化、
こうしたものを注視しながら柔軟に――もともとの基本観としては、先ほど来
申し上げているような3月に発表になった点検の内容に即したものではあると
は思いますが、その中にあっても柔軟に――対応していく、金融システムの安
定も含めた使命を果たしていくのが、中央銀行である日本銀行の大きな役割で
あろうと理解しています。
物価安定に関しては、もちろん色々な環境や情勢の変化等はあると思
いますが、現状、まだ予断を許さないというのは冒頭申し上げた通りです。一
方で、日本の景気の現状を考えますと、国内外、もちろん感染症の影響が本当
に引き続き厳しい状況であるものの、若干、基調として一部持ち直してきてい
るとみえなくもないです。先行きの経済活動の水準に関しては、当面、業種で
すとかサービス提供のあり方、例えば対面なのかそうではないのかということ
によって、感染症の拡大前まで戻るのはなかなか難しいかもしれません。しか
し、個人消費は、感染症の影響が不安も含めて徐々に和らいでくることによっ
て持ち直してくること、それから足許でも輸出や生産に関しては堅調な感じに
見受けられていますので、この辺りが回復していくということであれば、感染
症の影響の収束次第ではありますが、成長を続けるのかなと思っています。そ
の辺の環境も踏まえて、今は「より効果的で持続的な金融緩和を実施していく
ための点検」の内容に沿った形でやっていくということです。ただ、まだ変異
株の流行で景気回復が遅れるリスクなど不確実性も高いとみていますので、物
価情勢に関しても、足許、携帯電話の通信料の引き下げにエネルギー価格の上
昇が加わって、ほぼ相殺した形で、消費者物価が前年比ゼロ近辺ということで
すが、この辺りを注視しながら、基本観としては、冒頭に申し上げた通り、点
検の内容に即してやっていくということだとは思いますが、環境の変化には柔
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軟に対応しつつということだとも思います。
以 上