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野口審議委員記者会見(6月22日) [PDF 205KB]

SPEAKER記者会見(6月22日)

PUBLISHED23/06/2023, 00:00:00
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2023年6月23日

日本銀行

野口審議委員記者会見

――2023年6月22日(木)午後2時から約30分

於 那覇市

(問)

質問二点させてください。今日のですね、県内の金融機関とか経済団体と、どのよ

うな議論だったり、意見交換がなされたのかというところが一点と。

もう一つは、それを踏まえてですね、沖縄県経済における課題だとか展望、また期

待する点などがあれば教えてください。

(答)

それではお答え致します。本日の懇談会では、沖縄県の行政や経済、金融の各界を

代表する方々から、地域経済の現状や課題に関する貴重なお話や、日本銀行の金融

政策運営に関するご意見等を数多く頂きました。大変有意義な意見交換ができたこ

とについて、この場を借りて、懇談会にご出席頂いた方々や、関係者の皆さまに深

く御礼を申し上げます。本日の懇談会での話題の全てを網羅することはできません

が、席上で聞かれたご意見などを整理して申し上げます。

まず、沖縄県の景気についてです。当地経済は、新型コロナウイルスの感染拡大が

長期化したことにより厳しい状況が続いたものの、昨年度以降は、感染症の影響が

和らぐもとで、基幹産業である観光の回復が牽引するかたちで県内景気は回復して

いる、といった趣旨の話が聞かれました。こうした中、県内企業の設備投資スタン

スは積極化しており、また、雇用所得情勢も改善しているとの声が聞かれました。

もっとも、人手不足が顕著になってきており、回復する需要を取り込みきれていな

い企業があるとの指摘も聞かれたところです。

そのうえで、景気の下押しリスクとして、既往の資源高を背景とするコストや物価

の上昇に留意が必要であるとの声が多く聞かれました。コスト上昇については、中

小企業を中心に収益の圧迫要因になっているとの指摘がありました。また、物価上

昇が今後消費者マインドを下押ししないか懸念する声も聞かれました。これに関し

て、適正な価格転嫁を行うことができる環境整備を進めることが重要とのご意見が

聞かれたほか、沖縄県や経済界では、コストや物価上昇による負担を軽減するため

の取り組みを行っているとのお話を伺いました。当地の課題としては、生産性、す

なわち稼ぐ力を向上させていくことを挙げる 声が広く聞かれました。生産性向上は、

人手不足の問題を克服するためにも重要です。この点、新たな沖縄振興計画である

「新・沖縄 21 世紀ビジョン基本計画」では、「県民所得の向上に繋がる『稼ぐ力』

の向上」を基本施策の一つに掲げていると伺 いました。こうしたビジョンのもとで、

当地では、行政、経済、金融の各界が協働して、DXの推進やイノベーションの促

進を図る取り組みを進め、生産性の向上を目指しているとの話を伺い、大変心強く

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感じました。金融機関の方々からは、実質無利子・無担保融資の返済が本格化する

中、よりきめ細かく取引先の経営状況を把握し、サポートしていきたいとの声が聞

かれました。また、取引先の様々な経営課題を解決すべく、本業支援をはじめとし

た、コンサルティングサービスの充実に努めているといったお話も伺いました。日

本銀行の金融政策運営に関しては、政策の効 果と副作用を比較衡量しながら、経

済・物価・金融情勢に応じた適切な判断をお願いしたいとのご意見を頂きました。

日本銀行としては、今後も、那覇支店を通じて、当地の経済・金融情勢に関するき

め細かいモニタリングを続けるとともに、当地経済の持続的な成長に向けた取り組

みや金融システムの安定性の確保を後押ししていきたいと考えています。

二番目の問いですね、沖縄県経済における展 望や課題、期待する点についてですが、

先行きの沖縄県経済の展望ですが、既往の資源高による下押し圧力を受けつつも、

感染症の影響が和らぐもとで、回復が続くと考えています。この点、5月8日から、

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ 5 類に

変更されたことは、マインド面を含めて、観光や消費といった需要を一段と押し上

げる方向に作用すると予想しています。そのうえで、懇談会の参加者の多くが指摘

していた点ですが、当地経済の課題としては、人手不足の克服が挙げられます。こ

の点、県内企業の多くは、人手不足への対応として、賃上げを含む人的投資やDX

をはじめとする省力化投資を行うことなどで 、生産性の向上に取り組んでおります。

また、行政や金融機関、経済団体もこうした企業の取り組みを支援するための様々

な施策を講じています。産業振興という点では、今後、沖縄県経済が発展を続けて

いくためには、基幹産業である観光の魅力を更に高めていくことが大事であると考

えます。当地は、豊かな自然環境に恵まれ、また、伝統に根差した独自の文化を有

しています。観光業の振興という点では、当地はきわめて有利な環境にあります。

これに加えて、新たな産業のすそ野を広げることも、当地経済の強靭性を高めるう

えで望ましいことです。この点、当地では、情報通信関連産業の支援、アジアに近

いという当地の特性を活かした国際物流拠点の形成、スタートアップやベンチャー

企業の育成など、様々な新しい産業の振興が進められています。当地には更なる経

済的な飛躍が可能な潜在的な力があります。生産性向上に取り組み、観光をはじめ

とする産業振興を推し進めることで、沖縄県経済が一段と発展を遂げることを期待

しています。

(問)

この間、4 月の会合で発表のあった金融政策の長期レビューのことについてお聞き

します。金融経済懇談会の場も通じてレビューの意見収集をされるっていうことだ

と思いますけれども、今日の場で金融政策の振り返りっていう意味で、どういう意

見が参加者の方から聞かれたかってご紹介頂ければと思います。それをレビューに

どのように活用されるのかっていうことについても、併せてお願いします。

(答)

それではお答え致します。今回の金融経済懇談会では、私から多角的レビューの問

題意識などについてご説明したうえで、過去 25 年間における経済・金融を巡る環境

変化の中での、県内の企業や金融機関の行動変化についてお伺いし、ご意見を頂き

ました。具体的にどのような意見があったのかということですが、過去 25 年間に実

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施してきた各種の非伝統的金融政策は、当地の景気を下支えするうえで一定の効果

があったなど、全体として評価できるとのご意見が聞かれました。また、この 10 年

間の大規模な金融緩和のもとで、デフレではない状況になったことを指摘する声も

聞かれました。一方で、25 年間の非伝統的金融政策にもかかわらず、なお 2%の物

価安定目標の実現に至っていない点に関しては、企業や家計の間に定着したデフレ

マインドの根強さや、わが国経済の成長力が高まらなかったこと、などをその背景

として挙げる声が聞かれました。また、この 25 年間、低金利環境が続いたことの副

作用として、金融機関収益に対して累積的な下押し圧力が加わるもとで、金融機関

の競争が激化し、リスクテイクが前傾化したことを指摘するご意見がありました。

こうしたご意見も踏まえながら、引き続き、多角的レビューの作業を進めて参りた

いというふうに思います。

(問)

二点お伺いします。一点目なんですけれども、午前の講演でですね、金融緩和継続

を通じて、賃上げのモメンタムをより強固なものとすることが最も重要と、そのよ

うに発言されました。モメンタムの強まりを確認するにはですね、様々な要素があ

ると思うのですが、野口委員は、来年の春闘、これを確認することが、やっぱり最

低限必要とお考えなのか、ということが一点目です。

二点目はですね、円安についてです。円安の影響はですね、主体によって様々だと

思いますけども、同様に円安が進んだ昨年秋に比べてですね、インバウンドの拡大

とか、株価の上昇とか、いわゆるプラス面というものもそれなりに広がっていると

思うのですけれども、コロナ禍からの環境変化ということも踏まえて、円安の功罪

につきまして、野口委員どのようにお考えか、お願い致します。

(答)

まず最初の賃上げのモメンタムというものをどういうふうにとらえるか、というこ

とでありますけれども、今春闘に関しては 30 年ぶりの賃上げということが実現され

まして、これが重要なのは、一回で終わってはならない、これが継続的に続くとい

うことが 2%の物価安定目標を安定的・持続的に達成するための非常に重要な条件

になるということをお話ししたわけであります。そういう意味で、来年、これを更

に上回るということが、できれば望まれる、というふうに私は考えております。と

いうのはですね、今年 30 年ぶりというふうに、賃上げが確かに実現されたのですが、

基本的なベースアップでみますと、まだ 2%をやや上回る程度であるということで

ありまして。これでもですね、これまでは春闘で、少なくともベアだけでみますと

せいぜい 0%台という状況であったわけで、非常に、なかなか難しい状況で、賃金

と物価の好循環の実現という、そういう大きな目標からすればですね、非常にまだ

距離が遠いなという状況だったのが、相当近づいたということは事実であります。

しかしながら、そうはいっても、物価目標 2%でありますから、これを持続的に達

成する、名目賃金が 2%上昇するというだけでは、やはりこれは実質的には、実質

賃金としては全然上昇しないということになりますので、やはり 2%を上回るよう

な、物価目標を上回るような名目賃金の上昇というのが必要であるというふうに、

個人的には考えています。私の午前の講演でもお話ししましたように、実は日本の

労働生産性の上昇率というのは決して見劣り をしていない。時間当たりでみますと、

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アメリカを上回っていると。1%を超えているわけですから。本来ならこのぐらいの

実質賃金上昇が実現されてしかるべきであるということを考えますとですね、やは

り 3%、あるいはそれを上回るぐらいの賃上げというのがなければ、実質賃金が 1%

を上回って上昇するという経済には至っていきませんので、やはり今年 1 年ではだ

めで、むしろこれを上回るぐらいの賃上げというものが、来春闘で実現されるとい

うことが非常に重要であるというふうに私は考えております。それは本当に実現可

能なのかどうかと、これはなかなか、やはり難しい問題が、いろんなリスクがある

というのは事実でありまして、特に海外経済の状況、特に海外では高インフレの抑

制のために金融の引き締めを続けている国が多いわけでありまして、これが徐々に

やはり効いてき始めているということで、海外経済は来年にかけておそらく減速し

ていくであろうという基本的な見通しを持っておりますので。その中で、いかに内

需の拡大によって日本経済全体の回復基調を維持するかというのが非常に重要な課

題になっているというふうに私は思いますので、やはりその点が今後、私自身が注

目するポイントであります。

それから二番目でありますが、円安をどうとらえるかという問題でありますけれど

も、ご指摘頂いた昨年後半きわめて急速に円安が進んだ状況というのは、やはり相

当に急速に、一時 1 ドル 150 円ぐらいまでの円安が進みましたので。これはやはり

かなり急速過ぎる円安が進んだということで。まず最初に、やはり為替というのは

当然メリットとデメリット両方あるわけであ りますけれども、その影響というのは、

まずは物価に反映されると。これは家計にとってはですね、やはり物価が上がって

くるという、それだけを取れば非常にこれは困ったことであるということになりま

すので、このデメリットという面が非常に強く顕在化した状況であったということ

は間違いないと思います。ただし、円安というのは、為替というのはそれだけでは

ありません。企業の側にとっては、いくつかのメリットもあるわけであります。具

体的には、海外の収益が拡大するということがあります。あるいは、インバウンド

ですね、5月からですね、コロナの5類への移行ということによってインバウンドが

急激に拡大するという中で、円安というのが、インバウンドの拡大をもたらす一つ

の大きな要因となっていることは間違いないということでありますので、これはや

はりプラス面であるというふうに考えます。もう一つは、もっと大きなものとして

私が期待しておりますのは、設備投資の動きですね。これは半導体を中心としてで

すね。今、若干、半導体サイクル、どちらかというと停滞気味の状況ではあります

けれども、これは底打ちをしてくるとなると、今度半導体の生産というものが拡大

していく、その波に乗るというためには、この半導体産業が日本国内でも復活して

くるということが非常に期待できるわけでありますけれども、そのためには半導体

を中心とする設備投資が拡大するというこの流れがですね、これからますます強ま

ってくるということが必要になってくるわけであります。その面では、これまで円

高局面では、製造業の生産拠点の海外移転ということが実際にかなり起きておりま

して、その中で、産業の空洞化ということがかなり深刻な問題としてあったわけで

す。けれども、この円安基調がある程度続くことによって、また再び製造業の生産

拠点が国内回帰してくる、工場を新たに作るときに今度国内で作るという流れとい

うのが強まっていくというのが今後は期待できるというふうに考えますので、そう

いう意味では、今、ようやく円安の悪い面だけではない、ある種のメリットの面も

少しずつ顕在化しているということは言えると思います。ただ、これは重要な点で

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すけれども、金融政策というのはあくまでも、為替を動かすということを目標にし

ているわけではありませんので、全体として、国内のマクロ的な物価、あるいはそ

れに影響を与える雇用・賃金、こういうものが一番重要でありますので、あくまで

もそれが目標に、達成されるためにやっているもので、そのプロセスの中で為替と

いうのは安定的に推移するのが望ましいというのが、われわれの基本的な考えであ

ります。

(問)

イールドカーブ・コントロールのことでなんですけれども、午前中の講演ではイー

ルドカーブは総じてスムーズになっているということなんですが、今後、見直すと

した場合には、賃金のモメンタムを確認してからになるのか、それともイールドカ

ーブの副作用が出てきた段階で対応するのか、どういう手順を考えているのか、お

伺いできればと思います。

(答)

まず、昨年 12 月にイールドカーブ・コントロールの修正を行いましたけれども、こ

れは、そのときも何度もお話しさせて頂いたように、これはあくまでも金融引き締

めではないということであります。当時の状 況というのは、世界的に高インフレが、

想定以上の強さのインフレが続いている、その中で想定外のスピードで各国の中央

銀行が金融の引き締め、利上げを行っている。その中で、長期金利が世界的に上昇

するという状況の中で、日本国内の状況から考えれば、本来であれば、長期金利を

なるベく低位安定させていきたいんだけれども、しかし、そういう世界的な中で影

響を受けて、イールドカーブ・コントロールの上限に張り付いてしまい、その結果

として、イールドカーブが歪んでですね、市場機能が損なわれるという状況が続い

てしまったので、それを放置しておくということもやはり非常に大きな問題がある

ということで、許容変動幅を[±]0.5[%程度]に広げたという状況であったわけであ

ります。現状はですね、その後の状況を考えますと、今、確かに世界的にまだ高イ

ンフレというのが完全に収まってはいない。特に、労働市場の逼迫が米欧で続いて

おりまして、賃金の上昇率もいまだ高い。コアインフレ率も非常に高止まりしてい

る状態が続いています。けれども、しかしながら、おそらくは、今後はですね、こ

の政策金利の引き上げというのもあと数回で打ち止めになっていき、様子見の局面

に入っていき、そして今後、金融引き締めの影響が出てくれば、今度はそれをにら

みながら利下げ。私の考えでは、なかなかすぐにですね、各国中銀が利下げの局面

に入るというふうには、私自身、個人的には予想しておりませんが、ただ、今まで

の状況とは大きく違うのは、どんどんインフレが高進して金利が引き上がるという

状況から、現状はかなり相当状況は違っていると。それから、今年の 3 月に起きた

米欧での金融的な混乱というものがあって以降、世界的に長期金利が下がった状態

が続いていると。ですから、結果としてはそういう世界的な金利の圧力によって日

本の長期金利は上振れするという状況がかなり解消されつつあると。その結果とし

て、イールドカーブの歪みというものも今現状ではほとんどないということを考え

れば、これ以上、今、何か市場機能を改善するために、あえてイールドカーブ[・コ

ントロール]に手を加える、調整するというような局面では明らかにない。むしろ、

イールドカーブ[・コントロール]の本来の 役割である長期金利を低位安定させるこ

とによって、なるべく早い段階で日本経済が賃金と物価の好循環を実現し、2%目標

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というのを安定的に達成できるような段階になるべく早く近づくと、そちらを優先

してやる段階であるというふうに考えていますので、当面、現状でですね、何か調

整が必要であるというふうには考えません。もちろん、将来的にまた状況が変わる

という可能性がありますので、そのときには、その状況の中で、市場機能と本来の

イールドカーブ[・コントロール]によって マクロ経済を改善させる機能を勘案しな

がらですね、考えていくということになるというふうに思います。

(問)

賃金について、推移なんですけれども、1990 年代前半にかけてはこの賃金の伸び率

には慣性があって、高止まりしていたというのが観察されていると思うんですけれ

ども、今年の春闘で高い結果、強い結果になりましたけれど、やはりこれは来年の

春闘の結果もきちっと見極めていかなきゃいけないのか、いわゆる 1990 年代の前半

までみられていた、この賃金高止まりの慣性っていうのは、今、足元では、それは

ちょっと当てはめるのは適切ではないということなんでしょうか。この点をお聞か

せください。

(答)

慣性というのは、確かに賃金というのは非常に粘着性が高い。これは普通に考えれ

ば分かると思うのですが、景気がいいからといって、経営者が急にボーナスを弾む

ということはあっても、特に基本給の部分で賃上げをするというのはなかなかハー

ドルが高い。よほど経済が基本的に成長しているという見通しが確実に確信できる

までは、なかなか経営者としてはですね、賃上げに踏み切るというのはハードルが

高いということは事実なんですが、ただし、逆にいったん賃上げのモメンタムとい

うのが形成されますと、今度これを急にまた下げるというのも、やりにくいんです

ね。賃金というのは、下方硬直性というふうによく言われておりますけれども、上

方にも下方にも非常に硬直性が高いのが賃金というものの特質であります。ですか

ら、今、お話ししたことはまさにそのことでありまして、1990 年[頃]のバブル期と

いうのは、日本の名目賃金の上昇率はきわめて高かったんですね。他の先進国に比

べても相当高い。当時はバブルでしたから、そういう状況ですが、その後バブルが

はじけた後もですね、実は高止まりというよりは、徐々に低くはなっていくんです

ね。6%くらいから 5%、4%、3%と。ただ、そんなにガクンと下がるということは、

実は 90 年代バブルがはじけた後も、無くて、本当に下がり始めたのは 97 年に金融

危機が起きて、大手の金融機関が連続倒産をすると、それで一挙に日本がデフレ的

な状況になって、その時代から、物価も下がり、賃金もそれまでは若干であれプラ

スだったのがマイナスになっていくという時代が、90 年代の末から出てくるわけで

ありますね。そこからもうずっと賃金が下がり続ける時代が、リーマンショックの

直後ぐらいまでを含めてですね、ずっと続い ていたわけであります。これもやはり、

賃金というのが非常に粘着性を持つということの一つの実例でありまして、いった

ん下がってしまうと、もうそれが一種のノルムになってしまうと。2013 年になって、

大規模金融緩和が始まって、ようやく下がらなくはなったんですね。大規模金融緩

和によって、かなり労働市場の需給が改善してですね、それまでは人手余りの状況

が人手不足の状況に、相当なスピードで労働市場の状況が変わりましたので、少な

くとも賃金が下がる状況というのは停止された。ということはつまり物価も下がら

なくなったと。ところが、じゃあ上がるようになるかというと、なかなかこれは、

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10 年間大規模緩和をやってもですね、少なくともデフレではない状況にはなったん

だけれども、じゃあ賃金が上がるかというと、先ほどお話ししたように、確かにベ

ア復活しましたけれども、せいぜい 0.いくつ[%]という状況が、ずっと昨年まで続

いていたと。そういう状況ですから、サービスの価格の上昇というのはほとんどな

かった。ということは、物価の基調というのは非常に低いままであったという状況

が、今まで足元まで続いていたんですね。しかし、これだけ人手不足って言われて

いながら賃上げが進まないのが、やっぱり人手不足だから賃上げが必要だねと変わ

ってきたのが、ようやく沖縄でもですね、今日も経営者の方々が、ようやく賃上げ

というものが、本当にやらなきゃいけないというふうに、お尻に火が付いた状態だ

というお話が聞かれましたけれども、それはやはり沖縄だけではなくて、日本全国

そういう状況になりつつあるということなので。しかし、こういうふうに一度上が

り始めますと、モメンタムというのがありますので、ここから急に下がるとは考え

にくい。先ほどお話ししたように、むしろ今これがようやく始まって、これをもう

少し上げたいわけですね。そのためには、金融緩和を継続して、まだ日本の失業率

も有効求人倍率もコロナ前まで戻っていませんので、取りあえずは戻すことは可能

なはずですから。金融緩和を続けていけばそこに戻すことは可能であると。そうす

ると、賃上げの、今、モメンタムのついた部分が、また労働市場の状況が改善して

更に賃上げの圧力というものが生み出される ということが期待できますので、私は、

今、金融緩和の継続を通じて、賃上げのモメンタムを維持するというのが、一番重

要なポイントであるというふうに考えています。

以 上

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