1
20 2 6 . 8 . 10
日本銀行
金融政策決定会合 における主な 意見
(2026年7月30、31日開催分)1
Ⅰ.金融経済情勢に関する意見
(経済情勢 )
⚫ わが国経済は、 中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみ
られるが、緩やかに回復している 。2026 年度は、原油価格上昇
が下押し要因となる ものの 、グローバルなAI関連需要 や政府
の各種施策など に支え られ 、伸び率を縮小しつつも、緩やかな
成長を続けるとみられる。 2027 年度以降は、原油高のマイナス
の影響が減衰し、成長率を緩やかに高めていく と考えられる 。
⚫ 世界的な AI 関連 需要拡大によるディマンドショックで経済が
上振れるもと、原油価格上昇に伴う交易条件悪化は緩和され、
景気減速懸念は後退している 。
⚫ 経済に 対して は、中東情勢が下押し 方向 、AI関連需要の拡大
が上押し 方向 、円安は両方向に働く 。
⚫ 先日の支店長会議で 報告されていたように 、AI 関連需要の 裾
野が予想以上に広がっている ほか、個人消費についても、 株価
上昇に伴う 資産効果による高額品の 販売 好調など、底堅い動き
がみられている 。
⚫ AI関連企業の将来の収益性に対する期待が後退し、株式市場
が大幅に調整する場合に、経済が下振れる可能性がある点につ
いて、十分な注意を要する 。
⚫ わが国は、大きな外部ショックに対し、内需が大きく落ち込み
物価の伸びも弱まったという経験をもつ。しかしながら、米国
1 「金融政策決定会合における主な意見」は、①各政策委員および政府出席者が、金融政策決定
会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出
する、②議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したもの
である。
公表時間
8月10日(月)8時50分
2
の関税 政策や中東情勢に対して、わが国経済は底堅さを みせて
いる。
⚫ 政府はいわゆる「責任ある積極財政」を掲げた「経済 財政 運営
と改革の基本方針 2026 (骨太方針 2026 )」を閣議決定したが、
この政策は 国内の生産・雇用・実質所得 および 物価上昇率 を引
き上げると考えられる。
⚫ 本年 6月以降、昨年までのグローバルな利下げ局面から利上げ
局面に転じ たことで、わが国を取り巻く金融環境に大きなレ
ジームの転換が生じている。
(物価)
⚫ 基調的な 物価 上昇 率は、 賃金 と物価が相互に参照しながら緩や
かに上昇していくメカニズムが維持される もとで 、徐々に高ま
っていく とみられ 、2026 年度後半から 2027 年度にかけて 「物
価安定の目標」と概ね整合的な水準 とな ると考えられる 。
⚫ 基調的な物価上昇率が2%に近 づいていることを踏まえると、
今後は、 「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点
から、 これ が2%程度の水準で定着するかどうかを確認してい
くことが重要となってくる。
⚫ 物価に 対して は、中東情勢 、AI関連需要 の拡大、 円安 いずれ
も上押し方向に働く。
⚫ 国内の物流費や包装材、食品トレーの価格の上昇などを踏まえ
ると、 秋口に向けて最終消費財の値上げの再加速が見込まれる。
⚫ 中東情勢は引き続き不透明だが、一方で 、原油価格やナフサの
指標価格は4月のピーク時からは下落している。輸入物価の上
昇から国内企業物価も上昇しているが、消費者物価は政策効果
もあって引き続き2%を下回っている 。
⚫ 原油市場は、滞留していたタンカーがペルシャ湾外に出たこと
に伴う供給増などから需給がバランスしている。もっとも、こ
うした一時的な要因が剥落すれば、需給が再度タイト化するこ
とも考えられる 。
⚫ 円安に加え、地政学的 リスクや 気候変動リスクが輸入価格の 上
昇要因 となっている。強いAI関連需要も財・サービスの価格
上昇に繋がり 得る。見通し期間を通じ、物価上昇リスクを意識
している。
3
⚫ 原油価格上昇の消費者物価への今後の波及、供給不足・需要超
過にあるわが国の需給 ギャップ等を考えると、物価には大きな
上振れリスクがある。加えて、グローバルなAI関連需要や各
国の拡張的な財政政策が、更に需要を増やし、一段と物価を押
し上げ得る。
Ⅱ.金融政策運営に関する意見
⚫ わが国の金融環境をみると、景気 に及ぼす 影響が大きい短期の
実質金利はマイナス となっているほか、 金融機関の貸出態度 は
引き続き積極的である 。この間、銀行 貸出 は伸び率を高めるな
ど、企業等の資金需要は増加している。これらの動きを踏まえ
ると、金融環境は 緩和した状態が維持されている 。
⚫ 金融環境の評価に当たっては、規律ある投資 計画 のもとでの 資
金調達となっているかなども踏まえるべきである 。
⚫ 利上げの影響が、インフレ率と国内経済を下押しする形で波及
するまでには、1年から1年半程度のタイムラグが存在すると
みられる。 前回会合での利上げの影響を慎重に見極めるために、
今回は政策金利を据え置くことが妥当である。
⚫ 基調的な物価上昇率が2%に近づいている中、現在の金融環境
が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応
じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整
していくことが適当である 。
⚫ 金融緩和度合いの 調整のタ イミングやペースについては、中東
情勢や AI 関連需要 の拡大 、為替相場の変動 などの影響もよく
みたうえで検討していくことが適切である。その 際、物価の基
調の上振れリスクに十分注意すべき局面になっている。
⚫ 基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振
れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及
ぼすことがないよう、金融政策運営においては、基調的な物価
上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要に
なる。
⚫ 金融政策運営において 、先行きの基調的な物価上昇率が「物価
安定 の目標」 と整合的なかたちで安定していくかどうかを評価
するうえで は、このところ上昇してきた中長期的な予想物価上
昇率が2%程度で安定的に推移していくかを、注意深く確認し
4
ていく必要がある。
⚫ 基調的な物価上昇率が2%に近 づく中、物価の上振れリスクに
はこれま で以上に配慮する必要があることを踏まえると、 経済・
物価・金融情勢 によっては、利上げのペース が市場の想定より
早まることも考えられる 。
⚫ わが国の基調的 な物価上昇率は2%ぐらいで定着しつつある。
金融環境が依然として緩和的なもと、物価上昇リスクに特に留
意し、機動的に政策金利を調整することが重要 である 。
⚫ 正確な中立金利が分からないとしても、幅広く示された推計レ
ンジの下限を下回る政策金利を引き上げて、金融政策の正常化
に目途をつけ、政策判断の機動性を確保していく必要がある。
⚫ グローバルな利上げ局面に転じる中、一定の利上げペースにと
らわれず、海外の金融環境の転換にも応じた機動的対応や利上
げ幅の議論が必要となる新たな局面に転換した。 実体経済の下
振れ不安が後退し、夏場 以降、 インフレ圧力が顕在化し得る状
況下、従来の基調的物価の上昇を促すスタンスから一転し、物
価の上振れを防ぐ意志を明確に市場に示す必要がある。
⚫ 物価の上振れリスクが顕在化すると、わが国経済や国民生活に
大きな打撃を与える うえ に、その後、急激・大幅な利上げを余
儀なくされ、二重でショックを与えることになる。金融政策の
焦点は、 「基調的な物価上昇率の2%への引 き上げ」から「基調
的な物価上昇率の更なる上振れの回避」に局面が変化した。 「待
つことのリスクが小さい」とは言えず、金融緩和度合いの 調整
をペースアップする必要がある。
⚫ 7月上旬に長期金利は上昇したが、最近 の金融市場で は、日々
の市況を動かす要因として 各国の政策 の動向が注目されている。
5
Ⅲ.政府の意見
(財務省)
⚫ 熊本地震については、人命第一の方針のもと、総力を挙げて対
策を講じていく 。
⚫ 「骨太方針 2026 」に基づき、市場の信認確保に配意しつつ、 「強
い経済の構築」と「財政の持続可能性」を一体的に実現してい
く。
⚫ 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、内外の経済情勢等
を十分に注視し、 市場とのコミュニケーションを図りつつ、 2%
の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政
策運営を期待する。
(内閣府)
⚫ 熊本地震の生業や経済への影響を注視 してい く。
⚫ 政府は経済財政が新たな局面を迎える中、 「骨太方針 2026 」に
基づき、責任ある積極財政の もと 、強い経済の構築と財政の持
続可能性の同時実現、コミュニケーション強化を通じ、市場の
信認を確保 する。
⚫ 強い経済の実現に向けては、安定的な物価上昇の実現に資する
適切な金融政策運営が非常に重要 である 。日 本銀行には、政府
と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的 ・安定的な実現
に向け、適切な金融政策運営を期待 する 。
以 上