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2018年3月22日
日本銀 行
副 総 裁 就 任記 者 会 見 要旨
―― 2018年3月20日(火)
午後5時半から約60分
(問) 本日、副総裁にご就任ということで、抱負をそれぞれお聞かせ頂けま
すでしょうか。
(雨宮副総裁) 雨宮でございます。どうぞよろしくお願いします。
抱負ですが、今後取り組むべき課題として、3 つのことを肝に銘じて
いますので、そのことについて申し上げたいと思います。
第1に、金融政策運営です。私は、日本銀行におけるキャリアの約半
分、20 年近くにわたってデフレとの戦いの最前線に身を置いてきました。日本
経済は、デフレではないという状況にはなりましたが、 2%の「物価安定の目
標」は実現できていません。これからの5 年間、積年の課題である物価安定と
いう使命達成の総仕上げのために、全力を尽くす覚悟です。もちろん、歴史的
にも世界的にも類例をみない大規模な政策ですので、その効果と副作用の評価
や、将来の出口戦略のあり方など、検討課題は多岐にわたります。これまで築
き上げた中央銀行員としての実務知識もフルに活かしつつ、適切な政策運営に
努めていきたいと考えています。
第2に、 金融システム面の課題です。 金融機関経営を取り巻く環境は、
人口や企業数の減少、あるいは長引く低金利など、厳しさを増しています。こ
うした環境変化に対する金融機関の対応を的確に把握し、サポートしていきた
いと考えています。また、金融取引の市場化やグローバル化が進展する中で、
日本銀行が持っている最後の貸し手機能についても、市場への流動性供給や、
外貨の流動性供給といった新しい機能の重要性が増しています。このほか、
FinTech の発展に対応していくことも、中央銀行、民間金融機関ともに重要な
課題です。このように、金融を取り巻く環境が大きく変革していく中において
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も、日本銀行の機能や能力を十分に発揮して、金融システムの安定を図り、金
融仲介機能の向上に貢献していきたいと考えています。
第3に、 約40年にわたり日本銀行で現場経験を積んできた者として、
円滑な業務組織運営に努めることが、私に課せられた最も大事な役割と考えて
います。日本銀行の使命達成の基盤は、銀行券の発行と流通、決済システムの
運営など、日々の業務遂行です。日本銀行の本支店、事務所、約5千人の職員
は、高い士気を持ってそうした業務を日々遂行するとともに、災害時などの緊
急時にも、わが国の金融インフラをしっかり守るという強い決意を持って臨ん
でいます。こうした職員一人一人の持てる力を引き出し、日本銀行の組織力を
フルに発揮させていきたいと考えています。
これまで日本銀行で得られた経験と知見を活かして、職員の力を束ね
つつ、若田部副総裁と力をあわせ、黒田総裁をお支えし、使命の達成に全力を
あげて取り組んでいきたいと考えています。
(若田部副総裁) 若田部でございます。日本銀行に入るのは、本日が第1 日
目です。これからは、雨宮副総裁とともに、黒田総裁をお支えして、日本銀行
の金融政策と業務の運営に貢献していきたいと考えています。
現在、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を達成すべく、大規模
な金融緩和政策を実施しています。その成果は、企業の収益・雇用状況、総雇
用者所得、自殺率や貧困率といった各種の経済社会データを素直にみれば、明
らかだと思います。2%の「物価安定の目標」には達していませんが 、物価が
継続的に下落するという意味でのデフレとはいえない状況 にまで漕ぎつけま
した。この成果は、私は素直に評価したいと考えています。
今後の抱負ですが、1 点目は金融政策についてです。金融政策につい
ては、デフレからの完全脱却、すなわち 2%の「物価安定の目標」の安定的達
成を目指して、淡々粛々と金融政策の策定に関わっていきたいと考えています。
金融政策の効果は、既に各種のデータによって明らかですが、まだその果実が
国民全体に及んでいるとまではいえません。政策の基礎となる理論・モデルを
吟味し、データと予想を精査し、金融政策決定会合の議論に積極的に参加して
まいりたい、というのが私の第 1 の抱負です。
第2に、金融の世界には大きな変化が押し寄せてきています。いわゆ
る仮想通貨と暗号技術、あるいは人工知能の可能性が、昨今取沙汰されていま
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す。それらの中には、やや可能性を過大評価している感もなきにしもあらずで
すが、技術の変化そのものはリアルでして、これが既存の金融の姿を大きく変
革しつつあります。殊に、FinTech がその可能性を発揮する過程では、既存の
金融機関の変革が不可欠となるでしょう。また、日本銀行の業務に直接関わる
ところでは、サイバー危機・サイバー攻撃の危険性があります。これは米国な
どでは、例えばサイバー攻撃がきっかけとなって次の金融危機が起きるのでは
ないかといった懸念も取沙汰されています。そうした技術の変化、それが金融
市場、組織にいかなる変化をもたらすかについては、目を凝らし、研究をして
いきたいと考えています。
3 番目は、これは日本銀行に入ってからの課題ですが、あらゆる組織
同様、日本銀行も、そこで働いている人間の集まりです。日本銀行の役職員の
方々は、高いプロフェッショナル意識を持って活動されていると思いますが、
私にとっての課題は、そうした一人一人の日本銀行の方々と、できる限り直接
お会いして、日本銀行を人の側面からよりよく理解することです。
以上、3 つの点について、抱負を述べさせて頂きました。よろしくお
願いします。
(問) 金融政策上、最大の課題は 2%の「物価安定の目標」の実現だと思い
ますが、数ある要因の中で、2%の実現のために最も重要なファクター をどう
いうふうにみておられるか、お伺いします。
(雨宮副総裁) 物価の変動には、色々な要因が影響を与えます。為替レート
や海外商品市況の変動など、様々な要因が影響を与えますが、物価の基調を決
めるものは、3 つくらい考えられます。1 つ目が経済全体の需給バランスすな
わち需給ギャップの動き、2 つ目が人々の物価観というか、予想物価上昇率が
どうなっているかという物価に関する見方、3 つ目が賃金の動きです。こうし
たものが基調を形成するのだろうと思います。
一昨年の「総括的な検証」で示した通り、日本の物価観というか予想
物価上昇率は、足許の物価上昇率に非常に影響されるということですので、需
給ギャップの改善により物価が上がっていけば、それが予想物価上昇率にも影
響を与えますし、また、需給ギャップが改善していけば、経済全体の需給逼迫
が労働需給の逼迫を通じて賃金にも影響を及ぼします。今申し上げた 3 つの要
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因に共通する重要なファクターは、需給ギャップの改善を粘り強く続けていく
ことだろうと思いますので、需給ギャップの改善基調を維持するためには、強
力な金融緩和を粘り強く進めていくことが、最も重要であると考えています。
(若田部副総裁) 国会での所信表明の際にも申し上げましたが、 2%の「物
価安定の目標」を実現するために、デフレからの完全脱却を目指し、デフレへ
と逆戻りしないという決意のもとで始まったのが、過去5 年間の金融政策のス
タンスだったと思います。この金融政策のスタンスあるいはレジームを堅持す
ること、そしてそれを可能であれば強化することが、最も大事なことだと考え
ています。
そのためにも、世界経済の先行きをはじめ、見通しは非常に不確実な
ところがありますが、時期尚早に政策を変更することは 、先程申し上げたレ
ジームの堅持、強化とは逆行する動きですので、 回避すべきと考えます。 また、
これは何度も申し上げますが、追加緩和については予断を持っているわけでは
ありませんが、必要ならば躊躇なく追加緩和を行うべきであると考えます。そ
のことによって、デフレからの脱却というこれまでの悲願が達成できるのでは
ないかと考えています。
もちろん、経済については、賃金の引上げなど様々な要因があるのは
事実でして、それにつきましては、経済のよい循環が保たれるような形で、金
融政策はその後押し・下支えをしていくことが必要であると考えています。
(問) 副総裁の役割について伺います。副総裁は、政策委員会の 1 メンバー
として金融政策の議論あるいは採決に加わっていくことになるかと思います
が、一方で、日本銀行法には総裁を補佐するとも規定されていて、先日、黒田
総裁が会見で同じ方向を向いている方が望ましいとおっしゃっていました。そ
の意味では、総裁と副総裁で政策のスタンスが異なる場合、難しい判断を求め
られることになるかと思いますが、政策委員会の1 メンバーとしての位置付け
と、総裁を補佐するという位置付け、どちらの方に重きを置いて副総裁の任務
を全うしていかれるとお考えでしょうか。
(雨宮副総裁) ご指摘がありました通り、 副総裁の役割は日本銀行法で2つ、
明確に規定されていまして、1つは業務執行上、 総裁を補佐するという仕事と、
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もう1つは政策委員会においては独立して委員の職務を執行することになって
います。この2 つは、矛盾することではありません。やはり、まずは政策委員
会においてしっかりとした議論を進めることが重要ですし、そうした議論を通
じて出された結論、政策の決定については、きっちり総裁とともに執行の責任
を負っていくことになると思っていますので、この法律に定められた2 つの要
請をきちんと両立するように務めていくことに尽きると思います。もちろん、
業務執行において正副総裁の考え方が同じ方向を向いていることが必要だと
思いますが、正副総裁の間で議論を戦わせることもあり得るわけです。そうし
た議論の中から、適切な政策が生まれていくと思っています。
(若田部副総裁) おっしゃられた通り、政策委員会の委員としては独立して
その職務を行うということが 16 条第 2 項の規定で、そして、業務の執行にあ
たっては、総裁を補佐することが定められているのが22 条第 2 項という、2 つ
の建付けになっていますので、そのもとで副総裁としては、総裁を業務面にお
いてお支えし、金融政策決定会合においては独立してその職務を全うすること
になろうかと思います。同じ方向を向いていることが望ましいことは私もその
通りだと思いますが、一般論としていえば、議論というものは、むしろ同じ土
俵なり同じ目的が共有されている場合に、大変有益なもの、生産的なものにな
ると私は考えています。従って、これから先、色々と議論する場面はあると思
いますが、「物価安定の目標」の 2%を達成するという目標が共有されている
ような時には、議論は生産的なものになるだろうと私は期待しています。
(問) 政府との関係について伺います。最近、財務省の文書改ざん問題を受
けて、安倍政権の支持率が急落しており、政界や市場では、安倍総理の自民党
総裁再選を危ぶむ声も出てきています。これまで、政府と一体となって金融緩
和を進めてきたということかと思いますが、仮に、政府の経済政策のスタンス
が変わったり、「共同声明」の見直しが求められた場合であっても、これまで
の政策スタンスを粘り強く続けていくのか、必要によっては見直すこともあり
得るのか、その辺りの考えをお聞かせ下さい。
(雨宮副総裁) まず、私どもが実現しようとしている「物価の安定」という
目的は、日本銀行法で定められた目的です。「物価の安定」を実現し、それに
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より国民経済の健全な発展に資するという、日本銀行法に定められた責務を遂
行することについては、時の政府如何ということとは別に、中央銀行としての
重要な責務であると考えています。そのうえで、今のご質問に直接お答えする
ことは控えますが、例えば、私どもが持っている、政府と日本銀行の 2013 年
の「共同声明」の基本的な精神は、中央銀行が「物価の安定」のために適切な
金融政策を行い、政府が財政面で弾力的な対応を行い、成長促進的な構造政策
を行うという、3 つの政策の組合わせです。これは、実はとてもオーソドック
スな組合わせですので、こうした考え方は、どのような状況でも、十分有効で
あろうと思っています。
(若田部副総裁) 私も、「物価の安定」という目的は、日本銀行法にきちん
と書かれていて、それを淡々粛々と実現していくことが、日本銀行にとって必
要なことだと思います。副総裁としては、そのようなことに貢献していきたい
と考えています。一般論として、政府と中央銀行との関係は色々と議論があり
ますが、しかし、日本銀行においては、日本銀行法に書かれているように、「物
価の安定」そして信用秩序の維持を、淡々粛々と実現していくというスタンス
で臨むべきであると考えています。
(問) 若田部副総裁にお伺いします。国会の所信聴取の中で、必要ならば追
加緩和を行う、その際に、新たな手段も検討すると言及されていたと思うので
すが、どのようなことを頭の中においてお話しされていたのか、もしお話しで
きることがあればお聞かせ下さい。
(若田部副総裁) 現段階でどのような手段を考えているのかということにつ
いては、基本的には、金融政策決定会合で議論し決定するものですので、コメ
ントを差し控えさせて頂きたいと思います。
(問) お二人にお伺いします。国会の所信聴取では、議員の方々から 2%の
「物価安定の目標」がそもそも妥当なのかという質問が多かったと思います。
2%の「物価安定の目標」および 2013 年の政府と日本銀行の「共同声明」につ
いて、見直しをする必要があるのかないのか、お考えをお聞かせ下さい。
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(雨宮副総裁) まず 2%の「物価安定の目標」の妥当性について、時々誤解
があるように思うのですが、2%の「物価安定の目標」というのは、人為的に
インフレを起こして、インフレによって経済問題を解決しようということでは
ないと、私は理解しています。中央銀行の目的は、あくまで も「物価の安定」
ですが、この「物価の安定」を具体的な数値で実践的に定義してみると、 ちょっ
とプラスがよいというのが共通の理解になっているわけです。これは色々なと
ころでご説明していますが、CPIという物価統計には強めに出るという上方
バイアスがあるとか、デフレにならないようなのりしろを持っていた方がいい
というようなことがあります。こうした統計上のバイアスやのりしろを踏まえ
て、「物価の安定」ということを実践的に定義しようと思うと、ぴったりゼロ
ではなくて、ちょっとプラスがよいというのが、先進国の共通の理解です。で
はそのちょっとプラスが 1%か 2%か 3%かというのは、 先験的に自動的に答え
が出る問題ではないのですが、今は、先進国で共通して 2%を目標としていま
す。これは何も、単に他にあわせておこうということではなくて、関係国が物
価安定目標を共有することによって同じような物価情勢が成立すれば、長い目
でみた為替市場の安定、為替市場のトレンドの安定につながり、それが金融資
本市場や企業活動の安定につながるという 非常に重要な意味を持っています。
従って、やはり 2%の物価安定目標、これはご案内の通りECBは物価安定の
定義と呼んでいますが、非常に重要だと思っていますし、現在の政府と日本銀
行の「共同声明」を現時点で見直す必要もないと考えています。
(若田部副総裁) 雨宮副総裁がおっしゃったことに加えてという形になりま
すが、現状で色々と研究があることは事実です。例えば、働きたい人がほぼ全
員働けるという意味での完全雇用、あるいは経済学的にはインフレを加速させ
ない失業率はどのくらいかという研究では、例えば 2%の半ばから前半である
という研究があります。この数字そのものは色々とばらつきがあると思います
が、その失業率を達成するのにふさわしい目標インフレ率はどのくらいかとい
う形で逆算していく、つまり雇用の側から望ましい物価上昇率を逆算していく
と、大体それが 2%ではないかという研究が諸々あります。従って、グローバ
ルスタンダード的なもの、あるいは統計上の振れ、あるいは金融政策のある種
の余地を残すというような、そういった理由だけではなくて、やはり 2%その
ものに根拠があるのではないかという感触を私自身は持っています。その意味
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では、次の見直しの議論につながるのですが、私は 2%の「物価安定の目標」
は、日本銀行と政府の「共同声明」で定められたことですので、日本銀行副総
裁としては、まずはこの 2%を達成するということに全力を傾けたいと考えて
います。そのうえで、一般論として申し上げますと、もちろん 2%を 1%にす
るとか、そういった議論というのは考えられないし、望ましくないと考えてい
ますが、世界の中央銀行、例えばBOEやFRBなどでは、危機に対応する経
験なども踏まえたうえで、物価安定目標は何%にすべきなのか、あるいは物価
だけではなくて、他に色々なものをみるべきではないかというような研究が進
んでいるのは事実です。学会や中央銀行において、そのような研究は進んでい
ますので、日本銀行としても、そのような議論や研究をすることは、現状でも
可能なのではないかと思います。ただし、今申し上げた通り、日本銀行として
なすべきことは、まずは 2%を達成するということであり、公式に見直しを考
えているということではないということだけは申し添えさせて頂きます。
(問) 若田部副総裁に伺います。これまでは、教授というお立場で積極的な
金融緩和の推進を訴えてこられたと思います。リフレ派と呼ばれることがあり
ますが、立場が変わってこれから金融政策の担い手となった今、スタンスをこ
れまでと変えずにいくのか、それとももっと客観性を持っていくことになるの
か、ご自身として今どうありたいと考えていらっしゃるのか教えて下さい。
(若田部副総裁) 私は、よくリフレ派と呼ばれるのですが、これは自著でも
書きましたが、リフレ派と呼ばれることには躊躇、内心ちょっと居心地が悪い
ものを感じます。どうしてかというと、私は経済政策というのは、全てある種
の応病与薬であると考えています。つまり、病気があればその病気にあわせて
薬を投与するということです。デフレに対する処方箋はマネーを増やすことで
あって、リフレ政策ですし、非常に高いインフレであるならば、それに対して
処方すべきはマネーの量を減らすことです。全てはこれに尽きるわけなので、
何か特定の集団がいて、それが何か特定の政策を独自の理論で推進しているか
の如き印象を与えるリフレ派という言い方は、あまり好きではありません。標
準的な経済理論からすればデフレの時にやるべきなのはリフレ政策であって、
その意味でのリフレ政策の推進者として私はリフレ派と呼ばれても構いませ
んが、何かレッテルがあるということには違和感があるということです。
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そのうえで申し上げますと、確かに経済学者としてこれまで積極的な
金融緩和を唱えてきたというのは事実です。ただ、これからは副総裁として日
本銀行の内部に入っていきますので、そこで得られる新しいデータや情報、あ
るいは他の委員の方々との議論等がありますので、そういったことを踏まえた
うえで、今自分が考えていることをアップデートする、モディファイするとい
うことは当然あろうかと思います。副総裁になったということのみをもって意
見を変えるということはありませんが、副総裁ということにおいて、先程申し
上げたような色々なこと、あるいは金融の実務知識を得ることによって、私の
知識がアップデートされる、判断がアップデートされていくということは期待
されているし、私自身も期待しているところです。
(問) 金融政策の副作用について伺います。この先も現状の金融緩和が続い
た場合、その効果と副作用のバランスというのがどうなっていくのか気になる
ところです。副作用の方が大きくなる可能性というのをどう考えていらっしゃ
るでしょうか。また、副作用として具体的にどのようなことを考えていらっ
しゃるでしょうか。
(雨宮副総裁) 副作用としてどういうことがあるかということで申し上げま
すと、しばしば金融緩和の副作用として議論される項目として、例えば資産価
格の行き過ぎた高騰、 金融機関経営に対するマイナスの影響、 市場機能の低下、
あるいは家計等利子所得者に対するマイナスの影響といったようなことが議
論されているように思います。
私は常に申し上げていますが、あらゆる政策は常に効果と副作用の比
較衡量をして適切な判断をしていくべきだと考えています。先程、若田部副総
裁から投薬という比喩がありましたが、その意味では医者の投薬と同じです 。
常に効果と副作用の点検をしながら、適切な投薬を考えていくことが基本です
ので、現段階でも私どもは、例えば今申し上げたような項目それぞれについて
常に研究を行い、金融政策決定会合でも議論を行っています。私どもの金融シ
ステムレポートでも、ヒートマップという形で行き過ぎがあるかどうかの点検
を行って公表しています。全ての点について申し述べるのは控えますが、例え
ば金融機関経営に対するマイナスの影響等をとっても、確かにこの低金利が金
融機関経営の負担になっていることは認識していますが、今のところ日本の金
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融機関は非常に厚い健全な資本を有し、かつ信用コストも低下しているという
状況の中で、積極的な貸出態度を維持していますので、金融緩和の結果、金融
仲介機能が損なわれ始めているという段階には至っていないことから、全体と
して考えれば金融緩和の効 果が副作用を上回っている状況であると判断して
います。
(若田部副総裁) 私は国会の所信表明では、金融緩和の副作用についてこれ
まで顕現化していないと述べました。その時の文脈というのは、よく金融緩和
の副作用として、長期金利が急騰するとか、あるいは日本銀行がインフレ目標
を導入するとハイパーインフレになるとか、あるいは金利生活者の収入が大変
になる、と色々なことがいわれたわけです。金利生活者の金利収入が下がって
いるのは事実ですが、世上色々と金融緩和の副作用等がいわれる時に 1 番最初
に挙がるようなことは起きなかったということです。
これから先、金融機関や市場に当然影響は及び得るわけで、そうした
副作用が、金融政策がこれまでもたらしてきた企業収益を増やす、雇用状況を
よくする、 そして各種社会経済データをよくする、 雇用者総報酬も増えている、
といった効果を覆すに至るようなものであるならば、やはり点検すべきであろ
うと考えます。ただ、金利収入の話でも、一般論として付け加えさせて頂きま
すが、経済がよくなると、今度は金利収入以外の収入が増えるということが起
きますので、1つのところだけをとるのではなくて、 経済が全体としてどうなっ
ているのかをみることが、金融政策を運営するうえでの最大のポイントだと思
います。ですから、1 つのところだけをとり上げて、それが副作用だというの
は、やはり金融政策を与る中央銀行の人間としては警戒すべきであって、むし
ろマクロ政策としては経済全体がどうなっているのかをみて、そのもとで政策
の是非を判断すべきだと考えています。
(問) お二人にお伺いします。次の 5 年間も、これまでの 5 年間がそうだっ
たように、2%の「物価安定の目標」を達成できずに、5年間ずっと緩和を続け
る可能性があるのか、そもそもそれが可能なのかどうかを教えて下さい。
若田部副総裁に、2 つ追加で伺いたいのですが、現状やっている緩和
策で 2%の達成は可能だと考えるかどうか、国会では答えを濁したように見受
けましたので教えて下さい。また、必要に応じて緩和の強化を検討するという
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ことですが、強化した場合の副作用、あるいは緩和の弊害というもの、どのよ
うな影響が及び得るとお考えか、教えて下さい。
(雨宮副総裁) まず、今後 5年間にというご質問ですが、今、私どもが目指
しているのは、明確な期限は設定していませんが、できるだけ早く 2%の「物
価安定の目標」 を達成するという考え方ですので、 こうした考え方に基づいて、
適切な政策を運営していくことに尽きます。そのうえで、今の政策の持続可能
性というご質問がありましたが、一昨年の「総括的な検証」を踏まえて、現在
の「イールドカーブ・コントロール」を導入しました。「イールドカーブ・コ
ントロール」の枠組みのもとでは、例えば、国債の買入れ量は金利操作の状況
に応じて増えたり減ったりし、そのものが目標ではなくなっているわけで、そ
の意味で、持続可能な枠組みであると考えています。そのうえで、緩和が長期
化することに伴う様々な問題点や副作用については、慎重に考えていく必要が
あるだろうと思っていますが、まず優先すべきことは、できるだけ早く 2%の
「物価安定の目標」を実現することです。
(若田部副総裁) 私もその点については全く同感でして、やはりできるだけ
早期にこの 2%の「物価安定の目標」を実現することが大事だと思います。で
きるだけ早期に実現する中で、 世上いわれている色々な、出口戦略であるとか、
日本銀行の財務の毀損の問題等、あるいは金融機関の収益の問題も、できるだ
け早期にむしろ解決の方向に向かっていく、よい方向に向かっていくと考えて
います。政策の持続可能性は、やはり、政策手段によって色々とあり得るとは
思いますが、私自身は、基本的には手段を最初から制限することはないので、
その限りにおいて、後は持続性のあるもの、ないものを適宜取捨選択すること
はあり得るかもしれませんが、最初から打つ手はないということにはならない
と考えています。
私に寄せられた 2つの質問ですが、現状でどうかについては、金融政
策決定会合で、きちんと他の委員の方々と議論したいと考えていますので、現
状での評価は差し控えさせて頂きます。
2 番目に、強化の手段として何があるのか、そしてそれが弊害等をも
たらすのではないかということについてです。1 番目の質問に少し関わります
が、どのような手段を採るかによって変わってくるというのが 1 番簡単なお答
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えかと思います。私は、緩和の手段はあると思いますが、そうした手段の効果
と副作用のバランスをとった判断、評価が求められてくるだろうと 思います。
(問) 「イールドカーブ・コントロール」について両副総裁にお尋ねします。
黒田総裁は「イールドカーブ・コントロール」は柔軟な枠組みであり、物価2%
の実現まで一切変わらないわけではない、という発言をしていますが、お二人
は 2%達成前でも長短金利目標の引上げはあり得るとお考えでしょうか。その
うえで、あり得るとお考えの場合には、それは金融政策の正常化や出口戦略の
一環と考えてよいのか、そうでない場合はどのような狙い、位置付けで引き上
げるということになるのか、ご説明をお願いします。
(雨宮副総裁) まず「イールドカーブ・コントロール」という枠組みのもと
で、適切なイールドカーブの形状を判断するのは毎回の金融政策決定会合で議
論して判断するということでありますし、この政策は 1940 年代に米国が行っ
たような金利ペッグではありませんので、 概念的に、 あるいは理論的には、 イー
ルドカーブの調整という可能性は排除していません。ただし、それがどういう
状況で適切な政策となるかについては、全体として 2%の「物価安定の目標」
を実現するという政策目標の実現可能性との関係で議論していくべきことで
あり、今の段階で、2%の「物価安定の目標」の実現の前に、そのようなこと
を行う可能性があるかどうか、ということを議論するのは本当に時期尚早だと
思います。少なくとも、現段階においては、そのようなことを検討する状況で
はないと私は考えています。
(若田部副総裁) 非常に重要なことは、日本銀行として、2%の「物価安定
の目標」を達成するという目的を共有したうえで、いかなる政策手段が最も適
切なのかということの考察、そして絶えざる評価ということになると思います。
そのもとで、「イールドカーブ・コントロール」をどうするかということは、
これは政策のかなり技術的な問題になりますので、現段階ではコメントを差し
控えさせて頂きます。ただ、とにかく 2%を達成するんだということで、日本
銀行は金融政策を行うべきだと思いますし、行っているということですので、
そのもとで色々な政策について、その時々で判断されるだろうということは付
け加えさせて頂きます。
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(問) 先程、雨宮副総裁は、2%の実現に対して具体的な年限を区切っては
いないというようにおっしゃっていましたが、黒田総裁は今回の国会の所信聴
取において、2019 年度には確実に出口の検討に着手しているだろうというよう
なことをおっしゃられていました。実質的には、来年度ということだと思うの
ですが、この時間軸の実現可能性に関して、両副総裁はどのようにお考えで
しょうか。
(雨宮副総裁) 時間軸といいますか、今の見通しということで申し上げます
と、直近の1月の金融政策決定会合において議論して決定された、私どもの展
望レポートにおいては、2%程度を実現する時期について 2019 年度頃とし、た
だし下方リスクがある、という判断をお示ししました。その後のデータ、ある
いは経済情勢の展開で、この判断が変わるのか変わらないのかについては、次
回の4月の金融政策決定会合は展望レポートを検討する回ですから、そこで入
手可能な内外の様々な情勢やデータを十分点検して、他の委員方と議論して判
断していきたいと思っています。
(若田部副総裁) 「イールドカーブ・コントロール」は確かに持続性のある
政策であり、その意味ではある種の時間軸政策に近いとも評価できるとは思う
のですが、ただ実際に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によって2019
年度頃に目標を達成できるのかということについては、まさに金融政策決定会
合で議論したいと思います。先程申し上げたことですが、私は経済学者として
色々な主張をしてきましたが、日本銀行に入ったところで、今度は様々なデー
タをみて、 また謙虚に自分の知識、 判断をアップデートしたいと考えています。
(問) 日本銀行法の改正 20 年ということで、独立性の話です。黒田総裁に
なられてから政府との関係が良好とよくいわれるところと思いますが、一方で、
国債の保有比率が 4 割を超え、異例の政策といわれるETFの買入れも増える
一方であるともいわれています。こういう状態をもって、政府との一体化とい
いますか、従属化的な方向に進んでいるではないかという批判もあろうかと思
います。 そういう懸念について、 お二人はどう思われているのかお伺いします。
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(雨宮副総裁) 2013 年の「共同声明」では、日本銀行と政府のそれぞれの責
務が明らかにされており、ご指摘のような、どちらがどちらに従属ということ
ではありません。日本銀行は日本銀行として、物価安定の実現を目指します。
政府は政府として、適切な財政運営や構造政策、成長力の強化に努めますとい
う合意になっています。その合意のもとで、この間の政策は、国債の大量購入
であれ、ETFの購入であれ、「物価の安定」の実現という中央銀行の目的を
実現するために、独立した中央銀行として決定してきています。従って、私は
今のようなご懸念はあたらないと思いますし、今後とも中央銀行として、日本
銀行法で定められた中央銀行の責務を果たすために努力をしてまいりたいと
考えています。
(若田部副総裁) 私は、日本銀行の政策は、20 年近く続いてしまったデフレ
という極めて異例な状況を如何に打破するか、そこから如何に正常な経済の姿
――つまり他の先進国であるならば、マイルドなインフレ、大体 2%くらいが
続いているので、そうした本当の意味での正常な経済の姿――へと如何に戻っ
ていくのかという、長い歴史の中の 1 コマであると考えています。そして、そ
こで採られている一見異例と思われる政策は、20 年近く続いてしまったデフレ
が異例な事態だったので、それを正常化するために必要な手段だと評価してい
ます。日本銀行の場合、現在、政府が発行している長期国債の 4 割を保有して
いることをもってこれを異例であるという方もおられます。しかし、私は、例
えば政府と一体化ということではなく、日本銀行として金融政策を行うのに最
もふさわしいのは何かと考えた時の選択肢が、長期国債の大量購入であるとい
うことだと思います。その意味で、政府との一体化、あるいは俗にいわれる財
政ファイナンスは起きていないと思います。日本銀行は日本銀行として、2%
の「物価安定の目標」を達成するために必要な政策をやっているということだ
と思います。その必要な政策とは、20 年近く続いたこの異常なデフレ経済を正
常な経済の姿に戻すために必要な政策であると考えています。
(問) 若田部副総裁に伺います。同じリフレ派という言葉でくくられるのは
本意ではないというお話がありましたが、岩田前副総裁、リフレ派の象徴とも
いわれた方の評価なのですが、日本銀行のマインドを変えたというようにおっ
しゃる方もいれば、最終的に考え方が進化したというお話をされて変節したと
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いうような指摘もあるのですけれども、どのように評価されていますでしょう
か。
(若田部副総裁) 岩田先生は私の尊敬する大先生でして、その先生を評価す
るとはまたおこがましい話とは思いますが、ただ実績をみれば、それは一目瞭
然です。日本銀行内部での議論は私にも詳らかではありませんが、岩田前副総
裁も加わった日本銀行の執行部である、黒田総裁、中曽前副総裁、岩田前副総
裁のもとで、日本銀行がここまでの業績を上げていることは事実だと思います。
物価に関しては、日本銀行が参照している基調的なインフレ率でも、CPIを
色々な形でみても、デフレの基調があった時代はもはや終わり、デフレではな
いというところまできた、その過程において、これまで色々と問題のあった雇
用の面でも非常にいい成果を出している、といった実績を上げたことは第 1 に
特筆すべきだと思います。
(問) 雨宮副総裁に伺います。先程、過去 20 年にわたってほぼ一貫して、
デフレとの戦いに従事されてきたというご発言がありましたが、その 20 年と
は、いわば非伝統的と いわれるような金融政策を新しく模索していく歴史で
あったと同時に、緩和政策を一旦解除するような局面もあったと思います。そ
うした 20 年にわたるデフレとの戦いを振り返って、非伝統的な政策を推進し
たり解除したりという中で、新たに発見され確認されたこと、あるいは非常に
誤算だったことといった辺りについて、非伝統的な政策をこの時点で総括して
ご所見をお聞かせ下さい。
(雨宮副総裁) ご指摘の通り、私はゼロ金利時代から色々な形で、この間の
デフレ克服の戦いに関連した仕事をしてきました。その時その時の局面で、ゼ
ロ金利といい、当初の量的緩和といい、あるいはその間の包括緩和といい、世
界で最先端の政策を議論して導入してきたと、その意味では精一杯戦ってきた
という気持ちはあります。一方で、この20年間といいますか、5 年前のその前
までを振り返 ってみますと、デフレを克服するために必要なことは、需給
ギャップの改善や賃金の上昇と同時に、非常に難しい大事な課題は、人々に定
着してしまったデフレマインドをどうやって転換するかであり、実は一番大き
な課題だったように思います。それまでの金融政策運営で、もし不十分であっ
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たところがあるとすれば、そうした人々の期待形成への働きかけかもしれない
と思い、黒田総裁の就任時に「量的・質的金融緩和」の策定作業に参画した際
には、そうした問題意識を持って、政策の企画立案に参画したつもりです。そ
の意味で、デフレ脱却のために最も必要なことは、需給ギャップと人々の物価
観と賃金であると先程申し上げましたが、そうした考え方を強固にしたのが、
この20 年間の結果だったと思います。
(問) デフレについて伺います。先程からお話を聞いていると、雨宮副総裁
はデフレが 20 年続いたとおっしゃり、若田部副総裁は20 年近くとおっしゃい
ました。 黒田総裁は15 年とおっしゃることもあるのですが、 一体デフレとは、
いつからいつまでを指しているのかお伺いします。
また、先程、若田部副総裁が「持続的に下落が続くという意味では 、
デフレではなくなった」とおっしゃいましたが、それは最近の話ではなくて、
かなり前からCPIなどは 0%台で安定していて、持続して下落している状態
ではない。この状態をもってなぜデフレ脱却といえないのか、2%が絶対目標
になっていないのか、その点についてお二方にお伺いします。
(雨宮副総裁) デフレの期間ですが、私は、20 年と申し上げたのはぴったり
何年から何年まで 20 年というよりは、おおよそ20 年というつもりで申し上げ
ました。デフレの期間の定義については、多分、経済学者の実証分析では、大
体 1997 年、1998 年頃から始まったという分析や考え方が多いのではないかと
思いますので、そこから厳格に計算すると、2014 年とか 2015 年までですと、
16 年とか 17 年ということになるかもしれませんが、それを全体としてざっと
とらえるのに two decades というつもりで申し上げました。
それから、この間、ほぼ基調的に物価がプラスになったのはこの4 年
間ですが、その前の、例えば15 年か 16 年を平均すれば、CPIはマイナスで
すし、CPIのマイナス幅は平均して小幅かもしれませんが、GDPデフレー
ターはもっと大きなマイナスですので、やはり、物価の継続的な下落という意
味でデフレの状況だったと思います。また、デフレで はなくなったけれども、
デフレ脱却かどうかについては、2006 年に政府が考え方を述べられており、そ
のいくつかの条件に基づいて判断していくことになろうと思いますが、私ども
が目標としている 2%とは 「物価安定の目標」 ですので、 デフレの脱却とイコー
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ルではないわけです。先程申し上げましたが、物価安定の考え方をいくつか整
理すると、2%ぐらいが適当であるというのが、今、先進国共通の考え方です
ので、それを目指しているということです。
(若田部副総裁) デフレの定義をどうみるかは、いくつか議論があるのです
が、先程、雨宮副総裁がおっしゃっているように、政府の条件の中の 1 つに
GDPデフレーターがあります。GDPデフレーターでみると、1994 年第 3 四
半期と第 4 四半期ぐらいから、 マイナスに転じています。CPIでみると、1997
年、1998 年、あの時に消費増税をしているのでその影響もあって、多少、デフ
レへのとば口がみえにくくなっているという議論もあります。ですので、
GDPデフレーターでみると、1994 年ぐらいから考えて 2013 年頃までとする
と、大体 20 年というような感じです。また、CPIでみると、20 年近くとい
う形になります。それが私の 20 年という数字の根拠です。
2 点目ですが、平均するとマイナスですが、その間にどのようなこと
が起きたかというと、リーマン・ショックが起きたり、デフレがひどくなった
時期があったことも事実でして、そうしますと、やはり物価が安定していると
はとてもいえないだろうと思います。平均すると確かに安定してみえる局面も
あったかもしれません。しかし、例えば、実感なき景気回復といわれたような
時代、あの頃は確かにマイナスではあるけれども安定するということが起きて
いますが、全体としてみると、1998 年に落ち込んだところ、そしてリーマン・
ショックで落ち込んだところ等々と、ボラティリティというか変動があったの
は事実ですので、やはり「物価の安定」を達成してきたとはいえないのではな
いかと思います。2%は、政府と日本銀行の「共同声明」で掲げられた目標で
すので、日本銀行としては粛々と実現するしかないと考えています。ただ、私
自身は、もともとは日本銀行法にも書かれているように「物価の安定」が目的
ですので、物価が安定しているというのはどれぐらいの期間なのかという、デ
フレの定義に近いような問題が起きると思っています。これはまだ、詳細には
議論されていないと思います。やはり「安定」という時に、デフレに陥る危険
性がないという辺りは政府が判断すると思いますが、日本銀行として、デフレ
から脱却して 2%に到達して、それから後の話をどうするか、例えば、多少オー
バーシュートすることを認める、物価が上振れすることを認める等々あります
が、安定的にどう達成するのかについてはまだ議論がないと、私には外からは
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みえますので、その辺りはきっちりと皆さんと議論していきたいと考えていま
す。
(問) 両副総裁にお伺いします。2014 年の消費増税の影響について、岩田前
副総裁は色々なところでご指摘されていまして、最後の会見では非常に力説さ
れていました。具体的には、消費増税なかりせば、 2%を達成できたというわ
けです。この岩田前副総裁のお考えについて、黒田総裁は全く違う考えだと思
うのですが、両副総裁はどのように受け止めていらっしゃいますか。
(雨宮副総裁) 今ご指摘された、黒田総裁の考え方は全く違うということで
はないのではないでしょうか。 一昨年の 「総括的な検証」 でもまとめたように、
なぜ 2%がこの間に達成できなかったかということについては、消費税増税後
の消費の低迷や原油価格の低下といったマイナスのショックのもとで、人々の
物価上昇期待が低下したということが大きな要因であるということを申し上
げていますので、同じ理解だと思います。ただ、その点で1 つ申し上げておき
ますと、 時々このような説明をするとよく怒られるのは、 日本銀行は2%の「物
価安定の目標」を達成できなかった理由を消費税や原油価格など人のせいとい
うか、エクスキューズをいっているじゃないかといわれるのですが、これはそ
ういうことではなくて、私どもがやろうとしているのは、先程も少し申し上げ
ましたが、人々に根付いてしまったデフレマインドを転換して、人々の物価観
を世界標準である 2%程度にアンカーする、錨をつけるということです。例え
ば、原油価格が下がったり、消費税増税のショックがあれば物価の見通しが下
がるのは当たり前ではないか、とみなさん思われるかもしれませんが、意外と
これは当たり前ではありません。例えば、米国や欧州では、原油価格が下がっ
ても――原油価格は大きくみれば上がったり下がったりするものですから
――、人々の中長期的な予想物価上昇率は必ずしも下がらない、それがよく物
価予想がアンカーされているという状況です。私どもがつくろうとしているの
は、そうした形で人々の物価の見方がアンカーされている状況であり、これま
でそれができなかったということを申し上げているわけです。何か責任を他に
転嫁しているということではないと、私は理解しています。
(若田部副総裁) 補足になりますが、デフレマインドが蔓延しているという
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ことの裏返しで、実は物価の足許の数字に対して人々の予想物価が異常に敏感
に動くということがあります。これは 2016 年 9 月の日本銀行による「総括的
な検証」の結論の1 つです。つまり、原油価格の下落であるとか、新興国経済
の低迷、あるいは消費税増税によるその後の消費需要の低下といったことが、
なぜ「物価の安定」にとってダメージがあるのかというと、1 つにはやはり日
本経済においては、家計が非常に足許の数字に対して敏感に動くということが
挙げられます。従って、これが何とか 2%のところにアンカーされていかない
と、私は出口戦略を大っぴらに議論するのは難しいのではないかと考えていま
す。これが、FRBが出口戦略を早めに出しているのに、なぜ日本銀行は出さ
ないのかということに対する答えでもありまして、まさにFRBの場合は 2%
で予想物価上昇率がアンカーしているもとで、QE1、QE2、QE3と行っ
ていく中でも、2%のアンカーはずっと維持されてきたわけです。 それに対し、
日本の場合は、2%にアンカーするというところでまだ十分ではありません。
そういった違いがあるので、日本銀行としては 2%の目標を目がけて今後とも
金融緩和を続けていくことになると考えています。
以 上